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下館レイル倶楽部

真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)

カテゴリー「勉強会などのレポート」の記事一覧

【宇都宮LRT】栃木県の福田知事、県の東西基幹交通はLRTが最適と明言

 ご紹介が遅れてしまいましたが、2011年11月18日(金)午後に宇都宮で行われた「第2回 都市交通システム講演会」で、栃木県の福田 富一(とみかず) 知事「県の東西基幹交通にはLRTが最適」と、LRT推進を明言しました。
 9月には宇都宮市の佐藤栄一 市長も市内の東西基幹交通にはLRTが最適という講演を行っています。

・知事、LRT導入に改めて前向き姿勢 栃木(MSN産経 2011年11月19日)
 http://sankei.jp.msn.com/region/news/111119/tcg11111902120001-n1.htm


 この講演会を主催したのは、「六団体連絡協議会」
 「六団体連絡協議会」とは、「栃木県行政書士会」、「栃木県土地家屋調査士会」、「社団法人栃木県宅地建物取引業協会」、「社団法人栃木県建築士会」、「社団法人栃木県測量設計業協会」、「社団法人栃木県建築士事務所協会」の6団体による協議会です。

 9月に佐藤市長が講演を行った「第1回 都市交通システム講演会」も、「六団体連絡協議会」の主催でした。

第2回 都市交通システム講演会第2回 都市交通システム講演会第2回 都市交通システム講演会
▲ 2011年11月18日(金)、宇都宮で「第2回 都市交通システム講演会」が催されました。(クリックすると拡大画像を表示します)

 講演の前に、まず主催者側からの挨拶があり、知事に対して2つの要望が出されました。
 一つは、「東西基幹交通としてLRT導入を」という要望。
 もう一つは、「日光のいろは坂を上るケーブルカーを復活させて、ケーブルカーと接続する市内軌道も復活を」という要望です。

 日光市内にLRTを、というのは、何年か前にも新聞で取り上げられたことがあったのを記憶しています。
 かつての市内軌道をノスタルジーの対象として復活させるのではなく、渋滞解消の切り札として活用するというのであれば、これはかなり有効です。
 日光と言えば国内はもとより、海外からも多数の観光客が訪れる観光地です。もし、電車で日光に来て、そこからの移動手段にも困らないとなれば、これは大きな魅力になります。
 また、これとセットでケーブルカーの復活も実現すれば、いろは坂をクルマで上り下りせずに済むようになり、観光客には大きな利点となるでしょう。

第2回 都市交通システム講演会第2回 都市交通システム講演会第2回 都市交通システム講演会
▲ 福田 富一 知事は、「私の夢」と前置きしつつも、東は茂木(できれば「ツインリンクもてぎ」)、西は日光まで直通するトラムトレインを実現したいと発言しました。(クリックすると拡大画像を表示します)

 その後、来場していた船田 元(はじめ)前衆議院議員からの挨拶があり、続いて福田知事が登壇。
 知事になってから公の場では初めてLRT推進を明言した、注目すべき講演となりました。


■県の東西基幹交通にはLRTが最適

知事の講演は、佐藤市長の講演を受けて、県としても東西を結ぶ基幹公共交通の導入を推進したいという話で始まりました。
 具体的には「基幹交通にはLRTが最適」であり、東は真岡鐵道に結節して、できれば茂木から「ツインリンクもてぎ」まで延伸
 西は新鹿沼付近まで軌道を敷設して、そこから日光まで直通する。
 つまり、LRTの整備とトラムトレインの実現により、茂木~宇都宮~日光を直通できるようにしたい、という内容でした。

 日光の市内軌道をLRTとして「復活」させることと、それとセットでケーブルカーを「復活」させることについては、渋滞緩和や環境負荷軽減の観点、さらには観光集客の観点からも極めて有益であるのは確かなので、あとは地元から導入に向けた機運が醸成されれば……というお答え。
 日光へはできるだけ電車など公共交通で来てもらい、そこからの移動にも困らないようにすることで観光地としての魅力を向上させようという意図のようです。
 県としても、地元の皆さんが検討材料として活用できそうな資料や情報を提示できるようにしたい、とのことでした。


■コスト面の懸念はない

 その後、知事からは県の魅力アップに関する諸施策の説明があり、それが一通り終わった後で、再び公共交通に関する話題に。
 9月の市長講演会に関するアンケート内容を踏まえて、市民から寄せられた疑問・質問について、知事のお立場でのご返答。

 建設費の懸念については、モノレールやAGT(「ゆりかもめ」のようなゴムタイヤ式案内軌条交通システム)は1km整備するのに100億円、ガイドウェイバスは1km整備するのに50億円かかるところ、LRTであれば1kmあたり25億円程度に抑制できると説明。
 道路整備と比較すると、「テクノ通り」の整備には1km38億円、「北道路」に至っては1km100億円を要していて、「大通り」の拡幅には1km90~100億円を要していると対比。
 一部で高価だとされるLRTは、実際には4車線道路を通すのと同じ程度の金額になるとの説明がありました。

 宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
 そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度(16,500人/日)が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
 (本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)

 ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります。

 「住んでいる人が住み続けたいと思う」
 「進出している企業が居続けたいと思う」
 「他の地域から移住したいと思う」

 そんな街作りを積極的に進めていかないと、今後激化するだろう地域間競争、都市間競争には勝てないだろう……という話で講演は終わりました。


■JR宇都宮駅を「またぐ」ための費用は40億円

 その後の質疑応答では、「LRTには期待しているが、駅の東西で軌道が分断される点の解決方法は?」との質問がありました。
 知事からは、東西約15kmほどを結ぶフル整備の場合の建設費「355億円」の内、「約40億円」はJR宇都宮駅をまたぐために費やすものであるとの説明がありました。
 東西をまたぐこと自体は可能で、その場合は地平レベルの在来線と、高架の新幹線の間を通すことができること、高度を稼ぐ必要があることも考慮して、駅東口の電停は2階レベルに設定することを考えている計画であることも説明がありました。




 来年(2012年)は県知事選挙、市長選挙が控えていて、その辺も見越しての講演だったのではないかと思います。
 重要なのは、宇都宮市長も栃木県知事も、就任後おそらく初めて「LRT推進」を明言したことでしょうね。
 首長が「やる」と明言しただけでなく、産業界、教育機関、住民団体など、かなり広範で確固たる支持を取り付けた上での発言なので、実現を前提とした明確なメッセージということになります。

 もちろん「通して終わり」という話ではなくて、LRT導入とセットで公共交通ネットワークの再編と、持続可能な街づくりに向けた諸施策を実現していくということ話なので、大いに期待できるのではないかと思っています。


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【宇都宮LRT】9月の講演会で市長がLRTが軸の公共交通整備の重要性を説明

 ご紹介がすっかり遅れてしまいましたが、2011年9月1日(木)午後、宇都宮で行われた「都市交通システム講演会」で、宇都宮市の佐藤栄一 市長極めて重要な講演を行いましたので、ご紹介します。

・宇都宮市、新交通システムLRT導入機運再燃 市長「市の盛衰かけた事業」(MSN産経 2011年9月3日)
 http://sankei.jp.msn.com/region/news/110903/tcg11090302290001-n1.htm

佐藤市長講演会
 この講演会を主催したのは、「六団体連絡協議会」
 「六団体連絡協議会」とは、「栃木県行政書士会」、「栃木県土地家屋調査士会」、「社団法人栃木県宅地建物取引業協会」、「社団法人栃木県建築士会」、「社団法人栃木県測量設計業協会」、「社団法人栃木県建築士事務所協会」の6団体による協議会です。

 講演会のメインは、佐藤栄一市長による講演「うつのみやが目指すまちづくりと公共交通ネットワーク」
 佐藤市長はLRTに関して「やります」と明言しただけでなく、財源についてもしっかり明示しました。
 市長就任以来、この問題について公の場でここまではっきりと明言したことはおそらく初めてであったので(市民団体などの会合では積極的な発言を行っていたのですが)、これは大きな前進であったと考えてよいと思います。

佐藤市長講演会佐藤市長講演会佐藤市長講演会
▲ 2011年9月1日(木)、宇都宮の佐藤市長は「LRTを市の東西の軸として公共交通ネットワークを再構築し、街の魅力を向上させることが将来のために必須」だと、詳細なデータを示しながら説明しました。(クリックすると拡大画像を表示します)


■ネットワーク型コンパクトシティへ転換

 講演会の前半は、宇都宮市が2015年をピークに人口減少に転じるという予測が立てられている中、「ネットワーク型コンパクトシティ」への転換を図って人口減少を食い止めようとしていることなどの説明でした。
 (このまま放置すると、市街地の拡散が無秩序に進んでしまい、道路・上下水道・公共施設などの都市インフラの維持整備費が増大し、市の財政を圧迫してしまう公算大)

 具体的には、市内各所に拠点となる地域別のコンパクトシティへの施設家機能の集約を進め、各コンパクトシティ内で買い物や金融機関、医療など、日常生活を支障なく送れるようにする。そのためには地域内交通を整備し、ある程度クルマがなくても生活に困らないようにする必要がある……というもの。
 ただし、通勤通学やその他の用事で地域外に出る必要は当然あるわけで、そこは東京などと同様、「乗り換えれば遠方まで行ける」状態にするため、公共交通ネットワークを整備して、各コンパクトシティ間、あるいは各コンパクトシティと鉄道の駅などを結ぶ公共交通が必要だと説明。

 これらを整備・有機的に連携させることで、たいていの場合は公共交通で移動できるようにすれば、不要不急のクルマ利用を抑制できます。
 つまり、公共交通ネットワークがちゃんと機能して住民が利用すれば、過度なクルマ依存と慢性的な渋滞から脱却できるだけでなく、本当にクルマが必要な人も渋滞に巻き込まれずに済む状態を創出できる……というわけです。


■宇都宮の「生命線」でもある清原地区の重要性

 続いて、佐藤市長からは、市東部の清原地区の重要性についての説明がありました。

 宇都宮市の税収は約870億円。
 その内、清原地区だけで年間115億円の法人税収入があります。
 いわば、「宇都宮市の生命線」です。

 しかし以前から、工業地帯の清原地区や、隣接する芳賀地区は、毎日激しい通勤渋滞にさらされていて、市民生活にも大きな支障が出ています。
 市の財政を支えている工業地帯に通勤するためのクルマが溢れて慢性的な渋滞を引き起こしてしまう……というのは、なんとも皮肉な話です。

 ここで佐藤市長は、「ある可能性」に言及します。
 もし「宇都宮の生命線」でもある清原地区の利便性向上を行わず、進出している企業が「不便だから撤退」などということになったら、どうなるか。
 当然、市の税収は激減しますので、市の行政サービスは従来の水準では維持できなくなってしまいます。

 つまり、清原地区の問題は、この地区だけの問題ではなく、実は宇都宮市の根幹を揺るがしかねない問題なのです。

 清原地区の各企業は、少しでも渋滞解消になればと、独自で(自腹で)シャトルバス運行などを行っていますが、佐藤市長によればこれは本来行政がやらなければいけないこと。
 よく「橋を架ければいい」とか「道路を造ればいい」という意見が出ますが、いくら道路事情を改善しても結局トータルの道路交通量が減るわけではないし、目的地にクルマが集中することも変わらないので、渋滞箇所が変わるだけの対処療法に過ぎず、問題の根本解決には至りません。

 清原地区の皆さんは、以前から市の中心部への交通手段はLRTが最適だと考えています。
 佐藤市長は、LRTを導入した場合の想定として、JR宇都宮駅東口と清原地区の間には停留所を10~15ヶ所ほど設置し、所要時間は約25分と推定できますと発言。各駅停車タイプだけでなく、直通運転や快速運転を行えれば所要時間はさらに短縮できる可能性もあると説明しました。
 また、将来的にJR宇都宮駅の西口方面に延伸することになる場合は、地平にある在来線と高架の新幹線の間、2Fコンコースを通せますとも説明しました。


■「LRTか、連接バスか」的な択一の話ではない

 佐藤市長は、「LRTの話をすると、それだけで拒否反応を示す人もいるようですが、宇都宮市としては『LRTか、連接バスか』という択一の話ではなくて、地域や人口、地域ごとの特色に応じて、LRTや連接バス、路線バスやジャンボタクシーなど、最適な交通モードを使い分ければ良いと考えています」と説明しました。

 ここで、LRT先進都市・ストラスブールの交通事情について紹介する映像を紹介。

 同市では、郊外のLRTターミナルが「トランジットセンター」(交通結節点/複数の交通機関の乗り換えが行えるターミナル)になっていて、巨大なパーク&ライド駐車場が併設されています。
 この駐車場にクルマを駐めると、駐車料金と引き替えで、市の中心街までのLRTに乗車できる往復チケットが手渡されるので、市民が進んでLRTに乗り換えている様子が映っていました。

 宇都宮市の公共交通について佐藤市長は、できれば1枚のICカードで鉄道・バス・LRT・デマンドバスなど、さまざまな交通機関に乗車できるようにすると良いと考えていますと発言。
 実際、「Suica」や「PASMO」などをご利用になっていると、その利便性の高さを実感している人が多いと思いますが、それを市内交通にも適用し、なおかつ乗換ごとに運賃が加算されない「通し運賃」や、一定エリア内であれば何度乗り換えても同一運賃である「ゾーン運賃」などを併用すれば、これは効果絶大です。


■民間でないからできること、行政だからやれること

 講演の最後で、佐藤市長は「公共」ということについての考え方と、極めて重要な数字を明らかにしています。
 以下、概略です。


 行政はもちろん採算性を意識しているが、黒字でなければやらないわけではありません。
 行政は公共性が大事で、民間ではできないことをするのが務め。これは公共交通も同じです。

 LRTは国が注力しています。
 宇都宮の場合は、初期投資が380億円かかる見込みですが、「上下分離方式」を導入して「下」のインフラや車両などの部分を公的に賄って、運行会社は「上」にあたる列車の運行を担当することになります。
 初期費用の1/2は国が負担し、残り1/2を県と市が受け持つことになります。
 (つまり、宇都宮市の財政負担は、仮に初期費用の1/4を負担するのであれば「約95億円」となります)

 清原工業団地を売り出したときの売却益が、約100億円残っています。
 清原地区の同意を得る必要がありますが、この資金をLRT整備に使うことが考えられます。
 (もし、清原地区の管理する売却益全額をLRTに活用すると、宇都宮市の実質的な初期費用負担はゼロになる可能性が高い)

 以前の渡辺知事とお会いした際、清原工業団地の売却益は、元々清原地区の皆さんの尽力によって生み出されたものであるので、清原地区のためになることに投じるべきではないかとお話しになっていました。
 私(佐藤市長)もそう思っています。

 LRTの整備には時間がかかり、自分が存命の間にはどうせ完成しない……などという人もいます。
 しかし、いざ工事が始まれば、今はパネル工法のような工期が短縮できる方法で建設するので、工期は3年かからないでしょう。



 最後に市長は、次のように締めくくり、満場の拍手喝采を浴びて講演を終えました。

 「もう反対反対ではなく、将来に向けて必要な設備投資を行おうじゃありませんか」


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2月8日(月)「公共交通シンポジウム」レポート

『ひと』『まち』『地球』にやさしいこれからの交通システムを考えよう 公共交通シンポジウム
~2010年2月8日(月)・水戸「県民文化センター」で実施~


 2010年2月8日(月)、茨城県公共交通活性化会議(会長:茨城県知事)主催の公共交通シンポジウムが行われました。 62bdf3d1.jpeg
 基調講演として、交通ジャーナリスト・鈴木文彦氏の講演「みんなで考えよう!地域公共交通の活性化」、筑波大学大学院講師・谷口綾子氏の講演「公共交通で健康増進」と、パネルディスカッション「地域で支える公共交通のあり方」が行われました。

 茨城県では、先年廃止となった鹿島鉄道跡地をバス専用道化する「BRT」計画が進められていて、講演とパネルディスカッションを通した印象としては、この鹿島鉄道跡BRT計画の理論付けも狙っているのかな……というような印象もやや受けました。


■講演「みんなで考えよう! 地域公共交通の活性化」

 最初の講演は、シンポジウムのコーディネーターでもある交通ジャーナリスト・鈴木氏による地域公共交通についての講演。
6e20cefa.jpeg
 昨今コミュニティバスの導入が各地で行われていますが、運行すれば良いわけではなく、しかるべき戦略や目的が不可欠であること。
 幹線系・支線系・地域内交通と、それぞれが有機的に連携しないと効果が半減してしまうこと。
 従来は赤字路線の存廃問題が表面化してからの「対策」に力点が置かれていたが、今後は総合的な「政策」として考えるべきであること。

 このような主旨の、多岐に渡る講演でした。

 鈴木氏はバスの愛好家ということもあり、また地域の公共交通についての話がメインだったこともあって、鉄道やLRTよりもバスに比重を置いた話ではありました。
 (最後のまとめも「バス・鉄道」の利用促進を……という順番でしたし)

 もちろん、電車だバスだと区別して考えるのではなく、異なる交通モードの連携が肝要だという前提は踏まえてのお話しではありました。


■講演「公共交通で健康増進」

 続いて、筑波大学の谷口講師による公共交通の重要性についての講演。
 タイトルでは「健康増進」とありましたが、話の肝はそこではなく、過度なクルマ依存から脱却し、公共交通とクルマの上手な使い分けを進めよう……というような内容でした。

ae0221c1.jpeg 公演冒頭で、クルマが便利なのは大前提として踏まえつつ、

・皆が便利さを享受しようとするあまり、かえって不便になる(渋滞が頻発して所要時間が長くなるなど)という社会的ジレンマが発生する
・その結果として公共交通離れが進めば、公共交通はますます不便になってしまう(利用者が減ると減便につながり、減便すればさらに利用者が遠のく……という負のスパイラルが発生する)

 ……と、過度なクルマ依存に継承を鳴らしつつ、

・公共交通を利用するには、自分のライフスタイルを公共交通の運行時間に「合わせる」ことになるが、そのことで規則的な生活リズムが生まれる
・公共交通を利用するためには歩いたり自転車に乗ることになるが、体を動かすことで健康にも良いう生まれる

 ……と、公共交通を利用することの副次的なメリットも紹介していました。


 公共交通はその都度お金を払っているので「高い」という印象が強い人も少なくないようですが……との前置きで、ガソリン代しかかかっていないと思いがちのクルマも、実は取得代金や車検代、税金、各種保険などを日割りにすると、リッターカーでも1日あたり1,500円以上かかっているんだという説明に、会場内から驚きの声が。
 これが高級車になると、1日5,000円以上という車種もあり、そこにガソリン代などが加わると……。

 なるほど、これだと普段あまり意識していない人にとっても、結構分かりやすい説明ですね。


 今後、公共交通を活性化するためには、

・教育の現場や各家庭での子育ての過程で、公共交通に親しませることが極めて重要
・クルマ産業が「クルマはかっこいい」というイメージ戦略を長年行ってきたのと同様、「電車やバスを使うことはスマートだ」というイメージ戦略が必要

 こんなお話しもありました。


■パネルディスカッション「地域で支える公共交通のあり方」

 パネルディスカッションでは、上記の鈴木氏が司会を務め、パネリストととして前出の谷口講師や、ひたちなか海浜鉄道の吉田社長などが登壇。
 それぞれのお立場でどんな活動をしているのか、公共交通活性化のためにどんなことが必要か等々の発言がありました。
 
cff57675.jpeg ひたちなか海浜鉄道は、市民鉄道としての再スタートを切ることに成功し、市民団体や地元商店街、高校などの熱心なバックアップもあって好調に推移していること、今後はさらなる観光需要の呼び込みにも注力していくことなどを説明。
 現在、金上駅での交換設備新設工事を行っていて、工事完了後は運行頻度の向上を実現できるようになりますから、利便性も向上することになります。
 また、他社からの中古車両導入による旧型車両の置き換えも行っていく予定ですので、それが実現すると車両のグレードが上がるだけでなく、冷房化率も向上するので、サービス面の改善が図れます。
 ひたちなか市も鉄道とコミュニティバスの連接による公共交通活性化に熱心ですから、今後もさらなる活性化に期待したいところです。

 日立市南部の乗合タクシー「みなみ号」は、地域の全世帯から年間2,000円の運行経費を負担してもらって運行しているとのこと。
 利用は大半が高齢の女性で、1日4便、利用数も安定している……というより、頭打ちになっているとのこと。
 今後を考えると、デマンドタクシーへの移行を検討することになるかも……というようなお話しでした。
 運行経費を役所頼りにしないで、一部は地元が負担する……という形態は、年間2,000円とはいえ各家庭に直接負担をお願いするわけですから、実現までには大変なご苦労があっただろうと思います。 

 土浦市内のコミュニティバス「キララちゃん」は、利用は着実に伸びてきたが、現在100円としている運賃をどうするのかなど、今後考えて行かないといけないというお話し。
 コミュニティバスは、「運賃収入3割、自治体からの運行補助7割」程度が適正(前出の鈴木氏)とのことですが、「キララちゃん」の現状もだいたいこの程度だそうですから健闘していることは間違いありません。しかし、確かに運賃100円のままで大丈夫だろうか……という懸念は出てくると思います。
 土浦は特急停車駅ですし、市内の路線バス網も健在ではあるのですが、どんどん活性化するつくば市に比べると勢いを失っていることは確かですので、その意味でも「キララちゃん」バスなどの取り組みで中心市街地をさらに活性化できるかどうか、今後が気になるところです。


 その後、質疑応答も行われ、数人がパネリストに質問を行いました。

 水戸にLRT導入を検討している「高齢者と環境にやさしい交通まちづくりを考える会」の若者も質問があり、

・茨城県の担当者……「LRTについてはまだ勉強中」としながらも、要望があれば検討していく……というようなお返事(ただし、明確は返答ではありませんでした)。
・谷口講師……導入するかどうかは議会が決めます、議会は議員で運営されますので、そうした見識を持つ議員を議会に送り出すことも必要になるでしょう、とのお返事。
・鈴木氏……LRTは初期投資が大きくなるので、採算性があるのかどうかなどの検討も必要……と、慎重な見方を示しました。



 茨城県は、年々クルマ依存が深刻化していて、現状では「移動手段がクルマ」の割合が9割に迫る勢いです。
 当然、その分公共交通は衰退の一途で、特にバスは激しい勢いで輸送量を減らし続けています。

 クルマは確かに便利です。
 しかし、本当にこのままでいいんでしょうか。

 公共交通の衰退は、誰もが気軽に移動できる自由がなくなっていくことでもあるし、地域の衰退とも直接的にリンクしていきますから、どこかで食い止めないといけません。

 クルマ依存をどれだけ是正できるか。
 どれだけの人が当事者意識を持って、交通の問題を考えていけるか。

 「気がついたら、地元の公共交通がなくなっていた」なんてことにならないよう、各々の立場で「できること」をしていくことが肝要となっていくものと思いました。

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【水戸LRT】2月6日(土)勉強会レポート

 2010年2月6日(土)、水戸市南町「紅茶館」で行われた「高齢者と環境にやさしい交通まちづくりを考える会」(代表:早船 徳子 氏)の勉強会にお邪魔してきました。
 (16:00からの回と、19:00からの回の2回開催で、私は16:00からの回に参加しました)

9b3226d1.jpeg 勉強会は「紅茶館」の2Fで行われ、たぶん50人ほどの皆さんが参加。
 一般市民の方や地元商店街の方、市内のお年寄り、さらには市議会議員なども参加していたようです。

 講師は、日本のLRT研究の第一人者で、日本銀行にお勤めの「宇都宮 浄人」氏。
 宇都宮氏は、中高を水戸で過ごした経験があり(この時期に早船氏と同級生だったそうです)、他の地方都市もそうですが、水戸の中心街が衰退する現状に危機感を持っていたそうです。

 宇都宮氏は、スライドで写真やグラフなどを示しながら、

・水戸の中心街を活性化するツールの一つとして、便利で視覚的にもわかりやすい公共交通が必要なこと。
・それにはLRTを軸に据えつつ、バスや自家用車などとの連携を円滑にするのがベストであろうこと。
・インフラ面を公的に整備すれば、水戸ほどの都市規模があれば運行収支はプラスになるだろうこと。
・基軸となる分かりやすい交通手段ができることで市内に回遊性が生まれ、賑わいを創出する効果も生じること。

 おおむねこんな話を行いました。

 その後、予定時間を超過して熱心な質疑応答が行われ、関心の高さをうかがわせました。

 水戸ではこうした街中勉強会を繰り返し行うことで、市民への認知を(変な誤解が生じないように)広めていくようです。


 県内ながら、ほとんど縁がなかったのが水戸でした。
 が、これを機に訪問回数もつながりも増えそうです。

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下館レイル倶楽部・代表
性別:
男性
趣味:
鉄道、鉄道模型、ミリタリーなど
自己紹介:
 「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
 しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
 公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!

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