下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
- 2025.02.15
【上信電鉄】全線存続して利便性を高める基本方針を決定!
- 2025.02.05
【わたらせ渓谷鐵道】三セク鉄道のまま全線存続することが決定!
- 2025.01.29
【上毛電鉄】全線存続して利便性を高める基本方針を決定!
- 2025.01.26
【JR九州】肥薩線「川線」復旧について
- 2025.01.26
【JR東日本】米坂線の復旧に向けて協議
- 2024.03.15
【関東鉄道】常総線3月16日(土)ダイヤ改正
- 2024.03.11
【銚子電鉄】待望の「新型」は元・南海電鉄「22000形」
- 2023.12.12
【上毛電鉄】新型「800形」(元・東京メトロ「03系」)導入
- 2023.12.07
【ひたちなか海浜鉄道】延伸は2段階で実施へ
- 2023.06.18
【関東鉄道】「キハ310形」7月2日(日)で定期運用終了
- 2023.04.23
『水バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅15』に筑西市が登場
- 2023.04.15
【上毛電鉄】国と沿線自治体が近代化に約22億円支援
- 2023.04.01
【つくばエクスプレス】茨城県内の延伸先は「JR土浦駅」か
- 2023.03.11
運賃下げたら乗客増加! 神戸の地下鉄「北神線」
- 2023.02.01
【地下鉄8号線】有楽町線、将来は茨城県へ……?
【上信電鉄】全線存続して利便性を高める基本方針を決定!
群馬県内を走る私鉄3路線のあり方を協議する「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、上信電鉄を全線鉄道として存続していく基本方針が2月12日に決定!!
沿線自治体が線路などのインフラ維持・管理を公的投資でまかなう「群馬型上下分離方式」も継続し、インフラ近代化・強化や利便性向上を進めることになりました。
・群馬 上信電鉄 全線存続の基本方針決定 県などの協議会(NHK 2025年2月12日)
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/601802
▲ 群馬県内の私鉄の今後を話し合う「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、上信電鉄も存続して利便性を高める方針が決定!
上信電鉄は、高崎駅(高崎市)と下仁田駅(甘楽郡下仁田町)の33.7kmを結ぶ都市近郊鉄道です。沿線には世界文化遺産「富岡製糸場」があるほか、(時間帯などに制約はあるのですが)電車内に自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」も実施しています。
とはいえ、年々経営環境は悪化していて、利用者数はピーク時の約4分の1程度に減少しているほか、沿線人口は今後25年で約16%(約7万人)減少すると推定されています。現状も既に厳しいのですが、今後企業の自助努力だけで経営を継続することは困難な状況です。
そんな中でも、沿線住民や利用者の過半数が「鉄道を維持するためなら運賃引き上げも致し方ない」と回答。鉄道ならではの価値である速達性や定時運行性が評価されているといえます。
なお、(1)鉄道を維持した場合、(2)バスに転換した場合、(3)BRT(バス高速輸送システム)に転換した場合について比較した結果、5年間の収支は鉄道の維持した場合がもっとも有効と判定されたとのこと(納得)。
▲ 左から自社発注車「1000形」、元・JR東日本「107系」の「700形」、元・西武「新101系」の「500形」。車両は多彩!(撮影:オリンパOMD氏)
今後については、(1)現状では運賃の支払いは現金のみとなっているため、キャッシュレスシステムを導入して利便性を向上すること、(2)定時運行性や速達性といった鉄道ならではの強みを活かすため、高速化を図って路線の付加価値を引き上げる取り組みを行いたいとしています。
また、県内の上毛電鉄・わたらせ渓谷鐵道と共に、(3)人材育成や利用促進キャンペーンなどの共同化も検討を進めるとのことです。
(1)については、2019年12月から2020年6月にかけてスマホQRコード決済サービス「PayPay」の試験導入を行ったことから、「PayPay」または同種のキャッシュレス決済を導入するのかも。
(2)については、同線の最高運転速度は85km/hですが、駅間距離が短かったり曲線区間にかかったりして、あまり高速運転できる区間は多くないのが現状です。また、路盤や軌道の状態が芳しくないため、安全性と乗り心地を改善するためにも、路盤や軌道の強化を実施が必要そうです。インフラを強化できれば、高速運転可能な区間が増えるのだろうと思います。
(3)については、それぞれの事業者が独自で行うより、共同で実施する方が効率的だと思います。共同キャンペーンは、2024年秋に群馬県民を対象に実施した「上信電鉄・上毛電気鉄道1日500円乗り放題キャンペーン」という前例があります。スマホアプリ「GunMaas(グンマース)」を利用する電子チケットで、駅や車両側に新規のインフラ投資を行う必要がないことから、今後こうしたサービスの拡充を行っていくのかも知れませんね。
▲ 今後検討を進める「利用促進キャンペーンの共同化」の雛形になりそうな「上信電鉄・上毛電気鉄道1日500円乗り放題キャンペーン」。スマホアプリを使うフリーチケットサービスなら、比較的容易に実現できそう。
■目的は「残すこと」ではなく「最大限に活用すること」
協議会の会長で、前橋工科大学の吉田樹特任教授は、先日上毛電鉄を鉄道として全線存続する基本方針が決まった際、「残すことがゴールではなく、最大限に生かして地域を良くすることが目標だということを共有できた」と、協議の内容を高く評価しました。
その後、わたらせ渓谷鐵道も上信電鉄も全線存続の基本方針が決まりましたが、いずれも共通しているのは「存続」そのものが目的ではなく、「最大限に生かして地域をよくする」ことが目的だという点です。
これは極めて重要な考え方ですから、今後他地域で公共交通をどうしていくかを検討する際は、ぜひ参考にしてほしいと思います。
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【わたらせ渓谷鐵道】三セク鉄道のまま全線存続することが決定!
群馬県内を走る私鉄3路線のあり方を協議する「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、わたらせ渓谷鐵道は第三セクター鉄道のまま全線存続する基本方針が2月4日に決定!
先日の上毛電鉄に続き、こちらも鉄道の価値を最大化する方針が決まりました!!
・わたらせ渓谷鉄道(群馬・みどり市)も全線存続 上毛電鉄に続き協議会が基本方針(上毛新聞 2025年2月5日)
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/606544
▲ 群馬県内の私鉄の今後を話し合う「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、上毛電鉄に続き、わたらせ渓谷鐵道の存続が決定!
わたらせ渓谷鐵道は、桐生駅(桐生市)と間藤(まとう)駅(日光市)の44.1kmを結ぶ鉄道路線です。元々は、足尾銅山からの鉱石輸送を担うために建設された鉄道でした。
渡良瀬川上流の渓谷を縫うように走り、風光明媚な路線としても知られています。
とはいえ、少子高齢化の影響で沿線人口が減少し続けていますので、経営環境は年々悪化しているといえます。
そんな中でも、沿線住民や利用者の約7割が「鉄道を維持するためなら運賃引き上げも致し方ない」と回答。
上毛電鉄と同様、(1)鉄道を維持した場合、(2)バスに転換した場合について比較した結果、名物のトロッコ列車などによる経済波及効果が年間約2億円以上と試算されるなど、観光鉄道としての価値が高いことから、第三セクター鉄道として存続する方針が決まりました。
これで、桐生市を発着する2つの地方鉄道(上毛電鉄&わたらせ渓谷鐵道)の存続が決まったことになります。
あとは上信電鉄についての基本方針がどう決まるか、ということになってきました。
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【上毛電鉄】全線存続して利便性を高める基本方針を決定!
群馬県内を走る私鉄3路線のあり方を協議する「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、上毛電鉄を全線鉄道として存続していく基本方針が1月27日に決定!!
沿線自治体が線路などのインフラ維持・管理を公的投資でまかなう「群馬型上下分離方式」も継続します。
・上毛電鉄(群馬・前橋市)は全線存続 協議会が基本方針 魅力や利便性高め沿線価値向上(上毛新聞 2025年1月28日)
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/601802
▲ 群馬県内の私鉄の今後を話し合う「沿線地域交通リ・デザイン推進協議会」で、まず上毛電鉄の存続して利便性を高める方針が決定!
上毛電鉄は、西桐生(桐生市)と中央前橋(前橋市)の25.4kmを結ぶ都市間鉄道です。電車内に自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」を実施していることでも知られています。
JR両毛線と並行するように走ってはいますが、途中のルートが異なっている(離れている)ため、「棲み分け」はできているといえます。
とはいえ、年々経営環境は悪化していて、ここ5年間は毎年約3億円の公的投資を実施して運行を支えています。が、2045年までに沿線人口が約22%(約11万人)減少するとの推定もあり、今後の状況は予断を許さないといえます。
そんな中でも、沿線住民や利用者の約6割が「鉄道を維持するためなら運賃引き上げも致し方ない」と回答。鉄道ならではの速達性や定時運行性がしっかり評価されているといえます。
なお、(1)鉄道を維持した場合、(2)バスに転換した場合、(3)BRT(バス高速輸送システム)に転換した場合について比較した結果、5年間の収支は鉄道の維持した場合がもっとも有効と判定されたとのこと(納得)。
▲ 自転車をそのまま車内に持ち込めるサイクルトレインを実施。
協議会の会長で、前橋工科大学の吉田樹特任教授は、「残すことがゴールではなく、最大限に生かして地域を良くすることが目標だということを共有できた」と、協議の内容を高く評価。
鉄道ならではの強みを最大化して、さらに便利な交通機関として発展してほしいですね。
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【JR九州】肥薩線「川線」復旧について
2020年7月に発生した豪雨災害で被災したJR肥薩線(ひさつせん)。被災により運休しているのは、八代駅(熊本県八代市)から吉松駅(鹿児島湧水町)の86.8kmで、全線124.2kmの路線の内、約7割の区間が運休していることになります。
2024年4月、球磨川沿いを走る「川線」と呼ばれる八代駅から人吉駅の51.8kmの区間について、国・県・JR九州による3者が鉄道での復旧に基本合意していました。
今回、JR九州の社長は、この「川線」を復旧・再建する場合、線路の位置は基本的には従来と変わらない一方で、駅の場所や数については変わる可能性があることを表明しています。
・肥薩線復旧、駅数や位置「被災前と変更も」 八代-人吉間 JR九州社長、年度内の最終合意に盛り込む考え(熊本日日新聞 2025年1月23日)
https://kumanichi.com/articles/1668410
▲ 今後のまちづくりと連動する中で、駅の位置と数が変わる可能性を示唆。
被災からの復旧・再建を行う際、単に街並みを元通りに戻すのではなく、防災対策などを採り入れた上で新たな街並みを形成する場合があります。場合によっては、従来とは異なる場所に新たな街並みを整備することも。
JR九州社長の発言も、おそらくそうした点を踏まえてのものなのでしょう。路線のルートを大きく変えることはない一方で、今後の復興計画や新たなまちづくり計画とセットで「駅の位置を変えたり、数が変わる可能性はあると思う」と発言しています。
一方、熊本県の交通政策課の担当者は、「川線」の復旧は災害復旧事業なので「駅も被災前の姿に戻すのが基本」としています。ただ、元々利用者が少なかった駅があったことは事実なので、今後駅をどうしていくかは地元の意向も重視すべきと発言しています。
肥薩線については、少なくとも人吉駅までの「川線」の復旧は決まっています。
地域全体の復旧・復興計画と有機的にリンクすることが求められているのだと思います。
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【JR東日本】米坂線の復旧に向けて協議
2022年8月に発生した豪雨災害で被災したJR米坂線(よねさかせん)。被災により運休しているのは今泉駅(山形県長井市)と坂町駅(山形県村上市)の67.7kmで、全長90.7kmの路線の内、なんと7割以上の区間で代行バスが走っていることになります。
2024年11月、JR東日本から「上下分離方式」や「第三セクター方式」での復旧提案があったことを受けて、山形県は沿線市町に呼びかけて再建策について協議を実施。
沿線8市町は路線の廃止を望んでおらず、今後どのような公的投資による復旧を目指すかを検討していくことになります。
・JR米坂線、山形の8市町長は廃線求めず 上下分離、三セクも検討(朝日新聞 2025年1月23日)
https://digital.asahi.com/articles/AST1Q7VJ1T1QUZHB006M.html
▲ 大規模災害での被災はローカル線の存廃に直結してきただけに、まず沿線市町が存続・復旧を意思を示すことは重要なことです。
復旧の費用と工期について、JR東日本新潟支社は2023年4月25日に「復旧費86億円・工期5年」との見通しを発表しています。
山形県は「JRが主体的に鉄道を復旧するのが原則」としたうえで、自治体が鉄道施設や土地を保有してJRが運行する「上下分離方式」と、地域の交通事業者が運営する「第三セクター方式」について、それぞれどのような課題があるのか、どの程度の費用負担になるのかなどを検討したい……と、沿線市長に提案したようです。
人口減少社会を迎える中で、せっかく路線を復旧するのであれば、沿線の交通まちづくり・地域戦略と有機的にリンクし、これまで以上に地域の「軸」として機能するようにしていくことが重要になります。
そうした線に沿って復旧・再建策がまとまると良いですね。
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【関東鉄道】常総線3月16日(土)ダイヤ改正
関東鉄道は、3月16日(土)に常総線・竜ヶ崎線のダイヤ改正を実施!
常総線については、通学需要の増加(新守谷駅前の「開智望」への通学者増加)に対応して守谷~新守谷の区間列車が設定されるほか、通勤通学の時間帯の増発、混雑する列車の増結(1両→2両)を実施。
一方で、閑散時間帯(9~15時)の下館方面については、2往復削減となります。
▲ 守谷周辺での通学需要増加に伴い、常総線は区間列車の新設、増発、増結などを実施。しかし……。
■(下館方面)混雑時の増結は実現するものの……
下館方面の状況については、朝の通学時間帯を中心に、混雑する列車の増結(1両→2両)が実現することは良い話です(平日は計8本・土休日は計2本)。
しかし一方で、利用者の戻りが鈍くて利用が少ない時間帯の列車は削減しよう……という方向性は続くことになりました。
利用者が少ない時間だから削減する……というのは、一見合理的のようですが、これ以上削減が続いてしまうと沿線の皆さんに誤ったメッセージを発する危険性があります。
(利用者の戻りが鈍いから本数を減らすほど、利用機会の喪失に直結するので、利用者の回復はさらに遅れることになりかねない)
「日中でも30分ごと」
常総線が十分に機能するための最低ラインはここだと思います。
今回のダイヤを「底」にして、今後は回復の方向にシフトしていただきたいものですし、そのように働きかけていく必要があると考えます。
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【銚子電鉄】待望の「新型」は元・南海電鉄「22000形」
千葉県を走る調子電鉄に、待望の「新型」車両が!
「新型」車両は元・南海電鉄の「22000形」(2両編成)で、南海で54年間に渡って活躍してきた車両です。
3月9日に出発式が行われ、同社の竹本社長が「いわゆる『シニアモーターカー』(!!)」と表現して大いに話題となりました。
▲ 待望の「新型」は、予想外の南海電鉄からの調達となりました。
既存車両の置き換えとなる「新型」車両は、「西の方」からの調達になる、と予告されていたんですが、まさか南海からとは思っていなかったので驚いた人が多かったようです。
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【上毛電鉄】新型「800形」(元・東京メトロ「03系」)導入
群馬県を走る上毛電鉄に、待望の新型車両が!
新型「800形」は、元・東京メトロ「03系」の改造車で、2両×3編成の計6両を導入します。
このたび、その第1編成が上毛電鉄の大胡(おおご)車庫に到着しました。
▲ 前橋市未来創造部交通政策課が運営する「前橋交通ポータル」に掲載された納入の模様。速報!!!上毛電鉄に新車両が到着しました✨
▶https://t.co/TeEmxlmnbq pic.twitter.com/YgJOPSE3wl
— 前橋交通ポータル(前橋市交通情報発信サイト) (@Maemobi) December 11, 2023
現在、上毛電鉄の主力車両は、元・京王電鉄「3000系」を改造した「700形」です。
かつて京王井の頭線で活躍していたオールステンレス車体の「3000系」を2両編成化したもので、8編成(計16両)が上毛電鉄にやってきました。車体長18.5m・両開き3ドアで、前面デザインが2枚ガラスで貫通ドアがない、今や貴重な「湘南形」電車でもあります。
ステンレス車体を採用していることもあって、見た目にはそんなに古さを感じさせないのですが、何しろ第1編成が製造されたのは1962年。どの車両も車齢は50年を超えているため、置き換え計画が浮上しました。
■なかなか出物に恵まれなくなった18m級の電車
車両置き換え計画が浮上した上毛電鉄ですが、ここで大きな課題に直面します。
手頃な18m級電車の出物が乏しくなっていたのです。
首都圏で18m級の電車を使っている鉄道の中で、上毛電鉄の条件に合致しそうな車両が走っているのは、東京メトロ日比谷線と、日比谷線への直通運転を行っている東武鉄道。日比谷線の車両が18m級車両の8両編成から、20m級車両の7両編成へと切り替わることになり、18m級の東京メトロ「03系」と東武「20000系」が置き換えによって不要になることから、このいずれかが上毛電鉄に……という予測が浮上しました。
が、その矢先、東武「20000系」はローカル線区のワンマン運転用に改造・転出する計画が判明。となると、出物として出てきそうなのは「03系」なのか……という話になって、先月晴れて「03系」ベースの改造車を上毛電鉄が導入することが発表されたわけです。
▲ 上毛電鉄の新型「800形」は、東京メトロ「03系」を改造・短編成化するもの。2両×3編成を導入。【#上毛電鉄】
上毛電鉄の「新車」導入の「答え」が出ました。#東京メトロ #日比谷線 で活躍していた「#03系」を2両×3編成導入する計画です。導入後は「#800形」となります。
・突然の引退、惜しまれた日比谷線の03系 群馬・上毛電鉄で復活(毎日新聞 2023年11月24日)
https://t.co/f97ExetbVu
— 下館レイル倶楽部(新アカウント) (@ShimodateRail) November 24, 2023
報道によれば、「03系」を「800形」に改造するための費用は、2両1編成あたり約3億円。これを3編成(計6両)で実施するので、総額で約9億円の投資になります。
一見すると、中古車の改造にこんなにかかるのか、とも思えるのですが、物価高が急速に進む昨今、もし電車を新規製造するとなれば1両2億円を下回ることはないでしょうから、これでもまだかなり費用を圧縮できているといえます。
「800形」の導入によって、上毛電鉄が運行している「700形」の内、2両×3編成は運用を離脱することになります(多分、部品取り用に使われるのでしょう)。
しかし、それでもまだ2両×5編成の「700形」は残るわけで、これらをいつまで使い続けるのか、いずれ置き換えるとしたらどのような更新方法になるのかが気になるところです。
18m級の「03系」は他の地方鉄道からも引き合いがあるため(既に熊本電鉄・北陸鉄道・長野電鉄が中古導入している)、早晩先頭車が足りなくなるものと思います。
……まあ、かつて上毛電鉄が「700形」を導入したときのように、運転台がない中間車を先頭車化する可能性もなくはないのですが……。
また、元々は中古車両の改造ではなく、車両を新規製造する計画であったことから、状況次第ではこの可能性もゼロではありません。
先日、伊予鉄道が「手頃な18m級の中古車両の出物がないから新規製造する」と発表しましたが、場合によってはこのような他社と同様の車両を共同発注することで、製造費を抑制しつつ、部品供給をしやすくするという方法も考えられます。
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【ひたちなか海浜鉄道】延伸は2段階で実施へ
ひたちなか海浜鉄道の延伸計画について、ついに待望の続報が!
「国営ひたち海浜公園」までの延伸は、2段階に分けて順次実施することに!!
▲ ついに出た続報!!【#ひたちなか海浜鉄道】
延伸は2段階方式で!
まず「国営ひたち海浜公園」南口まで約1.4km延伸。続いてさらに約1.7km延伸し、大型商業施設がある同公園の西口まで延伸します。
・ひたちなか海浜鉄道 国営ひたち海浜公園付近に延伸 新駅整備へ(NHK 2023年12月4日)
https://t.co/h6Eyreu2sT
— 下館レイル倶楽部(新アカウント) (@ShimodateRail) December 4, 2023
現在、ひたちなか海浜鉄道の終点は「阿字ヶ浦」駅です。
延伸計画は、ここから路線を北に延ばし、「国営ひたち海浜公園」西門付近まで約3.1km新設するというもの。途中に中間駅を1駅設置することも発表されていました。
しかし、その後コロナ禍や諸々の物価高などが発生。延伸計画の実施が遅れていました。
■中間駅の設置場所が「ひたち海浜公園」南門付近に変更
このたび発表された続報では、約3.1kmの延伸計画全体はそのままですが、(1)中間駅の設置場所を変更する、(2)整備は2段階で実施し、まず中間駅までの区間を先行開業する、ということが分かりました。
▲ 「ひたち海浜公園」西門付近までの延伸そのものは大筋では変わらないものの、整備は2段階方式で順次実施することに。茨城県ひたちなか市の第三セクターひたちなか海浜鉄道が、国営ひたち海浜公園の南口付近に新駅を整備する方針を固めたことを受けて、ひたちなか市民からは鉄道の延伸に向けて歓迎や期待の声が聞かれました。https://t.co/KmYwZnE697
— NHK水戸放送局 (@nhk_mito) December 6, 2023
(1)については、従来は阿字ヶ浦海水浴場の付近に設置する計画になっていたものを、「国立ひたち海浜公園」南門付近に変更する、ということです。
海水浴場への行楽客が夏季のみなのに対して、「国営ひたち海浜公園」への行楽客は波はあるものの通年見込めますし、近隣での工業団地整備計画とも連動しますので、駅の設置場所を変更することで観光利用と通勤利用が見込めるということになります。
▲ 中間駅は「ひたち海浜公園」南門付近に変更。ここに駅があれば、行楽シーズンの「ひたち海浜公園」への観光輸送にも極めて有利です。【#ひたなか海浜鉄道】
待ちに待った延伸計画の続報!
先ほども投稿しましたが、まず「ひたち海浜公園」南口付近まで約1.4km延伸し、新駅を設置。
続いて、大規模商業施設に近い「ひたち海浜公園」西口付近まで約1.7km延伸し、2つめの新駅を設置。
地方路線としては画期的な延伸が実現へ! https://t.co/9ygzSDmQC8
— 下館レイル倶楽部(新アカウント) (@ShimodateRail) December 4, 2023
(2)については、本当は一気に全区間を整備したいところですが、折からの物価高もありますので、まず着実に「ひたち海浜公園」への観光輸送と新規整備する工業エリアへの通勤利用を手堅く確保しながら、残り区間の整備を継続するということになったようです。
「国営ひたち海浜公園」西門付近には大規模商業施設がありますので、ここに渋滞とは無関係で時間通りに運行する鉄道で来られるということは、大きなメリットになるでしょう。
▲ 中間駅の場所は、従来の海水浴場付近から、「ひたち海浜公園」南門付近へと変更となりました。・従来の整備計画と比べて、延伸区間の中間駅にあたる「新駅1」の位置が変わっているのがポイント。
新しい計画では、「新駅1」は「国営ひたち海浜公園」南口付近となり、同公園への観光輸送はもちろん、新たに整備する工業エリアへの通勤輸送にも対応できるようになります。 https://t.co/xwMknmtPBp
— 下館レイル倶楽部(新アカウント) (@ShimodateRail) December 5, 2023
物価高によって整備費が高騰することを避けるため、高架区間の一部を盛り土区間に変更することも行う模様です。
存廃危機から一転、地域密着の第三セクター鉄道へと転換した湊線。東日本大震災での被災をも乗り越え、地方路線としては異例ともいえる延伸までこぎ着けようとしています。
「鉄道は過去のもの」ではなく、しっかり投資して利便性を高めていけば、現代の地方においても有効な交通機関であり続けますし、地域の持続的発展に欠かせない重要な社会インフラとして機能し続けます。
今後は延伸の着実な実現に合わせて、運行頻度や運行速度の向上も検討する必要があります。
また、現有車両だけでは輸送力が不足することになるので、おそらく何らかの車両増備を図る必要も出てくるでしょう。
近い将来、ひたちなか海浜鉄道がどんな姿に発展しているのか、大いに楽しみですね!
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【関東鉄道】「キハ310形」7月2日(日)で定期運用終了
長年にわたって関東鉄道常総線で活躍してきた「キハ310形」が、ついに定期運用を離脱することになりました……!!
・さようなら、キハ310形!最後の定期運行について(関東鉄道 2023年6月12日)
https://www.kantetsu.co.jp/news/kiha310_train.html
▲ 関東鉄道常総線の一時代を築いた「キハ310形」が定期運用から離脱することに……。
「キハ310形」は、両開き3ドア・片運転台の20m車という、現在に続く常総線の通勤型気動車のスタイルを確立した車両です。一見すると新規製造したオリジナル車に見えますが、1970年代後半に譲受した旧国鉄「キハ10系」の足回りを活かしつつ、車体のみ新製しています。
「キハ311」から「キハ318」まで計8両が改造されましたが、現在も現役で走っているのは「キハ315」と「キハ316」の2両のみとなっていました。
▲ 現在は「キハ0形」と同様の「顔」の「キハ310形」ですが、元々は「キハ610形」のように前照灯が「おでこ」の位置にありました。
「キハ315」も「キハ316」も、元は1954年に製造された国鉄「キハ17形」です。
2両とも車体改造工事を実施して再デビューしたのが1977年で、以降46年間、常総線で活躍してきました。
元々は「キハ17」時代の台車とエンジンを装備していましたが、1980年代前半に台車の履き替え(DT19形台車→DT22形台車、TR49形台車→TR51形台車)を実施。1990年代後半にエンジン換装(DMH17→DMF13HZ)と、冷房化改造・車体前面の改装工事を実施しています。この際、貫通幌の設置も行われています。
▲ 「キハ2100形」以降の新造車が増えるにつれて運用の機会は減っていましたが、朝夕の通勤通学時間帯を中心に走っていました。
「キハ0形」と並んで、常総線の主力として活躍してきた「キハ310形」。
定期運用の最終日は、2023年7月2日(日)です。
そのまますぐに廃車……ということはないと思いますが、撮影・乗車は今の内に。
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『水バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅15』に筑西市が登場
2023年3月15日(水)夜、テレビ東京で『水バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅15 栃木・佐野~茨城・鹿島神宮』が放送されました。
テレビ東京の旅番組は人気を博していて、この『バスVS鉄道』もすっかり定番として定着していますね。今回は「佐野厄除け大師」をスタートした鉄道チームとバスチームが、途中に設定されたボーナスポイントを経由しながら、ゴール地点の「鹿島神宮」を目指す……という旅。
これまでの放送で7勝7敗と五分の成績となった両チームが、果たしてどんな旅を展開するのか……!!
・水バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅15 栃木・佐野~茨城・鹿島神宮(テレビ東京 2023年3月15日放送)
https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/202303/25778_202303151825.html
過度なマイカー依存に陥っている北関東でも、鉄道とバスを組み合わせればかなり移動範囲は広がるのですが、この番組では鉄道チームは鉄道を、バスチームはバスを使うのが基本。
タクシーや徒歩での移動はできるとはいえ、あえて公共交通同士の連携を禁じた旅は、なかなか大変な旅に……(未見の方は、今後の地上波やBSでの再放送や、公式配信サービスでご覧ください)。
▲ 『水バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅15』では、小山市→結城市→筑西市を経由するルートに。
■小山から筑波山への移動ルートは?
さて、番組の中でJR小山駅(栃木県小山市)から筑波山(茨城県つくば市)のボーナスポイントに向かう際、鉄道チームとバスチームがそれぞれルート検索を行いました。
鉄道チームは、まず筑波山にもっとも近い岩瀬駅か下妻駅に移動し、そこから軍資金の許す限りタクシーを使って、残りは徒歩で移動することを検討しました。検討の末に選んだのは、JR水戸線で下館駅に移動し、関東鉄道常総線に乗り換えて下妻駅に向かうというルート。
一方のバスチームは、JR水戸線沿いに乗り継げるバスを探しながら、バスがない区間は徒歩やタクシーで繋ぐという作戦に出ました。小山駅からコミュニティバス「おーバス」で結城市の近くまで接近。バスがない区間は徒歩移動して、「結城市巡回バス」……にはタッチの差で間に合わず、そのまま徒歩で結城駅へ。結城駅からはタクシーでJR水戸線の川島駅か下館駅に向かい……。
▲ 筑西市(茨城県)の「筑西市広域連携バス」(左画像)と、小山市(栃木県)の「おーバス」(右画像)。結城市(茨城県)の「結城市巡回バス」は、ワンボックスカーを使用。
実際にバスチームが選択したのは、「下館駅までタクシー移動」。下館駅では筑西市が運行する「筑西市広域連携バス」の発車時刻に間に合い、一気に旧・筑波鉄道の筑波駅=現在の「筑波山口(つくばさんぐち)」バスターミナルまで直行することができました。
ところで、公共交通を利用して小山駅から筑波山へ向かうのに、「川島駅」が選択肢に入っていることに意外さを感じた人も少なくなかったのではないでしょうか。
■川島駅と下妻駅を結ぶ「筑西・下妻広域連携バス」
公共交通を利用して小山駅から筑波山へ向かうのに、なぜ「川島駅」が選択肢に加わったのか。
それは、筑西市と下妻市が協力して運行する「筑西・下妻広域連携バス」が発着するようになっているから。このバス路線を利用して下妻駅まで移動すれば、下妻駅から軍資金が許す限りタクシーで筑波山に接近し、残る区間は徒歩で移動できるのです。
番組では、バスチームは下館駅から「筑西市広域連携バス」を利用して筑波山まで一気に迫り、鉄道チームは下館駅で常総線に乗り換え下妻駅に移動し、筑波山方面に向かうという展開になったのですが……。
「筑西・下妻広域連携バス」は、かつて運行していた路線バスを、現在の公共施設の位置も勘案しながら改編した路線といえます。現在は本格運行に向けた「実証実験運行」の状態です。
路線開設の大きな目的は、路線バスの廃止によって公共交通空白エリアになってしまった関本地区や上妻地区など、一定以上の人口の集積がある地域の移動手段を確保すること。
行政サービスの一環として運行している路線で、運賃は全区間乗り通しても「1乗車200円」と破格です。また、路線開設に合わせて、小型超低床バス「ポンチョ」のロングボディ車を新規導入。地域としての本気度を示した格好です。
▲ 「筑西・下妻広域連携バス」運行開始に合わせて導入された「ポンチョ」ロングボディ。Suica・PASMO対応で、スムーズな乗降が可能です。
JR水戸線の川島駅と関東鉄道常総線の下妻駅を結ぶ路線で、沿線には茨城県立高校が3校(鬼怒商、下妻一高、下妻二高)あるほか、水戸線や常総線に乗り換えることで下館方面や水海道方面、結城・小山方面への通勤通学にも利用できます。
1日6便ずつ(2023年4月現在)と便数は少ないのですが、運賃が安いので川島駅からこのバスを定期利用する学生も少なくないようです。普段は「ポンチョ」で運行していますが、多客便はより輸送力が大きいノンステップ低床車が充当されることもあります。
■「筑西・下妻広域連携バス」の課題
さて、筑西市と下妻市の連携によって誕生した「筑西・下妻広域連携バス」ですが、今後解決すべきいくつかの課題があるように見受けます。
(1)運行頻度
公共交通の空白エリアを南北に貫くように走り、路線の両端を鉄道の駅に設定したことで両方向への利用が見込める点は良いのですが、「1日6便ずつ」という運行頻度ではなかなか利用しにくいことは事実です。
通勤通学利用が見込める朝夕の時間帯は20~30分に1本程度、日中もせめて60分に1本程度は運行するようにしていけると良いですね。
(2)運行ルート
公共交通の利用促進を図るうえで重要なのが「利便性の高さ」で、速達性の高さはその内の一つです。一般道を走る路線バスの速達性を高めるには、運賃収受の時間短縮、停車箇所の最適化、運行ルートの最短化などの方法があります。
「筑西・下妻広域連携バス」は、路線北端では「鬼怒商業高校」や「筑西遊湯館」に、路線中央では筑西市役所の関城支庁(旧・関城町役場)に、路線南側では「ビアスパークしもつま」に立ち寄るために、本筋から外れて「寄り道」するルート設定です。
経由地を増やして利用者を増やす取り組みなのですが、寄り道する分の走行距離と所要時間が増加してしまうというジレンマがあります。
(3)運賃
地元自治体が運行経費を下支えして誕生したバス路線で、運行経費を運賃収入だけでまかなう必要がないことから、運賃は1乗車200円(全区間乗り通しても200円)に抑えられています。通勤定期は7200円/月、通学定期は6000円/月(片道3000円/月)と、こちらも破格です。
ただ、運行頻度の向上や運行時間帯の拡大などを視野に入れると、運転手さんの人数やバス車両を増やす必要が出てきます。公共サービスの一環として運行経費を行政が下支えし続けるとしても、運賃収入を増やすこと自体は考えても良いと思います。
二つの市をまたいで運行する路線ですので、たとえば増便するのに合わせて「市内は1乗車200円」「市境をまたぐ場合は1乗車300円」にするなど、増収を図る方策を検討しても良いかも。
■結城市への延伸も……?
現在は北端をJR水戸線の川島駅に設定している「筑西・下妻広域連携バス」ですが、西隣の結城市(茨城県)がこのバス路線の結城市内への延伸の可能性を探っているようです。
・「結城市地域公共交通計画」令和4(2022)年度~令和8(2026)年度
https://www.city.yuki.lg.jp/data/doc/1647917827_doc_16_0.pdf(PDFファイルです)
同計画の58ページに、「筑西・下妻広域連携バスの本市への延伸について検討・調整し、運行準備が整い次第実施」という文言があり、令和5年度・6年度で検討→令和7年度以降に準備が整い次第運行と記載しています。
具体的な延伸ルートは不明ですが、ちょうど国道50号線の4車線化工事が進捗している中での話ですので、その辺も念頭に置いているのではないか……と。「筑西・下妻広域連携バス」の運行ルートを「下妻駅~川島駅~鬼怒商業高校・筑西遊湯館~結城駅」と一筆書きのようにすると、比較的きれいにまとまりそうです(遊湯館方面には多少「寄り道」する形にはなりますが)。
▲ 「筑西・下妻広域連携バス」を結城駅まで延伸すると、おそらくこのような感じになるだろう、という推測ルート。結城二高の前を通るよう、国道50号の旧道経由に設定しています。
仮に結城駅の発着場を南口とすれば、結城二高を経由するルートや、結城市民文化センター「アクロス」や結城市役所も経由するルート設定が可能ですので、より多くの利用が見込めます。
なお、かつて路線バスが走っていた「結城駅~船玉交差点~下妻駅」というルートもあり得ますが、朝夕は船玉交差点を先頭とする久保田地区(結城市)の渋滞に巻き込まれて時間が読めなくなってしまうので、少なくともラッシュ時は回避する方が良さそうです。
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【上毛電鉄】国と沿線自治体が近代化に約22億円支援
群馬県の桐生市と前橋市を東西に結ぶ「上毛電鉄(じょうもうでんてつ)」の近代化のため、国と沿線自治体が総額総額22億6356万円の支援を行うというニュース。
今回の支援は2023〜27年度の5年間に行われる6期目の支援で、国は約4.3億円、群馬県は約9.5億円、前橋市は約5.4億円、桐生市は約2.6億円、みどり市は約1.2億万円を支出。
鉄道を「地域を支える公共インフラ」と位置づけて、しっかり投資しようという意欲が感じられますね。
・上毛電鉄に新たな支援策。「群馬型上下分離」とは何か(タビリス 2023年4月13日)
https://tabiris.com/archives/jomoshien2023/
▲ 典型的なクルマ社会の群馬県ですが、上毛電鉄は「地域にとって不可欠の公共インフラ」として支援を続けています。
6期目の主な支援内容は……。
・車両更新(9億円/3億円×3年間)
・踏切保安装置更新(1.35億円)
・レール重軌条化(1億円)
・架線柱更新(0.75億円)
鉄道趣味的に気になるのは、やはり何といっても「車両更新」でしょうね。
新車の導入が計画されたこともあったのですが、どうやら東京メトロから中古車両を導入することになるようです。
具体的な話はまだ分かっていないのですが、現行の「700型」(元・京王電鉄「3000系」)が車体長18.5mであることから、18m級の車両になるのでは……と。
▲ 東は桐生市、西は前橋市を結ぶ「上毛電鉄」。現在の車両は「700型」で、これを今年度から他社から導入する中古車料によって更新する計画です。
……となると、中古車両の「出物」候補としては、後継車両によって更新が始まっている「丸ノ内線」用の「02系」や「日比谷線」用の「03系」ということになります。
「02系」なら、軌間1,435mm・直流600V(第三軌条から集電)ですので、台車の履き替えやパンタグラフ集電への変更など、改造箇所が多くなります。
「03系」なら、軌間1,067mm・直流1,500V用の電車なので、改造箇所は比較的少なくて済むでしょう。
■「群馬型上下分離」とは?
ところで、この記事のタイトルにもなっている「群馬型上下分離方式」とは? 一般的な「上下分離方式」とは何が違うのでしょうか。
一般的な「上下分離方式」では、運行会社は「上」にあたる部分、つまり運行サービスに専念して、「下」にあたるインフラ部分の建設・整備などの経費を公的にまかなう方式です。このため、運行主体と鉄道施設の保有主体は別になります。
2023年8月に「優先整備区間」が開業予定の「宇都宮ライトレール」(芳賀・宇都宮LRT)は、この方式で整備されています。
これに対して「群馬型上下分離方式」は、「上」と「下」には分離せず、「下」にあたるインフラ部分の経費を公的に支援する方式です。
記事では「費用負担における上下分離」と表現していて、これはうまいたとえだと思います。
▲ 上毛電鉄だけでなく、わたらせ渓谷鐵道への支援も行われます。
上毛電鉄の場合は、5年ごとに同社が「経営再建計画」を策定して、群馬県や沿線自治体が構成している「上毛線再生等検討協議会」が検討・協議し、「上毛線再生基本方針」を取りまとめて支援を実施する、という流れです。
最初の「経営再建計画」を策定したのが1998年度で、過去25年(5期)に70億円弱の公的支援を実施しています。単純計算ですが、年平均2.8億円の支援ということになります。
ちなみに、地平レベルの4車線バイパスを整備する場合、約70億円ではせいぜい3klm程度しか整備できません。この金額で全長25.4kmに及ぶ中量輸送機関を25年に渡って支えることができているわけで、これはかなり有意義な投資だといえます。
▲ 自転車をそのまま車内に持ち込める「サイクルトレイン」が定着しているのも、上毛電鉄の大きな特色の一つ。公共交通と自転車の組み合わせで、移動範囲が劇的に拡大します。
群馬県も、茨城県や栃木県と同様、過度なマイカー依存と郊外への市街地拡散が進行してしまい、今後のまちづくりを考える上で大きな課題を抱えています(郊外への市街地拡散=行政コストの増大に直結するためです)。
その群馬県で、古くから地域を支えてきた鉄道の近代化を公的に支援して、引き続き地域の重要な社会インフラとして支えて続けていく姿勢を明確にしていることは、まことに意義深いことだと思います。
なお、上毛電鉄は国内における「サイクルトレイン」のパイオニアと言って良い存在で、日常的に自転車を電車に持ち込んで移動する乗客が多くいることでも知られます。
自宅最寄りの駅までは自転車で、駅から駅は電車で自転車ごと移動し、目的地最寄りの駅から再び自転車で移動する「上毛スタイル」は、これからもっと多くの地域で普及していくことが望まれている姿でもあります。
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【つくばエクスプレス】茨城県内の延伸先は「JR土浦駅」か
つくばエクスプレス(TX)の茨城県内の延伸先について、学識経験者らによる第三者委員会が「土浦」案を茨城県知事に提言しました。
最短ルートかつ沿線人口が最多なルートですので、妥当な判断でしょう。
今後実際に整備することになる場合は、TXつくば駅~JR土浦駅をどういうルートにするか、そのルート上のどこにいくつの駅を設置するかが課題になります。
(注:実際に整備されるまでには、まだまだ時間がかかるのではないかと思います)
・つくばエクスプレス延伸先にJR土浦駅 人口14万人増見通し(日本経済新聞 2023年3月31日)
https://nikkei.com/article/DGXZQOCC23DFR0T20C23A3000000/
土浦駅までTXを延伸すると、つくば市と土浦市の間に広がる郊外の新興エリアに軸となる軌道系公共交通機関が整備されることになりますし、JR常磐線との乗り継ぎが可能になりますので、導入効果は大きいといえます。
▲ 延伸先の候補は「筑波山方面」「水戸方面」「茨城空港方面」「土浦方面」の4案でした。
■どんなルートで土浦駅へ? 常磐線とはどのように接続する?
で、ここで気になるのは、どういうルートと構造で土浦駅に乗り入れるのか、ということ。
ルートについては、つくば市と土浦市の間の郊外には県道24号線沿いに新興地域が広がっているので、基本的には県道24号線の南北いずれかに沿った形で土浦市に接近するのでしょう。
JR土浦駅周辺は既存の中心市街地が広がっているので、地平レベルに線路を整備するのはなかなか難しく、高架か地下で整備することになります。
いずれの場合も、市街地のすぐ南側を桜川が流れているという地形上の制約があるので、その影響を受けることになります。
▲ TXつくば駅からJR土浦駅へ、どんなルートを辿るのでしょうか。いくつかのルートは想定できるのですが、「イオンモール土浦」を経由するとこんな感じになる、という想定で大まかなルートを示してみました。
順当なのは地下で、ということになるのでしょうが、常磐線のルートに沿うようにカーブして土浦駅に接近するのか、それとも常磐線とは交差する格好で直線上に土浦駅に達するのかで、その先の展開も透けて見えてきます。
つまり、水戸方面への直通も視野に入れるのか、それとも土浦駅からの延伸は考慮しない(または阿見・江戸崎方面などへの延伸の可能性を考慮する)のか、ということです。
いずれにせよ、悠長に何十年もかけて検討している話では困ります。
やるなら「やる」で、腹を括る必要があります。
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運賃下げたら乗客増加! 神戸の地下鉄「北神線」
神戸市の中心部と北部を結ぶ「北神線(ほくしんせん)」の利用者数が、運賃を引き下げた効果で3割増加したとのこと。
これは大きな効果です。
・地下鉄運賃下げたら乗客数3割増 神戸の「北神線」(日本経済新聞 2023年3月11日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF220O50S3A220C2000000/
▲ 運賃引き下げにより利用者が3割増加した神戸市営地下鉄北神線。
北神線は、かつて「北神急行電鉄」として運行していた地下鉄路線で、1988年に開業。軌間1435mm、直流1500Vの電化路線で、全線複線、最急勾配33.3‰(パーミル)。
六甲山地を貫く「北神トンネル」(約7.3km)によって、神戸電鉄「有馬線」の「谷上(たにがみ)」駅から、新幹線停車駅「新神戸(しんこうべ)」駅を最短ルートで接続。「新神戸」駅から神戸市営地下鉄「西神・山手線」に乗り入れて、神戸市中心街へと短絡する新ルートとして整備されました。
■鉄軌道は公共インフラ! 「公共」交通をどう支えるかが地域活性化のカギにも
しかし、距離が短い割に運賃が割高であること、神戸市営地下鉄に乗り入れると運賃が加算されることから、利用者はなかなか増加せず。
状況が変わったのは、神戸市北区の人口増加と地域振興を図りたい神戸市が、この路線のポテンシャルに着目したこと。本路線を神戸市営地下鉄と一体運営することで、北区の交通利便性を高めて、沿線の活性化を推進することになりました。
こうして2020年6月、神戸市営地下鉄「北神線」が誕生しました。
▲ 運賃体系の一体化に加えて、運賃そのものも引き下げ。公共交通は「地域が支える」、言い換えれば行政が公共交通の運営を下支えする(=応分の経費を負担する)決断をしたからこそ実現した、といえます。
神戸市は、阪急電鉄グループから「北神線」のインフラを198億円で丸ごと譲受。運賃体系を市営地下鉄ネットワークに組み込むことで、区間によっては市営化によって運賃がほぼ半額に。定期券も大幅値下げになります。
約200億円という大型投資ですから、異論もあったでしょう。しかし、それによって確実に市民生活の質が向上しますから、いわば「損して得取れ」の最たる例だといえます。
■増えた乗客はどこから……?
ところで、地下鉄の利便性が大幅に高まったのは良いとして、増えた乗客は一体どこから?
運賃低廉化に刺激されて新規に電車を利用するようになった人がいる一方、これまで運賃的な優位性があった神戸電鉄の利用者が「北神線」経由に切り換えた割合もそれなりにあるでしょう。
神戸電鉄は、有馬温泉に向かう「有馬線(ありません)」の沿線は開発が進んでいて利用者が多い一方、途中で分岐する「粟生線(あおせん)」は経営環境が芳しくありません。
▲ 経営環境が芳しくない神戸電鉄「粟生線」。将来に渡って持続できるよう、沿線ではさまざまな取り組みが行われています。
従来は「有馬線」を乗り通して神戸の中心市街地に向かっていた利用者が、「谷上」駅から「北神線」経由で神戸の中心市街地に向かうようになると、その分の運賃収入が減少します。
(「つくばエクスプレス(TX)」開業後、「守谷」駅での乗り換え利用が増えて減収となった関東鉄道「常総線」の状況に似ているといえます)
新時代の交通まちづくりを推進する神戸市が、長年市の発展に貢献してきた神戸電鉄をどう捉え、どう支えていくのか。
今後はこちらにも注目したいですね。
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【地下鉄8号線】有楽町線、将来は茨城県へ……?
「地下鉄8号線」、つまり東京メトロ「有楽町線」の延伸についての記事が掲載されました。
延伸の構想があるのは、TX(つくばエクスプレス)の八潮(やしお)駅、JR武蔵野線の越谷レイクタウン駅を経由して、東武野田線の野田市駅に至るルート。
さらに、野田市から利根川を渡河して、坂東市、常総市、八千代町を経由して、下妻市の大宝(だいほう)駅へ、そこから関東鉄道常総線に乗り入れて筑西市の下館(しもだて)駅へ……という構想も!!
▲ 下館駅まで直通する可能性も……!?【#地下鉄8号線】構想が全て実現すると、八潮~越谷レイクタウン~野田市~岩井を経由し、#関東鉄道 #常総線 と大宝で接続し、下館まで乗り入れることに……!?
・地下鉄有楽町線、北関東まで? 延伸の“壁”になる「地磁気観測所」とは(乗りものニュース 2023年1月31日)
https://t.co/hEQePMoVER
— 下館レイル倶楽部(新アカウント) (@ShimodateRail) January 31, 2023
■実現までには高い壁が…… でも、手がないわけではない
もし実現すれば、鉄軌道の空白地帯が多い茨城県西部と都心方面を直結する新ルートの実現となりますし、東武野田線、つくばエクスプレスなどとの乗り換えができるうえに、集客力が極めて高い「越谷レイクタウン」を経由する新たな鉄軌道となります。
とはいえ、課題になるのは、整備費と需要の見通し。
つくばエクスプレスのような高規格の高架鉄道や地下鉄のまま整備するとなれば、整備費は膨大になります(1kmあたり100~200億円)。また、整備してどの程度の利用者が見込めるのかということもポイントになります。
整備費については、広域道路と一体的に整備する方法や、インフラの規格をより低廉なもの、具体的には主に地平レベルで整備できるLRT(ライト・レール・トランジット)規格で整備するという方法が考えられます。
需要については、現時点での沿線人口だけでなく、沿線全域の交通まちづくりの視点を加味して考える必要があります。
LRTについては、国内だと「次世代型路面電車システム」などと訳されてきましたので、都市間を結ぶ鉄軌道としてのイメージは沸きにくいと思いますが、世界の諸都市では「トラムトレイン」(鉄軌直通運転)によって近接する別の都市へ直通運転する事例が多数見られます。
▲ 地平レベルで整備できるLRTだと、整備費を抑制できるしバリアフリー対策も容易に行えます。市街地では路面電車として、郊外では鉄道として高速運行する「トラムトレイン」も普及しています。海外では連接式ディーゼル低床LRVを使っている都市も。
「トラムトレイン」とは、市街地では路面電車(軌道)、郊外では鉄道の特色を併せ持つ運転形態のことで、街中では電停(駅)の感覚が比較的短く(=表定速度はさほど上がらない)、郊外では鉄道のように駅間距離が長いため高速運転に適しているという、いわば「おいしいどころ取り」のスタイルです。
国内でも、福井鉄道の市内軌道線とえちぜん鉄道の三国芦原線を直通運転する「トラムトレイン」(鉄軌直通運転)が話題になりましたし、広島電鉄宮島線の運転形態は「トラムトレイン」であるといえます。
また、2023年8月開業に向けて準備が進む芳賀・宇都宮LRT(宇都宮ライトレール)も、市街地区間は50km/h・郊外区間は70km/h運転を織り込んで整備しているので、「トラムトレイン」を目指しているといえます(将来、栃木県内の他の鉄道路線に乗り入れることになれば、正真正銘の「トラムトレイン」です)。
国内でこの方式を導入する場合、従来は運賃授受方式の制約(運転士が全乗客の乗降に対応しなければならない)もあって、複数編成の増結による輸送力の増強が難しい、という問題がありました。
しかし今や、交通系IC乗車券やタッチ決済の普及に伴い、日本国内でも気がつけば事実上の「信用乗車方式」が普及していますので(例:JR水戸線の無人駅は、乗客自らがSuica簡易改札機にタッチして乗降しているので、信用乗車方式といってよい)、軌道法の特認を適用して2編成、3編成の併結を行えば、一般的な鉄道と同程度の輸送力を確保することが可能になっています。
▲ 既出の導入ルート案を参考に、野田市駅(東武野田線)から大宝駅(関東鉄道常総線)まで、八千代町経由でこんな感じになるだろう、という予想。既存の道路ベースでルート検索していますが、大まかなイメージはつかめるかと思います。
「8号線」の延伸がいつ、どこまで、どういう形で実現するのか、現時点ではなんとも言えません。
最大のネックは「利根川の渡河」ということになるでしょうから、そこの見通しが立てば茨城県内への延伸の可能性が出てきますし、難しければ野田市までの整備で終わってしまう可能性もあります。
都心側の整備の目処が付けば、具体的に整備計画が進展する可能性はあると思いますので、今後も注視していきたいですね。
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