下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【JR東日本】運用離脱した「キハ38形」などのその後
新型ディーゼルカー「キハE130形100番台」の導入に伴い、JR久留里線(千葉県)での運用が終了した「キハ38形」と「キハ30形」、「キハ37形」。
運用が終わった途端、3回に分けて郡山と新津へ「連行」されました。
・キハ38形3両が郡山へ(「railf.jp」 2012年12月21日)
http://railf.jp/news/2012/12/20/140000.html
・キハ30形、キハ37形、キハ38形が新津へ(「railf.jp」 2012年12月15日)
http://railf.jp/news/2012/12/12/160000.html
・【JR東】久留里用気動車6輌 配給輸送(「鉄道ホビダス」 2012年12月11日)
http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2012/12/jr6_4.html
・キハ38形3両が郡山総合車両センターへ(「railf.jp」 2012年12月6日)
http://railf.jp/news/2012/12/06/150000.html
・【JR東】キハ38形 郡山総合車セへ(「鉄道ホビダス」 2012年12月5日)
http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2012/12/jr38.html
これらの記事から、移動は下記の3段階に分けて行われたことが分かります。
12月5日に木更津から郡山に移動
……「キハ38 1001」、「キハ38 1」、「キハ38 3」
12月11日に木更津から会津若松(→新津)へ移動
……「キハ38 1003」
……ほかに、「キハ30 100」、「キハ30 98」、「キハ37 2」、「キハ37 1003」、「キハ37 1002」
12月20日に木更津から郡山に移動
……「キハ38 1002」、「キハ38 2」、「キハ38 4」
この内、12月18日〜19日にかけて、一度郡山に移動してから、再び千葉に「里帰り」したのが「キハ38 1」。
いすみ市作田にある「ファーム・リゾート 鶏卵牧場」にある「ポッポの丘」で、展示車両として静態保存されるためです。
(結構面白い車両達が静態保存されています)
12月22日現在、郡山には計5両の「キハ38形」が、新津には「キハ38 1003」のみ1両が、それぞれ「いる」ものと思います。
「キハ38形」が製造されたのは、1986年〜87年にかけて。
「キハ35形」の発生品を一部流用しているとはいえ、まだ当面は使えるように感じます。
このまま廃車となってしまうのか。
JR東日本の他の線区で使用する予定があるのか。
国内外の他の鉄道へと譲渡されるのか。
何か改造を施す予定でもあるのか。
個人的には大学時代の八高線で頻繁に乗車したことがり、結構気に入っている車両の一つなので、どうにも気になって仕方ありません。
ちなみに、久留里線で運用を外れたこれらの車両については、JR千葉支社の椿浩支社長が「複数の私鉄から引き合いがあり、譲渡を検討している」と発言したようで、次のような記事が掲載されていました。
・新型車両、12月導入 旧型キハ引退で記念イベント JR久留里線(「ちばとぴ」 2012年10月9日)
http://www.chibanippo.co.jp/c/news/economics/104488
既にネット上ではあれこれ譲渡先についてのウワサが飛び交っていますが、現時点では未確認情報ですので、JR東日本や、譲渡が行われる場合は譲渡先からの正式発表を待ちたいと思います。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
運用が終わった途端、3回に分けて郡山と新津へ「連行」されました。
・キハ38形3両が郡山へ(「railf.jp」 2012年12月21日)
http://railf.jp/news/2012/12/20/140000.html
・キハ30形、キハ37形、キハ38形が新津へ(「railf.jp」 2012年12月15日)
http://railf.jp/news/2012/12/12/160000.html
・【JR東】久留里用気動車6輌 配給輸送(「鉄道ホビダス」 2012年12月11日)
http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2012/12/jr6_4.html
・キハ38形3両が郡山総合車両センターへ(「railf.jp」 2012年12月6日)
http://railf.jp/news/2012/12/06/150000.html
・【JR東】キハ38形 郡山総合車セへ(「鉄道ホビダス」 2012年12月5日)
http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2012/12/jr38.html
これらの記事から、移動は下記の3段階に分けて行われたことが分かります。
12月5日に木更津から郡山に移動
……「キハ38 1001」、「キハ38 1」、「キハ38 3」
12月11日に木更津から会津若松(→新津)へ移動
……「キハ38 1003」
……ほかに、「キハ30 100」、「キハ30 98」、「キハ37 2」、「キハ37 1003」、「キハ37 1002」
12月20日に木更津から郡山に移動
……「キハ38 1002」、「キハ38 2」、「キハ38 4」
この内、12月18日〜19日にかけて、一度郡山に移動してから、再び千葉に「里帰り」したのが「キハ38 1」。
いすみ市作田にある「ファーム・リゾート 鶏卵牧場」にある「ポッポの丘」で、展示車両として静態保存されるためです。
(結構面白い車両達が静態保存されています)
12月22日現在、郡山には計5両の「キハ38形」が、新津には「キハ38 1003」のみ1両が、それぞれ「いる」ものと思います。
「キハ38形」が製造されたのは、1986年〜87年にかけて。
「キハ35形」の発生品を一部流用しているとはいえ、まだ当面は使えるように感じます。
このまま廃車となってしまうのか。
JR東日本の他の線区で使用する予定があるのか。
国内外の他の鉄道へと譲渡されるのか。
何か改造を施す予定でもあるのか。
個人的には大学時代の八高線で頻繁に乗車したことがり、結構気に入っている車両の一つなので、どうにも気になって仕方ありません。
ちなみに、久留里線で運用を外れたこれらの車両については、JR千葉支社の椿浩支社長が「複数の私鉄から引き合いがあり、譲渡を検討している」と発言したようで、次のような記事が掲載されていました。
・新型車両、12月導入 旧型キハ引退で記念イベント JR久留里線(「ちばとぴ」 2012年10月9日)
http://www.chibanippo.co.jp/c/news/economics/104488
既にネット上ではあれこれ譲渡先についてのウワサが飛び交っていますが、現時点では未確認情報ですので、JR東日本や、譲渡が行われる場合は譲渡先からの正式発表を待ちたいと思います。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
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【KATO】「鉄道模型カタログ2013」2012年12月13日発売
- 2012/12/11 (Tue)
- オススメ(書籍・雑誌) |
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毎年この時期になると発売される「KATO」のカタログ「KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ」。
最新刊となる「KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2013」が2012年12月13日(木)に発売となります。
税込み定価は「1,575円」です。
今回の新カタログは、2013年内に発売・再生産予定の製品情報を中心として、初心者向けの説明ページなども掲載しています。
![KATO 鉄道模型カタログ2013](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/59557f695871076ddb995c4b6af2a64c/1355169192)
▲ 「KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2013」は2012年12月13日(木)発売です。
近年のKATOのカタログは、以前の過去の製品を全て収する網羅的な構成ではなく、その年ごとに予定している新製品・再生産品情報メインの構成に変更されています。
Nゲージの過去製品については、「KATO Nゲージ アーカイブス -鉄道模型3000両の世界-」にまとめられています。
また、2012年版のカタログも販売中です。
もしお持ちでなければ、今の内にいかがでしょうか。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
最新刊となる「KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2013」が2012年12月13日(木)に発売となります。
税込み定価は「1,575円」です。
今回の新カタログは、2013年内に発売・再生産予定の製品情報を中心として、初心者向けの説明ページなども掲載しています。
▲ 「KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2013」は2012年12月13日(木)発売です。
25-000 KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2013 【発売】KATO(カトー) 【ジャンル】鉄道模型カタログ 【発売日】2012年12月13日 【税込価格】1,575円(参考:2012年12月11日時点でのAmazon.co.jpでの販売価格は「1,383円」) 【備考】2013年内に発売・再生産予定の製品情報が中心 |
近年のKATOのカタログは、以前の過去の製品を全て収する網羅的な構成ではなく、その年ごとに予定している新製品・再生産品情報メインの構成に変更されています。
Nゲージの過去製品については、「KATO Nゲージ アーカイブス -鉄道模型3000両の世界-」にまとめられています。
また、2012年版のカタログも販売中です。
もしお持ちでなければ、今の内にいかがでしょうか。
25-050 KATO Nゲージ アーカイブス -鉄道模型3000両の世界- 【発売】KATO(カトー) 【ジャンル】鉄道模型カタログ 【発売日】2008年2月22日 【税込価格】1,890円 【備考】 |
25-000 KATO Nゲージ・HOゲージ 鉄道模型カタログ2012 【発売】KATO(カトー) 【ジャンル】鉄道模型カタログ 【発売日】2011年12月20日 【税込価格】1,575円 【備考】2012年内に発売・再生産予定の製品情報が中心 |
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【運転会告知】アルテリオ2012年12月定例運転会
- 2012/12/08 (Sat)
- 運転会開催のお知らせ |
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告知が遅れてしまいましたが、当方「下館レイル倶楽部」の2012年12月定例運転会のお知らせです。
今月は通常の開催スケジュールである「第3週の週末開催」となります。
一般公開は2012年12月16日(日)10:00~16:00となります(途中1時間ほど「昼休み」となります)。
設営&試運転は、運転会前夜の12月15日(土)18:00~21:00頃に行います。
ご都合がよろしければ、ぜひご参加ください。
なお、運転会前日の夕方から行う設営(12月15日18:00~)と、運転会当日の早朝(12月16日9:00~10:00)は、原則としてメンバー、または参加費をご負担いただける方のみ参加可能と致します。
ご参加の方は、この記事に参加表明のコメントをつけてください(記事タイトル下の「CM」部分をクリックするとコメントを投稿できます)。
![アルテリオ定例運転会・12年7月](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/59557f695871076ddb995c4b6af2a64c/1342938183?w=480&h=360)
![アルテリオ定例運転会・12年7月](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/59557f695871076ddb995c4b6af2a64c/1342938181?w=480&h=360)
![アルテリオ定例運転会・12年7月](https://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/59557f695871076ddb995c4b6af2a64c/1342938184?w=480&h=360)
▲ 2012年12月の定例運転会は、12月16日(日)が一般公開日です。これらの画像は、2012年7月定例運転会の模様です。(クリックすると拡大画像を表示します)
【開催予定】
・一般公開:2012年12月16日(日)10:00~16:00(途中、1時間ほど「昼休み」)
・開催会場:しもだて地域交流センター「アルテリオ」2F「研修室」(茨城県筑西市)
http://www.city.chikusei.lg.jp/kurashi/shisetsu/shisetsu/kouryu/kouryu.html
・前日設営:2012年12月15日(土)18:00~21:00頃(基本的に関係者か、参加費をお支払いいただける方)
・反省会?:2012年12月15日(土)21:00頃~
・早朝走行:2012年12月16日(日) 9:00~10:00(基本的に関係者のみ)
・撤収作業:2012年12月16日(日)16:00~17:00(基本的に関係者のみ)
・備考1:HOゲージとNゲージ(もしかするとZゲージも?)の周回コースを設置予定です
・備考2:前日設営のみ、運転会当日のみの参加も可能です
・備考3:運転会当日はギャラリーが見物に来ます(「早朝運転」「昼休み」中を除く)
・備考4:ご参加の場合、会場費はその日ごとに分担をお願いします^^; (人数次第ですが、500~800円程度/日となることが多いです)
【参加者の集合について】
・前日設営からご参加の場合
……クルマ利用の方は、「アルテリオ」地下駐車場に駐車願います
……18:00に2F受付前で集合/他に誰もいない場合は、「下館レイル倶楽部です」と名乗って部屋を開けてもらってください
……鉄道利用の方は、下館駅北口から徒歩5~6分で「アルテリオ」です(道順など不安な方は事前にお知らせください)
・日曜日ご参加の場合
……クルマ利用の方は、「アルテリオ」地下駐車場に駐車願います(満車の場合は、道向かいにある「筑西しもだて合同庁舎」もしくは「筑西市役所」の駐車場をご利用ください)
……鉄道利用の方は、下館駅北口から徒歩5~6分で「アルテリオ」です(道順など不安な方は事前にお知らせください)
【12月15日・朝~夕方/自由行動】
・真岡鐵道「SLもおか号」乗車
……往路は下館10:37発→茂木12:02着
……復路は茂木14:28発→下館15:57着
……途中の益子(ましこ)駅で下車し、陶芸の街を散策するのも良し
……下館13:02発→茂木14:07着の普通列車に乗れば、復路の「SLもおか号」に乗車可能
・「とばのえステーションギャラリー」見学
……開催時間は、9:00~16:00
……入場無料/模型の運転を行う場合は、10分140円(硬券の「入場券」を購入する)
【12月15日・夜/設営、オフ会】
・オフ会
……1日目の設営終了後に開催(会場未定)
【12月16日・朝~夕方/運転会】
・運転会
……会場は9:00から入室可能ですが、10:00までは基本的に一般非公開の「早朝運転」タイムとします
……「昼休み」中は、ご希望の参加者のみ残って基本的に一般非公開の「昼間運転」タイムとします
……会場は17:00まで押さえてありますが、ラスト1時間は撤収作業です
【12月16日・夜/オフ会】
・オフ会
……2日目の運転会終了後開催(会場未定)
・真岡鐵道(真岡市公式サイト内)
http://www.moka-railway.co.jp/
・道の駅もてぎ もてぎプラザ
http://www.motegiplaza.com/
・とばのえステーションギャラリー
http://www.kantetsu.co.jp/train/tobanoe_gallery/tobanoe_gallery.html
(ちょこっと宿泊案内)
・「ホテル新東」
http://www.hotel-shinto.co.jp/
・「ホテル ルートイン下館」
http://www.route-inn.co.jp/search/hotel/index.php?hotel_id=529
なお、2013年3月までの開催予定(運転会の当日)は次の通りです(それぞれ運転会前日の土曜日は、会場設営&試運転を行います)。
・2013年1月……1月20日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
・2013年2月……2月17日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
・2013年3月……3月17日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
今月は通常の開催スケジュールである「第3週の週末開催」となります。
一般公開は2012年12月16日(日)10:00~16:00となります(途中1時間ほど「昼休み」となります)。
設営&試運転は、運転会前夜の12月15日(土)18:00~21:00頃に行います。
ご都合がよろしければ、ぜひご参加ください。
なお、運転会前日の夕方から行う設営(12月15日18:00~)と、運転会当日の早朝(12月16日9:00~10:00)は、原則としてメンバー、または参加費をご負担いただける方のみ参加可能と致します。
ご参加の方は、この記事に参加表明のコメントをつけてください(記事タイトル下の「CM」部分をクリックするとコメントを投稿できます)。
▲ 2012年12月の定例運転会は、12月16日(日)が一般公開日です。これらの画像は、2012年7月定例運転会の模様です。(クリックすると拡大画像を表示します)
【開催予定】
・一般公開:2012年12月16日(日)10:00~16:00(途中、1時間ほど「昼休み」)
・開催会場:しもだて地域交流センター「アルテリオ」2F「研修室」(茨城県筑西市)
http://www.city.chikusei.lg.jp/kurashi/shisetsu/shisetsu/kouryu/kouryu.html
・前日設営:2012年12月15日(土)18:00~21:00頃(基本的に関係者か、参加費をお支払いいただける方)
・反省会?:2012年12月15日(土)21:00頃~
・早朝走行:2012年12月16日(日) 9:00~10:00(基本的に関係者のみ)
・撤収作業:2012年12月16日(日)16:00~17:00(基本的に関係者のみ)
・備考1:HOゲージとNゲージ(もしかするとZゲージも?)の周回コースを設置予定です
・備考2:前日設営のみ、運転会当日のみの参加も可能です
・備考3:運転会当日はギャラリーが見物に来ます(「早朝運転」「昼休み」中を除く)
・備考4:ご参加の場合、会場費はその日ごとに分担をお願いします^^; (人数次第ですが、500~800円程度/日となることが多いです)
【参加者の集合について】
・前日設営からご参加の場合
……クルマ利用の方は、「アルテリオ」地下駐車場に駐車願います
……18:00に2F受付前で集合/他に誰もいない場合は、「下館レイル倶楽部です」と名乗って部屋を開けてもらってください
……鉄道利用の方は、下館駅北口から徒歩5~6分で「アルテリオ」です(道順など不安な方は事前にお知らせください)
・日曜日ご参加の場合
……クルマ利用の方は、「アルテリオ」地下駐車場に駐車願います(満車の場合は、道向かいにある「筑西しもだて合同庁舎」もしくは「筑西市役所」の駐車場をご利用ください)
……鉄道利用の方は、下館駅北口から徒歩5~6分で「アルテリオ」です(道順など不安な方は事前にお知らせください)
【12月15日・朝~夕方/自由行動】
・真岡鐵道「SLもおか号」乗車
……往路は下館10:37発→茂木12:02着
……復路は茂木14:28発→下館15:57着
……途中の益子(ましこ)駅で下車し、陶芸の街を散策するのも良し
……下館13:02発→茂木14:07着の普通列車に乗れば、復路の「SLもおか号」に乗車可能
・「とばのえステーションギャラリー」見学
……開催時間は、9:00~16:00
……入場無料/模型の運転を行う場合は、10分140円(硬券の「入場券」を購入する)
【12月15日・夜/設営、オフ会】
・オフ会
……1日目の設営終了後に開催(会場未定)
【12月16日・朝~夕方/運転会】
・運転会
……会場は9:00から入室可能ですが、10:00までは基本的に一般非公開の「早朝運転」タイムとします
……「昼休み」中は、ご希望の参加者のみ残って基本的に一般非公開の「昼間運転」タイムとします
……会場は17:00まで押さえてありますが、ラスト1時間は撤収作業です
【12月16日・夜/オフ会】
・オフ会
……2日目の運転会終了後開催(会場未定)
・真岡鐵道(真岡市公式サイト内)
http://www.moka-railway.co.jp/
・道の駅もてぎ もてぎプラザ
http://www.motegiplaza.com/
・とばのえステーションギャラリー
http://www.kantetsu.co.jp/train/tobanoe_gallery/tobanoe_gallery.html
(ちょこっと宿泊案内)
・「ホテル新東」
http://www.hotel-shinto.co.jp/
・「ホテル ルートイン下館」
http://www.route-inn.co.jp/search/hotel/index.php?hotel_id=529
なお、2013年3月までの開催予定(運転会の当日)は次の通りです(それぞれ運転会前日の土曜日は、会場設営&試運転を行います)。
・2013年1月……1月20日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
・2013年2月……2月17日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
・2013年3月……3月17日(日)「アルテリオ」2F「研修室」
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【KATO】2013年2月の新製品情報
- 2012/11/28 (Wed)
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ご紹介が遅れましたが、「KATO」が2013年2月の新製品情報を発表しています。
今回の目玉は、東京メトロ・丸ノ内線の現行車両「02系」と10系寝台急行「大雪」セット、「大雪」を牽引したことがある「ED76 500番台」。
それと、驚いたのは、「クモヤ90」0番台が製品化されることです。
・発売予定品情報 2013年2月(「KATO」公式サイト 2012年11月8日)
![発売予定品情報 2013年2月(KATO公式サイトへの直リンク)](http://www.katomodels.com/product/poster/files/2013_2.jpg)
▲ KATOの2013年2月の発売予定品情報(KATO公式サイトへの直リンク)。(クリックすると拡大画像を表示します)
・【Nゲージ】カトー 東京メトロ丸ノ内線02系、ED76ほか ご予約受付中商品のご案内(「J-鉄道部」 2012年11月8日)
http://blog.joshinweb.jp/joshintrain/2012/11/n-02ed76-bf83.html
2013年2月に発売となる新製品は次の通り。
【Nゲージ】
・10-1126 東京メトロ丸ノ内線02系 6両セット(標準価格:16,800円)
……東京メトロシリーズ第5弾
……要所で丸みがある独特の車体形状を再現
……製品のプロトタイプは後期形の7次車(編成番号53)
……SS-030台車、SS-130台車を新規製作
……先頭車の行先表示は「荻窪」、交換用として「池袋」を付属
……フライホイール付き動力ユニットを搭載、R216の曲線を通過可能
……編成中間車はKATOカプラー伸縮密連形を標準装備
・10-1124 10系寝台急行「大雪」 6両基本セット(標準価格:12,600円)
・10-1125 10系寝台急行「大雪」 6両増結セット(標準価格:12,600円)
……石北本線経由で札幌~網走を結んだ急行「大雪」の昭和45年10月ダイヤ以降の姿を再現
……「オロハネ10」を新規製品化、車体中央の扉、左右にそれぞれA寝台・B寝台を振り分けた特異な外観を再現
……「スロ54」「スユニ61」「マニ60」200番台も新規製品化
……基本セット、増結セットとも、編成両端の車両はテールライト標準装備(消灯スイッチ付き)
……編成端の車両はアーノルトカプラー、中間車はKATOカプラーN JPを標準装備(アーノルトカプラー交換用のKATOナックルカプラーも付属)
……編成中間車はKATOカプラー伸縮密連形を標準装備
……側面の号車番号・種別表示・列車名・行先などは印刷済み(急行「大雪」網走行)で、行先表示シール(札幌行)も付属
……ブ基本セット、増結セットとも、ブックケースは「6両+機関車」タイプ
・3071 ED76 500番台(標準価格:7,560円)
……交流電気機関車「ED76」の北海道仕様「500番台」
……D形機関車ながら、F形に匹敵する長い車体
……北海道仕様ならではの側面フィルター、大きな床下機器、幅広車体を再現
……運転台を再現、運転士フィギュアを搭載可能
……手すりや解放テコも再現、屋根上は白色の碍子&銅色の高圧線で再現
……ナンバープレートは「503」「508」「517」「522」の4種類から選択
……メーカープレートは「東芝」「三菱」から選択
……動力はフライホイール付動力ユニットを搭載
……ヘッドライト点灯
……アーノルトカプラー標準装備、交換用のKATOナックルカプラー付属
・クモヤ90 0番台(M車)(標準価格:6,090円)
・クモヤ90 0番台(T車)(標準価格:3,150円)
……旧形国電「73系」を改造した事業用車「クモヤ90形」を製品化
……電車区構内での入れ換え、回送、試運転車両の伴走車での本線走行などに活躍
……実車同様、様々な連結相手に対応するため、一方にボディマウント式KATO密連形カプラー、もう一方にアーノルトカプラー(台車マウント式)を標準装備
……両側の運転台にはヘッドライト・テールライトを標準装備(消灯スイッチ付き)
……点灯式の運行表示幕は「90 回」を印刷済み
……車体番号はモーター車(M車)が「009」、モーターなし(トレーラー/T車)は「022」
……動力はフライホイール付動力ユニットを搭載
……旧形国電独特のグローブベンチレータを再現、床下機器も新規作成
……フライホイール付き動力ユニットを搭載、動力台車は他車両との併結を前提にトラクションタイヤ無しの仕様
丸ノ内線「02系」は、銀座線の「01系」を拡大発展させたような車両で、登場当時はとても先進的な印象を受けたことを思い出します。
KATOをはじめ、各社から地下鉄車両が相次ぎ発売されていますので、地下鉄好きな方はぜひご注目ください。
急行「大雪」は、昭和45年10月ダイヤ以降の編成を再現するもので、電化区間の札幌~旭川間を検印した「ED76 500番台」とセットでの発売となります。
この編成発売のために新規製作された客車も複数ありますので、人気が出そうな気がします。
「クモヤ90 0番台」は、KATOが製品化するとは予想していなかったので、正直びっくりしました。
実車同様、いろいろな状況を想定して楽しめそうですね。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
今回の目玉は、東京メトロ・丸ノ内線の現行車両「02系」と10系寝台急行「大雪」セット、「大雪」を牽引したことがある「ED76 500番台」。
それと、驚いたのは、「クモヤ90」0番台が製品化されることです。
・発売予定品情報 2013年2月(「KATO」公式サイト 2012年11月8日)
![発売予定品情報 2013年2月(KATO公式サイトへの直リンク)](http://www.katomodels.com/product/poster/files/2013_2.jpg)
▲ KATOの2013年2月の発売予定品情報(KATO公式サイトへの直リンク)。(クリックすると拡大画像を表示します)
・【Nゲージ】カトー 東京メトロ丸ノ内線02系、ED76ほか ご予約受付中商品のご案内(「J-鉄道部」 2012年11月8日)
http://blog.joshinweb.jp/joshintrain/2012/11/n-02ed76-bf83.html
2013年2月に発売となる新製品は次の通り。
【Nゲージ】
・10-1126 東京メトロ丸ノ内線02系 6両セット(標準価格:16,800円)
……東京メトロシリーズ第5弾
……要所で丸みがある独特の車体形状を再現
……製品のプロトタイプは後期形の7次車(編成番号53)
……SS-030台車、SS-130台車を新規製作
……先頭車の行先表示は「荻窪」、交換用として「池袋」を付属
……フライホイール付き動力ユニットを搭載、R216の曲線を通過可能
……編成中間車はKATOカプラー伸縮密連形を標準装備
・10-1124 10系寝台急行「大雪」 6両基本セット(標準価格:12,600円)
・10-1125 10系寝台急行「大雪」 6両増結セット(標準価格:12,600円)
……石北本線経由で札幌~網走を結んだ急行「大雪」の昭和45年10月ダイヤ以降の姿を再現
……「オロハネ10」を新規製品化、車体中央の扉、左右にそれぞれA寝台・B寝台を振り分けた特異な外観を再現
……「スロ54」「スユニ61」「マニ60」200番台も新規製品化
……基本セット、増結セットとも、編成両端の車両はテールライト標準装備(消灯スイッチ付き)
……編成端の車両はアーノルトカプラー、中間車はKATOカプラーN JPを標準装備(アーノルトカプラー交換用のKATOナックルカプラーも付属)
……編成中間車はKATOカプラー伸縮密連形を標準装備
……側面の号車番号・種別表示・列車名・行先などは印刷済み(急行「大雪」網走行)で、行先表示シール(札幌行)も付属
……ブ基本セット、増結セットとも、ブックケースは「6両+機関車」タイプ
・3071 ED76 500番台(標準価格:7,560円)
……交流電気機関車「ED76」の北海道仕様「500番台」
……D形機関車ながら、F形に匹敵する長い車体
……北海道仕様ならではの側面フィルター、大きな床下機器、幅広車体を再現
……運転台を再現、運転士フィギュアを搭載可能
……手すりや解放テコも再現、屋根上は白色の碍子&銅色の高圧線で再現
……ナンバープレートは「503」「508」「517」「522」の4種類から選択
……メーカープレートは「東芝」「三菱」から選択
……動力はフライホイール付動力ユニットを搭載
……ヘッドライト点灯
……アーノルトカプラー標準装備、交換用のKATOナックルカプラー付属
・クモヤ90 0番台(M車)(標準価格:6,090円)
・クモヤ90 0番台(T車)(標準価格:3,150円)
……旧形国電「73系」を改造した事業用車「クモヤ90形」を製品化
……電車区構内での入れ換え、回送、試運転車両の伴走車での本線走行などに活躍
……実車同様、様々な連結相手に対応するため、一方にボディマウント式KATO密連形カプラー、もう一方にアーノルトカプラー(台車マウント式)を標準装備
……両側の運転台にはヘッドライト・テールライトを標準装備(消灯スイッチ付き)
……点灯式の運行表示幕は「90 回」を印刷済み
……車体番号はモーター車(M車)が「009」、モーターなし(トレーラー/T車)は「022」
……動力はフライホイール付動力ユニットを搭載
……旧形国電独特のグローブベンチレータを再現、床下機器も新規作成
……フライホイール付き動力ユニットを搭載、動力台車は他車両との併結を前提にトラクションタイヤ無しの仕様
丸ノ内線「02系」は、銀座線の「01系」を拡大発展させたような車両で、登場当時はとても先進的な印象を受けたことを思い出します。
KATOをはじめ、各社から地下鉄車両が相次ぎ発売されていますので、地下鉄好きな方はぜひご注目ください。
急行「大雪」は、昭和45年10月ダイヤ以降の編成を再現するもので、電化区間の札幌~旭川間を検印した「ED76 500番台」とセットでの発売となります。
この編成発売のために新規製作された客車も複数ありますので、人気が出そうな気がします。
「クモヤ90 0番台」は、KATOが製品化するとは予想していなかったので、正直びっくりしました。
実車同様、いろいろな状況を想定して楽しめそうですね。
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【特集:宇都宮LRT】課題(3)市民への周知継続
- 2012/11/25 (Sun)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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- ▲Top
先に行われた宇都宮市長選挙は、2期8年を手堅く務めてきた佐藤栄一氏が大差で当選しました。LRT導入を公約に掲げた佐藤氏が圧勝したことにより、同氏が掲げた「ネットワーク型コンパクトシティ」を実現するため、その東西方向の軸となるLRT導入計画が大きく前進します。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
前回の【課題(2)】運行主体の決定に続き、3つめの課題である「市民への周知継続」について。
【課題(3)】市民への周知継続
海外でLRT導入と鉄道・バスなどとの有機的な連携を実現し、市域内公共交通充実によるまちづくりに成功している諸都市でも、それぞれの国における「先進事例」(つまり「前例がない」)では、住民の理解を得るまでにそれなりに労苦が伴いました。
▲ 「ナントの勅令」が発布されたフランス・ナントのLRT。1958年に路面電車を廃止して以降はバス頼りだったものの限界があり、1981年に地下鉄や連接トロリーバスと比較検討した上でLRT導入を決定。LRTやバスなど市内交通は「ナント都市域交通公社」が一括運行。
上の動画はフランス・ナントのLRTとバスが題材ですが、ここはかつて路面電車が走っていた都市であるために、LRTに対しても「路面電車なんて時代遅れだ」という曲解が根強かっただろうことは想像に難くありません。
そこでナント市は、宇都宮市が行っているのと同様、市民向けにLRTの魅力やどうやって施工するかなどを記載したリーフレットを作成して周知活動を展開しました。
それでもおそらく、市民の少なくない割合が懐疑的であったり、反対したはずです。
しかし今、LRT導入が失敗だったと感じる市民はほとんどいないのではないかと思います。
公共交通の重要性については、各種アンケート結果を見ても明らかなのですが、だいたい8割方の人が「公共交通は重要」だと考えているようで、公的支援拡充についてもおおむね理解が得られていると判断して良い状況ではあります。
しかし、いざ具体的な計画が明らかになると、初期投資額の大きさだけが問題視され、なかなか計画が進まないということが起こりがちです。
漠然とした意識の中では「公共交通は重要」、でも具体的な話になると「多額の税金を注入するのは反対」では、いつになっても話が進みません。
市民の意見は十人十色で、全ての市民が100%満足するような政策など最初から存在しないのです。
それに、さまざまな意見を全て聞いていたのでは、行政が完全にストップしてしまいます。
それこそ「決められない政治」です。
そうなると、富山市の森市長のようにLRT導入を公約した市長がリーダーシップを発揮して導入を推進するしか手がないということになります。
富山の森市長は「私はLRTを導入します。私の政策が気に入らないなら次の市長選で落選させてください」と言い切ってLRTなど公共交通推進を行っています。
今、富山市長の公共交通充実という大方針に反対する市民はほとんどいません。
宇都宮でも同じことが言えます。
鉄道やLRTなど軌道系の公共交通機関が整備されると、沿線の付加価値は格段に向上します。
同じ金額を投じた場合、道路と軌道系交通機関では、もたらすメリットに格段の違いがあるのです。
軌道系交通機関の長所である定時運行性と速達性の高さ、輸送力の大きさ、まちづくりや不動産価値にも直結する将来確実性の高さなど、道路だけでは到底生み出すことができない底力を軌道系交通機関は秘めています。
(だからこそ、各国でLRT導入が進んでいるわけです)
普段当たり前のように利用している4車線道路が、実は1kmあたり25億円以上かかっている。
新しく立体交差ができて便利になったけど、実はそこだけで50億円以上かかっている。
国道バイパスの高架区間が開通して信号待ちが解消されたけど、1kmあたり100億円かかっている。
「テクノ通り」の整備には1km38億円かかった。
「北道路」は1km100億円を要した。
「大通り」の拡幅には1km90~100億円かかる。
それらに投じた税金と比較して、LRT整備が高額といえるかどうか。
運賃収入で整備費を回収できるLRTに対して、道路は一切収入を得ることができないのだから、それこそ「赤字」の垂れ流しではないか……。
コスト面を論拠にLRT導入に懐疑的なご意見をお持ちの方は、道路建設にどれほど「莫大な税金」が投入されているか、その点をあまりに軽視している(無視している)のではないだろうか……と、感じることが多いのです。
もちろん道路も重要な社会インフラなのですが、そればかりに投資を続けても、根本的な道路交通量が減らない限り渋滞はなくならないので、道路だけに投資を続けるのはあまり好ましいこととは言えません。
抜本的な道路交通量を減らすためには、利便性が高い公共交通ネットワークが必要ですし、宇都宮の場合は少なくとも東西基幹交通に関してはLRT導入が不可欠です(断言します)。
今は上下分離方式が導入できますので、LRTも道路建設と同じく、インフラ部分(軌道・施設・車両)は公的に整備し、運行主体(たぶん、市やバス会社などが共同出資する組織になる)は列車の運行だけ行います。
この方式であれば、インフラ整備費を負担しなくて済むため、かなり安い運賃設定が可能、しかも運転本数を多く設定できます。
アメリカの先進事例都市の一つ・ポートランド(オレゴン州)では、LRTもバスも同じ運行組織が一括して行っていて、
・1時間券……2ドル(1ドル80円換算で160円)
・1日券……5ドル(1ドル80円換算で400円)
で、LRTもバスも乗り放題です。
この価格設定は、インフラ整備だけでなく、運行経費のある程度を公的に賄っているから実現できるものですが、たとえ税金を投入して運行を支えていても、利便性が高い公共交通という質の高い行政サービスを提供することで、都市の魅力が増して人・物・金が集まればトータルでは大きく黒字になるため、ほとんどの市民が市の方針に納得しているわけです。
(それこそ本来行政が行うべき市民サービスなのです)
宇都宮の場合、どうもLRTを導入するかどうかの「入口の感情論」だけで終わっているケースが多いようです。
しかし今きちんと軌道系交通機関を導入し、公共交通網を充実して市街地を集約する方向にシフトしないと、今後さらに市街地拡散が進んでしまう(=市の維持管理費が増大し、さらに効率が悪い都市構造になってしまう)ことが明白である以上、重要なのはLRT導入の是非ではありません。
重要なのは、LRTを含めた市域内の公共交通の利便性を利用者視点でどう高めていけるかということなのです。
公共事業は、短期的には投資を回収しきれるものではありませんから、評価を行う場合は中長期的な視野に立った総合的な評価を行う必要があります。
・走行時間の短縮効果
・走行費用の減少効果
・交通事故の減少効果
といった費用便益分析だけでなく、
・雇用の創出効果
・消費の拡大効果
といった社会的波及効果も勘案する必要があります。
参考までに、2011年11月に行われた福田 富一(とみかず)知事の講演によると、1日の利用者数が片道16,500人/往復33,000人の場合、LRTの維持管理費は約15億円/年に対して、運賃収入は約20億円/年との試算が出ています。
運賃設定については言及がなかったのですが、確か運賃は150円という想定があったので、それに準拠しているのだろうと思います。
運行頻度は、ラッシュ時には4分ごと、日中や夜間でも6分ごとを想定しています。
また、この試算には車内や停留所などの広告収益は含んでいないものと思います。
参考ついでに、以下の数値を記しておきます。
【公共交通機関の建設費】
・つくばエクスプレス(複線・全線高架か地下)は1kmあたり約142億円
・地下鉄(複線)は1km150~300億円
・モノレールやAGT(複線)は1km約100億円
・名古屋のガイドウェイバス(複線)は1km約50億円
・LRT(複線)は地平レベル中心で1kmあたり約15億円、部分的な高架区間を含むと1km約25億円(←宇都宮の場合はこれ)
【道路の建設費】
・4車線道路は地平レベル中心の場合は1kmあたり25億円以上
・橋や高架道路は1kmあたり100~240億円
・「テクノ通り」の整備は1km38億円
・「北道路」は1km100億円
・「大通り」の拡幅は1km90~100億円
ちなみに、「つくばエクスプレス(TX)」は全長58.3kmの全線高架か地下の複線電化路線です。
最高運転速度は130km/h、秋葉原~つくば間を最速45分で結びます。
総建設費は「約8,400億円」(当初見込みより約1,000億円圧縮)で、開業前までは「赤字必至」「どうせ誰も乗らない」等の懐疑論が主流でした。
2005年に開業し、現在開業から約7年経過しています。
1日あたりの利用者数は、次のように推移しています。
・2005年度……157,000人/日
・2006年度……195,300人/日
・2007年度……234,200人/日
・2008年度……257,600人/日
・2009年度……270,300人/日
・2010年度……283,000人/日
・2011年度……290,000人/日
(2011年度は、前年度末に発生した東日本大震災後の混乱が影響し、一時利用客数が伸びなかった時期があるため、統計上は増加ペースが鈍化しています/実際には震災後半年を経ずに元の増加ペースに戻っています)
定時運行性・速達性が極めて高く、沿線の付加価値はうなぎ登りに上昇し、開業による経済波及効果は約26兆円超と言われています。
宇都宮にLRTを導入する場合、建設費はTXの1/22(二十二分の一)程度ですので、導入効果も相応に縮小するとは思いますが、経済波及効果(間接的なものも含む)は数千億円規模以上になるものと考えることができます。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
前回の【課題(2)】運行主体の決定に続き、3つめの課題である「市民への周知継続」について。
【課題(3)】市民への周知継続
海外でLRT導入と鉄道・バスなどとの有機的な連携を実現し、市域内公共交通充実によるまちづくりに成功している諸都市でも、それぞれの国における「先進事例」(つまり「前例がない」)では、住民の理解を得るまでにそれなりに労苦が伴いました。
▲ 「ナントの勅令」が発布されたフランス・ナントのLRT。1958年に路面電車を廃止して以降はバス頼りだったものの限界があり、1981年に地下鉄や連接トロリーバスと比較検討した上でLRT導入を決定。LRTやバスなど市内交通は「ナント都市域交通公社」が一括運行。
上の動画はフランス・ナントのLRTとバスが題材ですが、ここはかつて路面電車が走っていた都市であるために、LRTに対しても「路面電車なんて時代遅れだ」という曲解が根強かっただろうことは想像に難くありません。
そこでナント市は、宇都宮市が行っているのと同様、市民向けにLRTの魅力やどうやって施工するかなどを記載したリーフレットを作成して周知活動を展開しました。
それでもおそらく、市民の少なくない割合が懐疑的であったり、反対したはずです。
しかし今、LRT導入が失敗だったと感じる市民はほとんどいないのではないかと思います。
公共交通の重要性については、各種アンケート結果を見ても明らかなのですが、だいたい8割方の人が「公共交通は重要」だと考えているようで、公的支援拡充についてもおおむね理解が得られていると判断して良い状況ではあります。
しかし、いざ具体的な計画が明らかになると、初期投資額の大きさだけが問題視され、なかなか計画が進まないということが起こりがちです。
漠然とした意識の中では「公共交通は重要」、でも具体的な話になると「多額の税金を注入するのは反対」では、いつになっても話が進みません。
市民の意見は十人十色で、全ての市民が100%満足するような政策など最初から存在しないのです。
それに、さまざまな意見を全て聞いていたのでは、行政が完全にストップしてしまいます。
それこそ「決められない政治」です。
そうなると、富山市の森市長のようにLRT導入を公約した市長がリーダーシップを発揮して導入を推進するしか手がないということになります。
富山の森市長は「私はLRTを導入します。私の政策が気に入らないなら次の市長選で落選させてください」と言い切ってLRTなど公共交通推進を行っています。
今、富山市長の公共交通充実という大方針に反対する市民はほとんどいません。
宇都宮でも同じことが言えます。
鉄道やLRTなど軌道系の公共交通機関が整備されると、沿線の付加価値は格段に向上します。
同じ金額を投じた場合、道路と軌道系交通機関では、もたらすメリットに格段の違いがあるのです。
軌道系交通機関の長所である定時運行性と速達性の高さ、輸送力の大きさ、まちづくりや不動産価値にも直結する将来確実性の高さなど、道路だけでは到底生み出すことができない底力を軌道系交通機関は秘めています。
(だからこそ、各国でLRT導入が進んでいるわけです)
普段当たり前のように利用している4車線道路が、実は1kmあたり25億円以上かかっている。
新しく立体交差ができて便利になったけど、実はそこだけで50億円以上かかっている。
国道バイパスの高架区間が開通して信号待ちが解消されたけど、1kmあたり100億円かかっている。
「テクノ通り」の整備には1km38億円かかった。
「北道路」は1km100億円を要した。
「大通り」の拡幅には1km90~100億円かかる。
それらに投じた税金と比較して、LRT整備が高額といえるかどうか。
運賃収入で整備費を回収できるLRTに対して、道路は一切収入を得ることができないのだから、それこそ「赤字」の垂れ流しではないか……。
コスト面を論拠にLRT導入に懐疑的なご意見をお持ちの方は、道路建設にどれほど「莫大な税金」が投入されているか、その点をあまりに軽視している(無視している)のではないだろうか……と、感じることが多いのです。
もちろん道路も重要な社会インフラなのですが、そればかりに投資を続けても、根本的な道路交通量が減らない限り渋滞はなくならないので、道路だけに投資を続けるのはあまり好ましいこととは言えません。
抜本的な道路交通量を減らすためには、利便性が高い公共交通ネットワークが必要ですし、宇都宮の場合は少なくとも東西基幹交通に関してはLRT導入が不可欠です(断言します)。
今は上下分離方式が導入できますので、LRTも道路建設と同じく、インフラ部分(軌道・施設・車両)は公的に整備し、運行主体(たぶん、市やバス会社などが共同出資する組織になる)は列車の運行だけ行います。
この方式であれば、インフラ整備費を負担しなくて済むため、かなり安い運賃設定が可能、しかも運転本数を多く設定できます。
アメリカの先進事例都市の一つ・ポートランド(オレゴン州)では、LRTもバスも同じ運行組織が一括して行っていて、
・1時間券……2ドル(1ドル80円換算で160円)
・1日券……5ドル(1ドル80円換算で400円)
で、LRTもバスも乗り放題です。
この価格設定は、インフラ整備だけでなく、運行経費のある程度を公的に賄っているから実現できるものですが、たとえ税金を投入して運行を支えていても、利便性が高い公共交通という質の高い行政サービスを提供することで、都市の魅力が増して人・物・金が集まればトータルでは大きく黒字になるため、ほとんどの市民が市の方針に納得しているわけです。
(それこそ本来行政が行うべき市民サービスなのです)
宇都宮の場合、どうもLRTを導入するかどうかの「入口の感情論」だけで終わっているケースが多いようです。
しかし今きちんと軌道系交通機関を導入し、公共交通網を充実して市街地を集約する方向にシフトしないと、今後さらに市街地拡散が進んでしまう(=市の維持管理費が増大し、さらに効率が悪い都市構造になってしまう)ことが明白である以上、重要なのはLRT導入の是非ではありません。
重要なのは、LRTを含めた市域内の公共交通の利便性を利用者視点でどう高めていけるかということなのです。
公共事業は、短期的には投資を回収しきれるものではありませんから、評価を行う場合は中長期的な視野に立った総合的な評価を行う必要があります。
・走行時間の短縮効果
・走行費用の減少効果
・交通事故の減少効果
といった費用便益分析だけでなく、
・雇用の創出効果
・消費の拡大効果
といった社会的波及効果も勘案する必要があります。
参考までに、2011年11月に行われた福田 富一(とみかず)知事の講演によると、1日の利用者数が片道16,500人/往復33,000人の場合、LRTの維持管理費は約15億円/年に対して、運賃収入は約20億円/年との試算が出ています。
運賃設定については言及がなかったのですが、確か運賃は150円という想定があったので、それに準拠しているのだろうと思います。
運行頻度は、ラッシュ時には4分ごと、日中や夜間でも6分ごとを想定しています。
また、この試算には車内や停留所などの広告収益は含んでいないものと思います。
参考ついでに、以下の数値を記しておきます。
【公共交通機関の建設費】
・つくばエクスプレス(複線・全線高架か地下)は1kmあたり約142億円
・地下鉄(複線)は1km150~300億円
・モノレールやAGT(複線)は1km約100億円
・名古屋のガイドウェイバス(複線)は1km約50億円
・LRT(複線)は地平レベル中心で1kmあたり約15億円、部分的な高架区間を含むと1km約25億円(←宇都宮の場合はこれ)
【道路の建設費】
・4車線道路は地平レベル中心の場合は1kmあたり25億円以上
・橋や高架道路は1kmあたり100~240億円
・「テクノ通り」の整備は1km38億円
・「北道路」は1km100億円
・「大通り」の拡幅は1km90~100億円
ちなみに、「つくばエクスプレス(TX)」は全長58.3kmの全線高架か地下の複線電化路線です。
最高運転速度は130km/h、秋葉原~つくば間を最速45分で結びます。
総建設費は「約8,400億円」(当初見込みより約1,000億円圧縮)で、開業前までは「赤字必至」「どうせ誰も乗らない」等の懐疑論が主流でした。
2005年に開業し、現在開業から約7年経過しています。
1日あたりの利用者数は、次のように推移しています。
・2005年度……157,000人/日
・2006年度……195,300人/日
・2007年度……234,200人/日
・2008年度……257,600人/日
・2009年度……270,300人/日
・2010年度……283,000人/日
・2011年度……290,000人/日
(2011年度は、前年度末に発生した東日本大震災後の混乱が影響し、一時利用客数が伸びなかった時期があるため、統計上は増加ペースが鈍化しています/実際には震災後半年を経ずに元の増加ペースに戻っています)
定時運行性・速達性が極めて高く、沿線の付加価値はうなぎ登りに上昇し、開業による経済波及効果は約26兆円超と言われています。
宇都宮にLRTを導入する場合、建設費はTXの1/22(二十二分の一)程度ですので、導入効果も相応に縮小するとは思いますが、経済波及効果(間接的なものも含む)は数千億円規模以上になるものと考えることができます。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】課題(2)運行主体の決定
- 2012/11/25 (Sun)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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先に行われた宇都宮市長選挙は、2期8年を手堅く務めてきた佐藤栄一氏が大差で当選しました。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
LRT導入を公約に掲げた佐藤氏が圧勝したことにより、同氏が掲げた「ネットワーク型コンパクトシティ」を実現するため、その東西方向の軸となるLRT導入計画が大きく前進します。
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
前回の【課題(1)】関東自動車との調整に続き、2つめの課題である「運行主体の決定」について。
【課題(2)】運行主体の決定
LRTを導入する場合、運行主体をどうするかは重要な問題です。
この問題は関東自動車をはじめとするバス事業者との調整にもよりますので、現時点ではまだ未確定要素が大きいものと思います。
インフラ整備(軌道敷設・施設建設・車両購入)は国と県の補助を受けつつ宇都宮市が行いますので、運行主体については、
(1)市とバス事業者、民間企業、市民などが共同出資する運行会社を設立して運行
(2)関東自動車が運行主体として運行
(3)関東自動車が路線バス事業を人員・設備丸ごと新たな運行主体に売却
というのが考えられます。
ただ、インフラ整備(軌道、停留所、関連施設、車両も)を公的資金で賄うとなれば、初期投資額を大幅に圧縮できるから……と判断して、
(4)JR東日本や東武鉄道などの鉄道事業者が運行主体として名乗りを上げる
という可能性も出てきますが……。
▲ 米国・ポートランドのLRT「MAX」。LRT・路面電車・郊外列車・路線バスは「トライメット」が一括運行。中心市街地の幅員が狭い道路では、LRTの上下線を分離することで限られた空間をフル活用し、LRTとバスがうまく共存しています。
関東自動車に限りませんが、地方の交通事業者にとって路線バス事業は「経営の重荷」になっています。
端的に言えば、独立採算制が前提では「赤字」です。
しかも、鉄道と違って専用走行空間を走らないため、定時運行性と速達性が確保できず(渋滞に巻き込まれるし、法定速度以上で走れないうえにバス停での停車時間が加わるため、マイカーの方が速達性が高くなる)、ますます利用者の路線バス離れが加速していきます。
現状でも赤字(独立採算制が前提での「赤字」)で、将来の展望も明るくない……となれば、路線バスからは手を引いて、高い収益性が見込める高速バス事業や観光バス事業に特化する方が良いと考えるのが自然な流れです。
関東自動車も、できれば高速バスや観光バス、企業などとの契約バスに特化して、収益性が高い事業だけで会社のスリム化を図りたいのだと思います。
しかし、スリム化ということになると、バスの運転手さんなどの人員整理が発生してしまいます。
会社としては、できれば人員整理はやりたくない筈で(労働問題に直結しますので)、関東自動車が路線バス事業から「撤退」という選択をしない(できない)大きな理由になっているのではないかと考えられます。
私自身、かつてリストラ解雇や会社倒産で失職した経験があり、雇用を守ることがいかに重要かは骨身に染みて理解しています。
宇都宮のLRT導入がスムーズに進むかどうかは、バス会社従業員の雇用機会の確保(+希望退職者の転職支援)にかかっているといっても良いのかも知れません。
参考までに……。
宇都宮市も市長も、これまで懇切丁寧に市民向けの説明を行っているのですが、東西基幹交通としてLRTを導入するのは、宇都宮が目指す「ネットワーク型コンパクトシティ」実現のための「手段の一つ」に過ぎません。
LRTを1本通すだけではなく(それだけでもかなりの効果があるのですが)、鉄道・LRT・路線バス・コミュニティバス・デマンド交通との有機的な連携を図り(乗り換え・乗り継ぎをしやすくする)、クルマや自転車からの乗り換えも容易にすることになります。
LRT導入に伴い、ある程度の路線バスについては整理・統合や運行区間の短縮が行われることになるでしょうから、その分の人員や車両に余裕が生じるはずです。
余裕が出た人員や車両は、従来は公共交通空白地帯だったエリアへの新規路線用として振り向けることが考えられています。
つまり、バス路線の整理・統合が行われても、バスの運転手さんの仕事はなくなるどころか、むしろ増えることになります。
積極的にお仕事するのが嫌だという人はともかく、引き続き職務に励みたいバス関係の従業員を切り捨てるようなことにはならないわけです。
いずれにしても、今までの日本では考えられなかったような、『プロジェクトX』級の一大変革が動き出します。
既に富山市が行っているような諸政策を、より規模を大きくして実施していくことになるはずです。
続いて、【課題(3)】市民への周知継続についてをご覧ください。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
LRT導入を公約に掲げた佐藤氏が圧勝したことにより、同氏が掲げた「ネットワーク型コンパクトシティ」を実現するため、その東西方向の軸となるLRT導入計画が大きく前進します。
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
前回の【課題(1)】関東自動車との調整に続き、2つめの課題である「運行主体の決定」について。
【課題(2)】運行主体の決定
LRTを導入する場合、運行主体をどうするかは重要な問題です。
この問題は関東自動車をはじめとするバス事業者との調整にもよりますので、現時点ではまだ未確定要素が大きいものと思います。
インフラ整備(軌道敷設・施設建設・車両購入)は国と県の補助を受けつつ宇都宮市が行いますので、運行主体については、
(1)市とバス事業者、民間企業、市民などが共同出資する運行会社を設立して運行
(2)関東自動車が運行主体として運行
(3)関東自動車が路線バス事業を人員・設備丸ごと新たな運行主体に売却
というのが考えられます。
ただ、インフラ整備(軌道、停留所、関連施設、車両も)を公的資金で賄うとなれば、初期投資額を大幅に圧縮できるから……と判断して、
(4)JR東日本や東武鉄道などの鉄道事業者が運行主体として名乗りを上げる
という可能性も出てきますが……。
▲ 米国・ポートランドのLRT「MAX」。LRT・路面電車・郊外列車・路線バスは「トライメット」が一括運行。中心市街地の幅員が狭い道路では、LRTの上下線を分離することで限られた空間をフル活用し、LRTとバスがうまく共存しています。
関東自動車に限りませんが、地方の交通事業者にとって路線バス事業は「経営の重荷」になっています。
端的に言えば、独立採算制が前提では「赤字」です。
しかも、鉄道と違って専用走行空間を走らないため、定時運行性と速達性が確保できず(渋滞に巻き込まれるし、法定速度以上で走れないうえにバス停での停車時間が加わるため、マイカーの方が速達性が高くなる)、ますます利用者の路線バス離れが加速していきます。
現状でも赤字(独立採算制が前提での「赤字」)で、将来の展望も明るくない……となれば、路線バスからは手を引いて、高い収益性が見込める高速バス事業や観光バス事業に特化する方が良いと考えるのが自然な流れです。
関東自動車も、できれば高速バスや観光バス、企業などとの契約バスに特化して、収益性が高い事業だけで会社のスリム化を図りたいのだと思います。
しかし、スリム化ということになると、バスの運転手さんなどの人員整理が発生してしまいます。
会社としては、できれば人員整理はやりたくない筈で(労働問題に直結しますので)、関東自動車が路線バス事業から「撤退」という選択をしない(できない)大きな理由になっているのではないかと考えられます。
私自身、かつてリストラ解雇や会社倒産で失職した経験があり、雇用を守ることがいかに重要かは骨身に染みて理解しています。
宇都宮のLRT導入がスムーズに進むかどうかは、バス会社従業員の雇用機会の確保(+希望退職者の転職支援)にかかっているといっても良いのかも知れません。
参考までに……。
宇都宮市も市長も、これまで懇切丁寧に市民向けの説明を行っているのですが、東西基幹交通としてLRTを導入するのは、宇都宮が目指す「ネットワーク型コンパクトシティ」実現のための「手段の一つ」に過ぎません。
LRTを1本通すだけではなく(それだけでもかなりの効果があるのですが)、鉄道・LRT・路線バス・コミュニティバス・デマンド交通との有機的な連携を図り(乗り換え・乗り継ぎをしやすくする)、クルマや自転車からの乗り換えも容易にすることになります。
LRT導入に伴い、ある程度の路線バスについては整理・統合や運行区間の短縮が行われることになるでしょうから、その分の人員や車両に余裕が生じるはずです。
余裕が出た人員や車両は、従来は公共交通空白地帯だったエリアへの新規路線用として振り向けることが考えられています。
つまり、バス路線の整理・統合が行われても、バスの運転手さんの仕事はなくなるどころか、むしろ増えることになります。
積極的にお仕事するのが嫌だという人はともかく、引き続き職務に励みたいバス関係の従業員を切り捨てるようなことにはならないわけです。
いずれにしても、今までの日本では考えられなかったような、『プロジェクトX』級の一大変革が動き出します。
既に富山市が行っているような諸政策を、より規模を大きくして実施していくことになるはずです。
続いて、【課題(3)】市民への周知継続についてをご覧ください。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】課題(1)関東自動車との調整
- 2012/11/25 (Sun)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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先に行われた宇都宮市長選挙は、2期8年を手堅く務めてきた佐藤栄一氏が当選しました。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
前回(2008年)の選挙は、LRT反対・慎重な候補が3人対抗馬として出馬し、佐藤氏が約8万票、対抗3候補が合計で約8万票、佐藤氏の得票が約500票ほど上回りました。
今回(2012年)の選挙は、LRT導入と公共交通ネットワーク拡充を主張する佐藤氏が10万票以上(前回比:+2万票)、「脱LRT宣言」を主張した新人候補は約4万票(前回とは候補者が異なりますが、前回比:-4万票)でした。
ここまでLRT導入が明確な争点となった市長選で、投票率が下がったにも関わらず佐藤氏は2万票も上積みして当選しました。
これは極めて重要な意味を持ちます。
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
▲ ドイツ・カッセルのトラム。カッセルはグリム童話で有名なグリム兄弟が長く暮らしていた都市で、『水曜どうでしょう』ファンにもおなじみの「メルヘン街道」の中心都市。市内交通は「カッセル交通」が一括運行。
【課題(1)】関東自動車との調整
関東自動車との調整は、今春同社が公共交通系の投資ファンド「みちのりホールディングス」の傘下に入り、経営陣が変わったことにより状況が変化。
現在のトップは、「市が考えるネットワーク型コンパクトシティの考え方は理解できた」として、「県や市が考える公共交通ネットワーク構築に向けて、ブレーンになりたい」とまで語っています。
以前は「何が何でもLRT反対」というほどに態度を硬化し、一切交渉にも応じない姿勢であったわけですから、これは大きな前進です。
「みちのりホールディングス(みちのりHD)」は、現在、
「茨城交通」(茨城県)
「関東自動車」(栃木県)
「福島交通」(福島県)
「岩手県北バス」(岩手県)
を傘下に収めています。
鉄道・軌道の運行経験が皆無の「関東自動車」が「みちのりHD」傘下に入ったことのメリットの一つは、グループ企業となった「茨城交通」(かつては鉄道も運行/現在はひたちなか市と共同出資した「ひたちなか海浜鉄道」の株主)と「福島交通」(現在も鉄道を運行)は鉄道運行の経験があるということです。
具体的にいえば、宇都宮にLRTを導入し、「関東自動車」が運行主体に名を連ねる場合、運転士の訓練や鉄道・軌道の運行ノウハウ習得をグループ会社に頼ることができるということです。
宇都宮でスムーズにLRT導入が実現できれば、「みちのりHD」にとってもビッグチャンスとなります。
なぜなら、「茨城交通」の本丸でもある水戸でもLRT構想があり、宇都宮での導入スキームを水戸に、さらに言えば全国各地に適用できるからです。
自治体とバス事業者が協力して、公共交通ネットワークを構築することで、バス事業者にもメリットがあることが分かれば、一気に流れが変わっていくものと思います。
続いて、【課題(2)】運行主体の決定についてをご覧ください。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
前回(2008年)の選挙は、LRT反対・慎重な候補が3人対抗馬として出馬し、佐藤氏が約8万票、対抗3候補が合計で約8万票、佐藤氏の得票が約500票ほど上回りました。
今回(2012年)の選挙は、LRT導入と公共交通ネットワーク拡充を主張する佐藤氏が10万票以上(前回比:+2万票)、「脱LRT宣言」を主張した新人候補は約4万票(前回とは候補者が異なりますが、前回比:-4万票)でした。
ここまでLRT導入が明確な争点となった市長選で、投票率が下がったにも関わらず佐藤氏は2万票も上積みして当選しました。
これは極めて重要な意味を持ちます。
今後の課題としては、
(1)市内最大のバス事業者「関東自動車」との調整
(2)LRT運行主体の決定
(3)市民への周知継続
が挙げられます。
▲ ドイツ・カッセルのトラム。カッセルはグリム童話で有名なグリム兄弟が長く暮らしていた都市で、『水曜どうでしょう』ファンにもおなじみの「メルヘン街道」の中心都市。市内交通は「カッセル交通」が一括運行。
【課題(1)】関東自動車との調整
関東自動車との調整は、今春同社が公共交通系の投資ファンド「みちのりホールディングス」の傘下に入り、経営陣が変わったことにより状況が変化。
現在のトップは、「市が考えるネットワーク型コンパクトシティの考え方は理解できた」として、「県や市が考える公共交通ネットワーク構築に向けて、ブレーンになりたい」とまで語っています。
以前は「何が何でもLRT反対」というほどに態度を硬化し、一切交渉にも応じない姿勢であったわけですから、これは大きな前進です。
「みちのりホールディングス(みちのりHD)」は、現在、
「茨城交通」(茨城県)
「関東自動車」(栃木県)
「福島交通」(福島県)
「岩手県北バス」(岩手県)
を傘下に収めています。
鉄道・軌道の運行経験が皆無の「関東自動車」が「みちのりHD」傘下に入ったことのメリットの一つは、グループ企業となった「茨城交通」(かつては鉄道も運行/現在はひたちなか市と共同出資した「ひたちなか海浜鉄道」の株主)と「福島交通」(現在も鉄道を運行)は鉄道運行の経験があるということです。
具体的にいえば、宇都宮にLRTを導入し、「関東自動車」が運行主体に名を連ねる場合、運転士の訓練や鉄道・軌道の運行ノウハウ習得をグループ会社に頼ることができるということです。
宇都宮でスムーズにLRT導入が実現できれば、「みちのりHD」にとってもビッグチャンスとなります。
なぜなら、「茨城交通」の本丸でもある水戸でもLRT構想があり、宇都宮での導入スキームを水戸に、さらに言えば全国各地に適用できるからです。
自治体とバス事業者が協力して、公共交通ネットワークを構築することで、バス事業者にもメリットがあることが分かれば、一気に流れが変わっていくものと思います。
続いて、【課題(2)】運行主体の決定についてをご覧ください。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】佐藤市政3期目に、LRT導入への課題
- 2012/11/25 (Sun)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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宇都宮市長選挙が終わり、2期8年を手堅く務めてきた佐藤栄一氏が当選しました。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
今回佐藤氏は明確に「LRT導入」を公約に掲げての当選で、しかも投票数は(投票率が低下したにもかかわらず)
・佐藤氏……前回比で2万票増加して、10万票超
・対立候補…前回比で4万票減少して、約4万票
と、大差をつけての圧勝。
LRT導入を巡る不毛な感情論や、賛否そのものを問うような「入口の議論」レベルは、これでもうクリアしたと考えてよいでしょう。
(対立候補がLRT反対、佐藤氏がLRT導入を掲げての市長選でしたから、事実上のLRT導入を巡る住民投票でもあったわけです)
今後は具体的な導入方法&スケジュールを、スピード感を持って進めていく段階に入りました。
▲ パリでは郊外の鉄道空白地域を埋めるように複数のLRTが開業し、沿線の再開発が加速。欧米諸国ではLRTを道路や橋と同様の社会インフラとして整備。運行経費の大半を公的に賄って低廉運賃&高頻度運転で利便性を高めることで、利用者増&沿線への投資拡大を実現。損して得する手法です。
LRT導入に向けて最大の課題は、市内最大(県下最大)のバス事業者「関東自動車」との調整と、LRTの運行主体を決めることです。
そこで、これらの問題について、もうちょっと踏み込んで考えてみます。
【LRT導入に向けた課題について】
詳しくは、それぞれの記事をご覧ください(下記それぞれの項目をクリックして閲覧してください)。
・【課題(1)】関東自動車との調整
・【課題(2)】運行主体の決定
・【課題(3)】市民への周知継続
■明確な論拠となる数字を見て判断
まちづくりのツールともなっている公共交通機関。
適切な時期に、適切な規模の投資を行うことが、都市の将来を大きく左右します。
そのための判断材料が具体的な数値です。
・宇都宮市の初期投資額は約380億円だが、実質的には約95億円
(約380億円という数字には、JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含んでいる)
・清原工業団地の売却益が約100億円あり、清原地区の同意を得ればLRT整備に充当可能
・設備や車両などのインフラ導入費と、軌道などの維持管理費は公的に賄う「上下分離方式」を導入
・いわゆる「採算ライン」は、片道16,500人/日
これらの数値が判断基準となるものです。
さらにいえば、
・定時運行性、速達性、将来確実性、シンボル性が高い軌道系公共交通機関を整備すると投資誘因効果が大きく、税収増、大きな経済波及効果をもたらす
・宇都宮市の人口は約51万人、都市圏人口は約100万人で、大きなポテンシャルがある
・この規模の都市は、路線バス主体の交通網だけでは支えきれない
ということです。
■一公共交通機関としてだけでなく、まちづくりのツールでもある
「地方はクルマがないと生活できない」から「クルマがあればいい」という旧来の「常識」を打破できるかどうか、これは今後の日本の地方にとって大きな命題となります。
地方、特に地方の中核都市(県庁所在地クラス)でも、一定以上に公共交通ネットワークが充実していて、なおかつ利便性が高く、クルマがなくても移動に困らない状況を創出できるかどうか、とても重要な局面に来ているといえます。
大袈裟にいえば、今後も東京など大都市への一極集中が進んで地方は衰退する一方なのか、それとも地方が活力を取り戻して活性化に向かうのか、その分かれ目になるためです。
私は地元だけでなく、飯能、入間、所沢、土浦、さいたま、小山などで生活した経験があります。
経済的な問題もありますが、長年クルマは保有しておらず(現在は軽自動車を保有)、部屋探しをする条件は「駅に近いこと(遠くても徒歩20分圏内)」で、「クルマがなくてもとりあえず日常生活に困らないこと」の重要性を常々感じながら過ごしてきました。
それだけに、現状では市域内公共交通ネットワークがあまりに弱く、せっかく有している大きなポテンシャルをほとんど活かせていない宇都宮の交通問題とまちづくりの問題を見聞きするにつけ、「もったいない!!」と感じています。
北関東で言えば、宇都宮や水戸、つくば&土浦、高崎&前橋、小山のような中核都市であれば、東京並みとは言わないまでも、中心市街地は「待たずに乗れる」だけの運行頻度があり、十分な輸送力がある公共交通を整備し、それを最大限に活用できるようなまちづくりをセットで推進することで、大いに「化ける」可能性があるのではないかと考えます。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
・2012とちぎ宇都宮市長選 LRT実現 待ったなし 佐藤氏3選 「高齢化備え」奏功(東京新聞 2012年11月19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20121119/CK2012111902000154.html
今回佐藤氏は明確に「LRT導入」を公約に掲げての当選で、しかも投票数は(投票率が低下したにもかかわらず)
・佐藤氏……前回比で2万票増加して、10万票超
・対立候補…前回比で4万票減少して、約4万票
と、大差をつけての圧勝。
LRT導入を巡る不毛な感情論や、賛否そのものを問うような「入口の議論」レベルは、これでもうクリアしたと考えてよいでしょう。
(対立候補がLRT反対、佐藤氏がLRT導入を掲げての市長選でしたから、事実上のLRT導入を巡る住民投票でもあったわけです)
今後は具体的な導入方法&スケジュールを、スピード感を持って進めていく段階に入りました。
▲ パリでは郊外の鉄道空白地域を埋めるように複数のLRTが開業し、沿線の再開発が加速。欧米諸国ではLRTを道路や橋と同様の社会インフラとして整備。運行経費の大半を公的に賄って低廉運賃&高頻度運転で利便性を高めることで、利用者増&沿線への投資拡大を実現。損して得する手法です。
LRT導入に向けて最大の課題は、市内最大(県下最大)のバス事業者「関東自動車」との調整と、LRTの運行主体を決めることです。
そこで、これらの問題について、もうちょっと踏み込んで考えてみます。
【LRT導入に向けた課題について】
詳しくは、それぞれの記事をご覧ください(下記それぞれの項目をクリックして閲覧してください)。
・【課題(1)】関東自動車との調整
・【課題(2)】運行主体の決定
・【課題(3)】市民への周知継続
■明確な論拠となる数字を見て判断
まちづくりのツールともなっている公共交通機関。
適切な時期に、適切な規模の投資を行うことが、都市の将来を大きく左右します。
そのための判断材料が具体的な数値です。
・宇都宮市の初期投資額は約380億円だが、実質的には約95億円
(約380億円という数字には、JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含んでいる)
・清原工業団地の売却益が約100億円あり、清原地区の同意を得ればLRT整備に充当可能
・設備や車両などのインフラ導入費と、軌道などの維持管理費は公的に賄う「上下分離方式」を導入
・いわゆる「採算ライン」は、片道16,500人/日
これらの数値が判断基準となるものです。
さらにいえば、
・定時運行性、速達性、将来確実性、シンボル性が高い軌道系公共交通機関を整備すると投資誘因効果が大きく、税収増、大きな経済波及効果をもたらす
・宇都宮市の人口は約51万人、都市圏人口は約100万人で、大きなポテンシャルがある
・この規模の都市は、路線バス主体の交通網だけでは支えきれない
ということです。
■一公共交通機関としてだけでなく、まちづくりのツールでもある
「地方はクルマがないと生活できない」から「クルマがあればいい」という旧来の「常識」を打破できるかどうか、これは今後の日本の地方にとって大きな命題となります。
地方、特に地方の中核都市(県庁所在地クラス)でも、一定以上に公共交通ネットワークが充実していて、なおかつ利便性が高く、クルマがなくても移動に困らない状況を創出できるかどうか、とても重要な局面に来ているといえます。
大袈裟にいえば、今後も東京など大都市への一極集中が進んで地方は衰退する一方なのか、それとも地方が活力を取り戻して活性化に向かうのか、その分かれ目になるためです。
私は地元だけでなく、飯能、入間、所沢、土浦、さいたま、小山などで生活した経験があります。
経済的な問題もありますが、長年クルマは保有しておらず(現在は軽自動車を保有)、部屋探しをする条件は「駅に近いこと(遠くても徒歩20分圏内)」で、「クルマがなくてもとりあえず日常生活に困らないこと」の重要性を常々感じながら過ごしてきました。
それだけに、現状では市域内公共交通ネットワークがあまりに弱く、せっかく有している大きなポテンシャルをほとんど活かせていない宇都宮の交通問題とまちづくりの問題を見聞きするにつけ、「もったいない!!」と感じています。
北関東で言えば、宇都宮や水戸、つくば&土浦、高崎&前橋、小山のような中核都市であれば、東京並みとは言わないまでも、中心市街地は「待たずに乗れる」だけの運行頻度があり、十分な輸送力がある公共交通を整備し、それを最大限に活用できるようなまちづくりをセットで推進することで、大いに「化ける」可能性があるのではないかと考えます。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】建設費などの具体的なデータについて
- 2012/11/17 (Sat)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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宇都宮市のLRT計画(正しくは、東西基幹交通としてLRTを導入しつつ路線バス再編・拡充などを行うネットワーク型コンパクトシティを目指す交通政策)は、過度なクルマ依存から脱却して、クルマがあってもなくても、通勤通学や生活にある程度困らずに済む都市にしていこう、というものです。
宇都宮市が公表している「初期投資は約380億円」。
この額面上の数字だけが一人歩きしてしまい、不要な誤解を生じかねない状況になっています。
そこで、主に費用面について具体的に論拠となり得る数値を示し、LRTについて検討する際の材料にしていただけたら……ということで簡単に列挙します。
なお、初期投資の総額は約380億円ですが、その内1/2は国が補助し、1/4は栃木県が負担する意向なので、宇都宮市の実質的な残りの1/4、つまり「約95億円」である点を改めて記しておきます。
▲ 米国ポートランド市のLRT。早送りの前面展望映像で、道路の利用方法、バスとの連携など、一通り視覚的に把握できます。
■清原工業団地の売却益が約100億円残っている
2011年9月1日(木)に開催された「第1回 都市交通システム講演会」で宇都宮市の佐藤 栄一(えいいち)市長が財源についての重要な発言を行っています。
・宇都宮市の税収は約870億円
・その内、清原地区だけで年間115億円の法人税収入がある
・市の財政を支えている工業地帯に通勤するためのクルマが溢れて慢性的な渋滞を引き起こしている
・清原工業団地を売り出したときの売却益が約100億円残っている
・清原地区の同意を得る必要があるが、この資金をLRT整備に使うことが考えられる
(もし、清原地区の管理する売却益全額をLRTに活用すると、宇都宮市の実質的な初期費用負担はゼロになる可能性が高い)
・清原地区の皆さんは、以前から市の中心部への交通手段はLRTが最適だと考えている
・LRTに投資しないデメリットとして、最悪進出企業の撤退→税収の減少が考えられる
・税収が減少すれば、市民サービス水準を落とさざるを得なくなる
つまり、「清原地区は宇都宮市の生命線」であり、「自分の所には直接関係ないから」ではなくて、実は間接的に他の地区の生活にも関わってくる問題だ、ということです。
清原地区にお住まいの皆さんはLRT開通を一日千秋の思いで待っていますし、進出している企業にも極めてメリットが大きな話になります。
▲ 宇都宮の公共交通ネットワークも、おそらくポートランドのような姿を目指していくものと思います。
■「テクノ通り」は1km38億円、複線LRTは1km約25億円(補助受けると約6.25億円)
続いて、2011年11月18日(金)に開催された「第2回 都市交通システム講演会」で栃木県の福田 富一(とみかず)知事が「県の東西基幹交通にはLRTが最適」との講演を行った際の数字です。
(注:知事が「県の」東西基幹交通と発言しているのは、「新県土60分構想」の一つとして、既存鉄道も利用しながら茂木~宇都宮LRT~日光を結ぶ公共交通軸を形成しようと検討しているためでしょうね)
【LRTの建設費について】
・モノレールやAGT(「ゆりかもめ」のようなゴムタイヤ式案内軌条交通システム)は1km整備するのに100億円
・名古屋のガイドウェイバスは1km整備するのに50億円かかる
・LRTは「1kmあたり約25億円」(注:国や県からの補助が出る前の段階/補助が出た後の金額は「1kmあたり約6.25億円」)
・道路整備と比較すると、「テクノ通り」の整備には1km38億円、「北道路」に至っては1km100億円を要していて、「大通り」の拡幅には1km90~100億円
・複線のLRT整備費は4車線道路と同程度の金額で済む(補助が出た後の金額は4車線道路の「1/4程度」)
【維持管理費と運賃収入、採算ライン】
・宇都宮LRTの維持管理費が年間15億円かかるとの試算
・運賃収入は年間20億円を見込む
・そのための「採算ライン」は33,000人/日(注:往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日でペイする)
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出したとのこと)
・これらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもの
(JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含めた数字)
・もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になる
▲ ドイツ・ノルトハウゼンでは、低床型の連接トラムに発電用ディーゼルエンジンを搭載して、非電化の「ハルツ狭軌鉄道」(軌間1000mm)へ直通するトラムトレインを運行しています。海外では実に多彩で柔軟な導入例が多いです。
■明確な論拠となる数字を見て判断
まちづくりのツールともなっている公共交通機関。
適切な時期に、適切な規模の投資を行うことが、都市の将来を大きく左右します。
そのための判断材料が、今回のような具体的な数値です。
上記の話をまとめますと、
・宇都宮市の初期投資額は約380億円だが、実質的には約95億円
(約380億円という数字には、JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含んでいる)
・清原工業団地の売却益が約100億円あり、清原地区の同意を得ればLRT整備に充当可能
・設備や車両などのインフラ導入費と、軌道などの維持管理費は公的に賄う「上下分離方式」を導入
・いわゆる「採算ライン」は、片道16,500人/日
これらの数値が判断基準となるものです。
さらにいえば、
・定時運行性、速達性、将来確実性、シンボル性が高い軌道系公共交通機関を整備すると投資誘因効果が大きく、税収増、大きな経済波及効果をもたらす
・宇都宮市の人口は約51万人、都市圏人口は約100万人で、大きなポテンシャルがある
・この規模の都市は、路線バス主体の交通網だけでは支えきれない
ということです。
▲ ドイツ・マンハイムでは、一部区間でバスがトラムの専用軌道に乗り入れることができるよう工夫しています。乗り入れ区間では、トラムと路線バスが停留所を共用しています。
■一公共交通機関としてだけでなく、まちづくりのツールでもある
「地方はクルマがないと生活できない」から「クルマがあればいい」という旧来の「常識」を打破できるかどうか、これは今後の日本の地方にとって大きな命題となります。
地方、特に地方の中核都市(県庁所在地クラス)でも、一定以上に公共交通ネットワークが充実していて、なおかつ利便性が高く、クルマがなくても移動に困らない状況を創出できるかどうか、とても重要な局面に来ているといえます。
大袈裟にいえば、今後も東京など大都市への一極集中が進んで地方は衰退する一方なのか、それとも地方が活力を取り戻して活性化に向かうのか、その分かれ目になるためです。
私は地元だけでなく、飯能、入間、所沢、土浦、さいたま、小山などで生活した経験があります。
経済的な問題もありますが、長年クルマは保有しておらず(現在は軽自動車を保有)、部屋探しをする条件は「駅に近いこと(遠くても徒歩20分圏内)」で、「クルマがなくてもとりあえず日常生活に困らないこと」の重要性を常々感じながら過ごしてきました。
それだけに、現状では市域内公共交通ネットワークがあまりに弱く、せっかく有している大きなポテンシャルをほとんど活かせていない宇都宮の交通問題とまちづくりの問題を見聞きするにつけ、「もったいない!!」と感じています。
北関東で言えば、宇都宮や水戸、つくば&土浦、高崎&前橋、小山のような中核都市であれば、東京並みとは言わないまでも、中心市街地は「待たずに乗れる」だけの運行頻度があり、十分な輸送力がある公共交通を整備し、それを最大限に活用できるようなまちづくりをセットで推進することで、大いに「化ける」可能性があるのではないかと考えます。
なお、本記事はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
宇都宮市が公表している「初期投資は約380億円」。
この額面上の数字だけが一人歩きしてしまい、不要な誤解を生じかねない状況になっています。
そこで、主に費用面について具体的に論拠となり得る数値を示し、LRTについて検討する際の材料にしていただけたら……ということで簡単に列挙します。
なお、初期投資の総額は約380億円ですが、その内1/2は国が補助し、1/4は栃木県が負担する意向なので、宇都宮市の実質的な残りの1/4、つまり「約95億円」である点を改めて記しておきます。
▲ 米国ポートランド市のLRT。早送りの前面展望映像で、道路の利用方法、バスとの連携など、一通り視覚的に把握できます。
■清原工業団地の売却益が約100億円残っている
2011年9月1日(木)に開催された「第1回 都市交通システム講演会」で宇都宮市の佐藤 栄一(えいいち)市長が財源についての重要な発言を行っています。
・宇都宮市の税収は約870億円
・その内、清原地区だけで年間115億円の法人税収入がある
・市の財政を支えている工業地帯に通勤するためのクルマが溢れて慢性的な渋滞を引き起こしている
・清原工業団地を売り出したときの売却益が約100億円残っている
・清原地区の同意を得る必要があるが、この資金をLRT整備に使うことが考えられる
(もし、清原地区の管理する売却益全額をLRTに活用すると、宇都宮市の実質的な初期費用負担はゼロになる可能性が高い)
・清原地区の皆さんは、以前から市の中心部への交通手段はLRTが最適だと考えている
・LRTに投資しないデメリットとして、最悪進出企業の撤退→税収の減少が考えられる
・税収が減少すれば、市民サービス水準を落とさざるを得なくなる
つまり、「清原地区は宇都宮市の生命線」であり、「自分の所には直接関係ないから」ではなくて、実は間接的に他の地区の生活にも関わってくる問題だ、ということです。
清原地区にお住まいの皆さんはLRT開通を一日千秋の思いで待っていますし、進出している企業にも極めてメリットが大きな話になります。
▲ 宇都宮の公共交通ネットワークも、おそらくポートランドのような姿を目指していくものと思います。
■「テクノ通り」は1km38億円、複線LRTは1km約25億円(補助受けると約6.25億円)
続いて、2011年11月18日(金)に開催された「第2回 都市交通システム講演会」で栃木県の福田 富一(とみかず)知事が「県の東西基幹交通にはLRTが最適」との講演を行った際の数字です。
(注:知事が「県の」東西基幹交通と発言しているのは、「新県土60分構想」の一つとして、既存鉄道も利用しながら茂木~宇都宮LRT~日光を結ぶ公共交通軸を形成しようと検討しているためでしょうね)
【LRTの建設費について】
・モノレールやAGT(「ゆりかもめ」のようなゴムタイヤ式案内軌条交通システム)は1km整備するのに100億円
・名古屋のガイドウェイバスは1km整備するのに50億円かかる
・LRTは「1kmあたり約25億円」(注:国や県からの補助が出る前の段階/補助が出た後の金額は「1kmあたり約6.25億円」)
・道路整備と比較すると、「テクノ通り」の整備には1km38億円、「北道路」に至っては1km100億円を要していて、「大通り」の拡幅には1km90~100億円
・複線のLRT整備費は4車線道路と同程度の金額で済む(補助が出た後の金額は4車線道路の「1/4程度」)
【維持管理費と運賃収入、採算ライン】
・宇都宮LRTの維持管理費が年間15億円かかるとの試算
・運賃収入は年間20億円を見込む
・そのための「採算ライン」は33,000人/日(注:往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日でペイする)
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出したとのこと)
・これらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもの
(JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含めた数字)
・もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になる
▲ ドイツ・ノルトハウゼンでは、低床型の連接トラムに発電用ディーゼルエンジンを搭載して、非電化の「ハルツ狭軌鉄道」(軌間1000mm)へ直通するトラムトレインを運行しています。海外では実に多彩で柔軟な導入例が多いです。
■明確な論拠となる数字を見て判断
まちづくりのツールともなっている公共交通機関。
適切な時期に、適切な規模の投資を行うことが、都市の将来を大きく左右します。
そのための判断材料が、今回のような具体的な数値です。
上記の話をまとめますと、
・宇都宮市の初期投資額は約380億円だが、実質的には約95億円
(約380億円という数字には、JR宇都宮駅の2F部分を通り抜ける費用約40億円も含んでいる)
・清原工業団地の売却益が約100億円あり、清原地区の同意を得ればLRT整備に充当可能
・設備や車両などのインフラ導入費と、軌道などの維持管理費は公的に賄う「上下分離方式」を導入
・いわゆる「採算ライン」は、片道16,500人/日
これらの数値が判断基準となるものです。
さらにいえば、
・定時運行性、速達性、将来確実性、シンボル性が高い軌道系公共交通機関を整備すると投資誘因効果が大きく、税収増、大きな経済波及効果をもたらす
・宇都宮市の人口は約51万人、都市圏人口は約100万人で、大きなポテンシャルがある
・この規模の都市は、路線バス主体の交通網だけでは支えきれない
ということです。
▲ ドイツ・マンハイムでは、一部区間でバスがトラムの専用軌道に乗り入れることができるよう工夫しています。乗り入れ区間では、トラムと路線バスが停留所を共用しています。
■一公共交通機関としてだけでなく、まちづくりのツールでもある
「地方はクルマがないと生活できない」から「クルマがあればいい」という旧来の「常識」を打破できるかどうか、これは今後の日本の地方にとって大きな命題となります。
地方、特に地方の中核都市(県庁所在地クラス)でも、一定以上に公共交通ネットワークが充実していて、なおかつ利便性が高く、クルマがなくても移動に困らない状況を創出できるかどうか、とても重要な局面に来ているといえます。
大袈裟にいえば、今後も東京など大都市への一極集中が進んで地方は衰退する一方なのか、それとも地方が活力を取り戻して活性化に向かうのか、その分かれ目になるためです。
私は地元だけでなく、飯能、入間、所沢、土浦、さいたま、小山などで生活した経験があります。
経済的な問題もありますが、長年クルマは保有しておらず(現在は軽自動車を保有)、部屋探しをする条件は「駅に近いこと(遠くても徒歩20分圏内)」で、「クルマがなくてもとりあえず日常生活に困らないこと」の重要性を常々感じながら過ごしてきました。
それだけに、現状では市域内公共交通ネットワークがあまりに弱く、せっかく有している大きなポテンシャルをほとんど活かせていない宇都宮の交通問題とまちづくりの問題を見聞きするにつけ、「もったいない!!」と感じています。
北関東で言えば、宇都宮や水戸、つくば&土浦、高崎&前橋、小山のような中核都市であれば、東京並みとは言わないまでも、中心市街地は「待たずに乗れる」だけの運行頻度があり、十分な輸送力がある公共交通を整備し、それを最大限に活用できるようなまちづくりをセットで推進することで、大いに「化ける」可能性があるのではないかと考えます。
なお、本記事はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
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【特集:宇都宮LRT】朝日新聞の連載記事「宮っ子の選択」前編について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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「下野新聞」の連載記事「LRTを問う」に続き、「朝日新聞」栃木版でも、宇都宮市長関連記事「宮っ子の選択・宇都宮市長選」の掲載がスタートしました。
2012年11月6日(火)には、LRT導入を巡る諸問題を取り上げた「宮っ子の選択・宇都宮市長選/前編」(←記事にジャンプします)が掲載されました。
【前編の概要】2012年11月6日(火)掲載
■都市間競争に生き残れるのか
2012年8月25日(金)に行われた宇都宮市の「交通まちづくり市民フォーラム」基調講演で、京都大学大学院の藤井 聡(さとし)教授は、「LRTへの投資により企業立地や人口集中で税収が増える。渋滞も減り、車を使う人にも便利になり、街に利益をもたらす」と説明した。
宇都宮市が想定する将来の公共交通の姿は、既存鉄道・LRT・路線バスなどの「幹線」に、きめ細かな「地域内交通」が結節する状況。
先日、市北部にある国本地域でも「くにもとふれあい号」が運行を開始。地域内交通は既に市内7地区で導入済み、2年後には14地区に増える予定だ。
LRT導入には市民の合意が必要で、宇都宮市は昨年から市民説明会を度々開いてきた。
試算で約380億円の大規模事業であることや、導入後も「採算が取れず」に公的支援が必要になるのでは……といった反対意見もある。
LRTをJR宇都宮駅西口の大通りに導入すると競合関係になる可能性があるのが関東自動車(従来はLRT導入に反対していた)。
その関東自動車の会長で、今春同社を傘下に収めた「みちのりHD」の松本順社長は、市が公共交通の総合的なまちづくりを進めることに賛意を示し、「宇都宮市と栃木県の公共交通ネットワーク構築のブレーンになりたい」と語っている。
海外LRT事情に詳しい宇都宮大大学院の森本 章倫(あきのり)教授は、英国でバス会社と競合したまま開業したLRTが破綻した例(後述)を挙げて、「公共交通は道路や橋と同じ社会資本。バス事業者と協議し市全体の公共交通充実を考えるべき」と話す。
【前編の記事内容について思うこと】
朝日新聞の記事は残念ながら説明不足。
宇大の森本教授が挙げた「英国でのLRT破綻例」とは、「シェフィールド・スーパートラム」のこと。
(注:朝日新聞の記事だけを見ると、破綻したケースがたくさんあるようにも受け取れるけど、実際に「LRTを導入したけどうまくいかなかった」のは、シェフィールドだけといって良い)
▲ 英国シェフィールドの「スーパートラム」。1994年に開業したものの、民間主導で行政のまちづくりとリンクしていなかったこと、既存バス会社との調整を行わず競合関係になってしまったこと、地形的不適合が多かったことなど、一時経営破綻にまで陥ってしまいました。
「シェフィールド・スーパートラム」は1994年に開業しましたが、主に3つの要因で経営破綻し、競合するバス会社が買収し、運行を継続することになりました。
■要因(1)……バスの規制緩和
英国では当時、バス事業の規制緩和が行われていて、シェフィールドでもバス会社は規制緩和によって路線網の拡充を行いましたが、LRTとの競合関係の解消は行いませんでした。
■要因(2)……地形的な不適合
シェフィールドは起伏が激しく、どちらかというと鉄軌道には不向きな地形です。
そこで、運行会社は100パーミル(1,000m進むと100m上る)の登坂能力を有する車両を用意したのですが、さすがに粘着式(鉄車輪だけで勾配を上り下りする方式)ではこれ以上の急勾配の上り下りは特別な装置(ラック式レール)を用いないと無理です。
(注:日本の粘着式鉄道の最急勾配は箱根登山鉄道の80パーミルで、かつての碓氷峠は66.7パーミルでした)
そこで、急勾配を避けて迂回コースを多用したのですが、結果的に運行距離が伸びてしまい、鉄軌道より勾配に強いので最短距離を運行でき、所要時間も短い路線バスに乗客が流れてしまったのです。
■要因(3)……行政と民間の調整不足
LRT導入に成功した都市では、行政が民間ときちんと協議を行ったうえで、まちづくりや交通体系の見直しが行われました。
しかし、シェフィールドのLRT導入は民間主導で推し進められ、まちづくりとうまくリンクしていなかったので、上記(1)(2)と相まって経営破綻に陥ってしまったのでした。
このことは「シェフィールドの躓き(つまづき)」と呼ばれ、英国におけるLRT導入は、2004年までの約10年間行われなくなるという「冬の時代」に突入してしまいました。
しかし、「シェフィールド・スーパートラム」の失敗は、数多くの教訓をもたらしました。
その後、英国ではシェフィールドでの教訓を踏まえて、まちづくりとリンクしたLRT計画が練られるようになり、バーミンガム、ロンドン郊外のクロイドン、ノッティンガムと、次々にLRTが開業しています。
なお、シェフィールド・スーパートラムは失敗例と言いつつも、年間1,300万人以上(約3.6万人/日)が利用しています。
また、今から15年ほど前の導入当時は、日本と同様、公共交通に対する公的支援が不十分だった点も考慮する必要はあるでしょうね。
▲ ロンドン近郊・クロイドンのLRT。「シェフィールドの躓き(つまづき)」で10年ほど英国でのLRT導入機運は萎んでいたものの、行政も参画してまちづくりの中で「ちゃんとした検討」を行った上で、まちづくりの一環として導入するようになったため、現在は各地で導入が相次いでいます。
シェフィールドでの事例は、
・行政がLRT化断念を決定した岐阜の路面電車の廃止事例
・実験的要素が強く問題山積のフランス・ナンシーのゴムタイヤトラム
と並び、LRT導入を成功させるために貴重な「戦訓」を多数示しています。
▲ フランス・ナンシーのゴムタイヤトラム。ナンシーが採用したのは「TVR」方式で、車体中央の案内車輪が走行路中央に敷かれた案内軌条を捉えて走ります。トロリーバスのインフラを流用できる利点はあるものの、技術的には未成熟で、ナンシーはLRTへの転換が決まっています。
これらの教訓から、宇都宮でLRTを導入してネットワーク型コンパクトシティを実現するには、
(1)市がまちづくりと交通体系について十分検討し、
(2)バス事業者と競合関係にならないよう調整し、
(3)適切なルート設定を行う必要がある、
……ということがいえます。
(宇都宮の場合、シェフィールドのような高低差がある地形ではないので、地表を走る軌道系交通機関にとって障害になる「勾配の問題」は考慮しなくて良いです)
なお、本記事はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
2012年11月6日(火)には、LRT導入を巡る諸問題を取り上げた「宮っ子の選択・宇都宮市長選/前編」(←記事にジャンプします)が掲載されました。
【前編の概要】2012年11月6日(火)掲載
■都市間競争に生き残れるのか
2012年8月25日(金)に行われた宇都宮市の「交通まちづくり市民フォーラム」基調講演で、京都大学大学院の藤井 聡(さとし)教授は、「LRTへの投資により企業立地や人口集中で税収が増える。渋滞も減り、車を使う人にも便利になり、街に利益をもたらす」と説明した。
宇都宮市が想定する将来の公共交通の姿は、既存鉄道・LRT・路線バスなどの「幹線」に、きめ細かな「地域内交通」が結節する状況。
先日、市北部にある国本地域でも「くにもとふれあい号」が運行を開始。地域内交通は既に市内7地区で導入済み、2年後には14地区に増える予定だ。
LRT導入には市民の合意が必要で、宇都宮市は昨年から市民説明会を度々開いてきた。
試算で約380億円の大規模事業であることや、導入後も「採算が取れず」に公的支援が必要になるのでは……といった反対意見もある。
LRTをJR宇都宮駅西口の大通りに導入すると競合関係になる可能性があるのが関東自動車(従来はLRT導入に反対していた)。
その関東自動車の会長で、今春同社を傘下に収めた「みちのりHD」の松本順社長は、市が公共交通の総合的なまちづくりを進めることに賛意を示し、「宇都宮市と栃木県の公共交通ネットワーク構築のブレーンになりたい」と語っている。
海外LRT事情に詳しい宇都宮大大学院の森本 章倫(あきのり)教授は、英国でバス会社と競合したまま開業したLRTが破綻した例(後述)を挙げて、「公共交通は道路や橋と同じ社会資本。バス事業者と協議し市全体の公共交通充実を考えるべき」と話す。
【前編の記事内容について思うこと】
朝日新聞の記事は残念ながら説明不足。
宇大の森本教授が挙げた「英国でのLRT破綻例」とは、「シェフィールド・スーパートラム」のこと。
(注:朝日新聞の記事だけを見ると、破綻したケースがたくさんあるようにも受け取れるけど、実際に「LRTを導入したけどうまくいかなかった」のは、シェフィールドだけといって良い)
▲ 英国シェフィールドの「スーパートラム」。1994年に開業したものの、民間主導で行政のまちづくりとリンクしていなかったこと、既存バス会社との調整を行わず競合関係になってしまったこと、地形的不適合が多かったことなど、一時経営破綻にまで陥ってしまいました。
「シェフィールド・スーパートラム」は1994年に開業しましたが、主に3つの要因で経営破綻し、競合するバス会社が買収し、運行を継続することになりました。
■要因(1)……バスの規制緩和
英国では当時、バス事業の規制緩和が行われていて、シェフィールドでもバス会社は規制緩和によって路線網の拡充を行いましたが、LRTとの競合関係の解消は行いませんでした。
■要因(2)……地形的な不適合
シェフィールドは起伏が激しく、どちらかというと鉄軌道には不向きな地形です。
そこで、運行会社は100パーミル(1,000m進むと100m上る)の登坂能力を有する車両を用意したのですが、さすがに粘着式(鉄車輪だけで勾配を上り下りする方式)ではこれ以上の急勾配の上り下りは特別な装置(ラック式レール)を用いないと無理です。
(注:日本の粘着式鉄道の最急勾配は箱根登山鉄道の80パーミルで、かつての碓氷峠は66.7パーミルでした)
そこで、急勾配を避けて迂回コースを多用したのですが、結果的に運行距離が伸びてしまい、鉄軌道より勾配に強いので最短距離を運行でき、所要時間も短い路線バスに乗客が流れてしまったのです。
■要因(3)……行政と民間の調整不足
LRT導入に成功した都市では、行政が民間ときちんと協議を行ったうえで、まちづくりや交通体系の見直しが行われました。
しかし、シェフィールドのLRT導入は民間主導で推し進められ、まちづくりとうまくリンクしていなかったので、上記(1)(2)と相まって経営破綻に陥ってしまったのでした。
このことは「シェフィールドの躓き(つまづき)」と呼ばれ、英国におけるLRT導入は、2004年までの約10年間行われなくなるという「冬の時代」に突入してしまいました。
しかし、「シェフィールド・スーパートラム」の失敗は、数多くの教訓をもたらしました。
その後、英国ではシェフィールドでの教訓を踏まえて、まちづくりとリンクしたLRT計画が練られるようになり、バーミンガム、ロンドン郊外のクロイドン、ノッティンガムと、次々にLRTが開業しています。
なお、シェフィールド・スーパートラムは失敗例と言いつつも、年間1,300万人以上(約3.6万人/日)が利用しています。
また、今から15年ほど前の導入当時は、日本と同様、公共交通に対する公的支援が不十分だった点も考慮する必要はあるでしょうね。
▲ ロンドン近郊・クロイドンのLRT。「シェフィールドの躓き(つまづき)」で10年ほど英国でのLRT導入機運は萎んでいたものの、行政も参画してまちづくりの中で「ちゃんとした検討」を行った上で、まちづくりの一環として導入するようになったため、現在は各地で導入が相次いでいます。
シェフィールドでの事例は、
・行政がLRT化断念を決定した岐阜の路面電車の廃止事例
・実験的要素が強く問題山積のフランス・ナンシーのゴムタイヤトラム
と並び、LRT導入を成功させるために貴重な「戦訓」を多数示しています。
▲ フランス・ナンシーのゴムタイヤトラム。ナンシーが採用したのは「TVR」方式で、車体中央の案内車輪が走行路中央に敷かれた案内軌条を捉えて走ります。トロリーバスのインフラを流用できる利点はあるものの、技術的には未成熟で、ナンシーはLRTへの転換が決まっています。
これらの教訓から、宇都宮でLRTを導入してネットワーク型コンパクトシティを実現するには、
(1)市がまちづくりと交通体系について十分検討し、
(2)バス事業者と競合関係にならないよう調整し、
(3)適切なルート設定を行う必要がある、
……ということがいえます。
(宇都宮の場合、シェフィールドのような高低差がある地形ではないので、地表を走る軌道系交通機関にとって障害になる「勾配の問題」は考慮しなくて良いです)
なお、本記事はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第8回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第8回の概要】2012年11月3日(土)掲載
■筑波大大学院・谷口守教授へのインタビュー
連載最終回は、公共交通の視点から国内外のまちづくりを研究する筑波大学大学院の谷口守教授へのインタビュー。
(注:連載最終回に谷口教授の話を持ってきたという点は、これまでの下野新聞の姿勢を考えると驚嘆に値する)
高度成長期以降、クルマ依存の進行(悪化)と路面電車廃止が相次いだが、高度成長が終わり高齢者など交通弱者が増加、交通とまちづくりを共に考える世の中になった。
うまく交通とまちづくりの構造転換を実現できた都市はLRTを導入しているため、LRTに注目が集まっている。
LRTがBRTより優位なのは、基本的にLRTの方がまちづくりにリンクするから。
ただし「便利なLRT」を整備することが重要で、運行頻度が30分ごとと低かったり、運賃が高いとか、使いにくいとかではダメだ。
(注:やるなら本格的に整備して、質の高いサービスを提供することが重要だということ)
ドイツのカールスルーエは人口20万都市だが、LRTは総延長120kmの区間で運転している。
どんな場所でも10分間隔で運行しているから乗降客も多い。
運賃収入で賄っているのは経費の6〜7割で、残りは公的資金を投入している。
▲ ドイツのカールスルーエのトラム。路面軌道を走っていた列車がそのまま鉄道路線に乗り入れる「トラムトレイン」の先進都市です(停留所のバリアフリー対策はまだ改善の余地があるようですね)。宇都宮にLRT導入が実現した場合、LRT区間から東武宇都宮線やJR日光線、JR烏山線、JR宇都宮線に直通するような感じです。
導入反対派は赤字を問題視するが、サービス水準が悪ければ利用者が増えず、赤字になるのは当然。
また、赤字を減らそうと運行頻度を下げれば余計赤字体質になっていく点にも注意が必要だ。
高度成長期以降、過剰に独立採算を求める論理があるが、今後は地域の足をどう支えるかの観点が重要となる。
全国でLRT導入が足踏み状態なのは、首長の影響が大きい。
富山市では市長が「私の独断でやります」と宣言してローカル線をLRT転換し、「それが間違いなら選挙で落として」という姿勢だった。
日本ではまだこういう首長が少ない。
谷口教授から宇都宮へのアドバイス。
「札幌、仙台に次いで宇都宮があり、周辺都市より『ワンランク上』の都市なのに、市民の足=公共交通が弱い。公共交通は都市の『格』を表す。街なかに鉄軌道があってしかるべきだと思う」
【第8回の記事内容について思うこと】
筑波大の谷口教授が指摘するように、宇都宮の弱点は「市域内の公共交通が弱い」ことです。
東北新幹線やJR宇都宮線、東武宇都宮線という都市間輸送の強い軸があるにも関わらず、JR宇都宮駅から市内各方面に向かう二次交通が弱いため「まちのポテンシャル」をほとんど活かせていません。
(路線バスはたくさん走っていますが、一般道を走るので時間が読めないし、余所から来た人にとっては路線バスがたくさんありすぎると「どれに乗っていいか分からない」状態になり、分かりにくい)
▲ スイス・バーゼルのトラム。人口は約16.6万人。旧来からの路面電車をLRT化している都市です。
不幸なのは、地元でしか生活したことがない人の多くはこの弱点に気付いていないか、目を背けているということ。
むしろ周辺地域や余所から来た人の方が、この点を敏感に感じ取っています。
今後の宇都宮の発展は、公共交通ネットワーク拡充が鍵となります。
▲ 米国・ヒューストンのLRT。人口は約210万人。「クルマ社会の権化」とでもいうべき米国でも、過度なクルマ依存への反省から都市計画の見直しが行われ、多数の都市にLRTが開業。都市内交通に変革をもたらしています。
下野新聞「LRTを問う」全8回を読んで、LRTに懐疑的な記事一辺倒だった同紙も、公共交通を取り巻く現在の諸状況を取材し、従来の論調の誤りに気付いたのかなと感じます。
財政状況は全国屈指の健全さを誇るものの、クルマがないと移動に困る都市構造なのに渋滞多発で移動がままならない50万都市・宇都宮が、長期戦略に基づいた新しいまちづくりを推進することに期待します。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■筑波大大学院・谷口守教授へのインタビュー
連載最終回は、公共交通の視点から国内外のまちづくりを研究する筑波大学大学院の谷口守教授へのインタビュー。
(注:連載最終回に谷口教授の話を持ってきたという点は、これまでの下野新聞の姿勢を考えると驚嘆に値する)
高度成長期以降、クルマ依存の進行(悪化)と路面電車廃止が相次いだが、高度成長が終わり高齢者など交通弱者が増加、交通とまちづくりを共に考える世の中になった。
うまく交通とまちづくりの構造転換を実現できた都市はLRTを導入しているため、LRTに注目が集まっている。
LRTがBRTより優位なのは、基本的にLRTの方がまちづくりにリンクするから。
ただし「便利なLRT」を整備することが重要で、運行頻度が30分ごとと低かったり、運賃が高いとか、使いにくいとかではダメだ。
(注:やるなら本格的に整備して、質の高いサービスを提供することが重要だということ)
ドイツのカールスルーエは人口20万都市だが、LRTは総延長120kmの区間で運転している。
どんな場所でも10分間隔で運行しているから乗降客も多い。
運賃収入で賄っているのは経費の6〜7割で、残りは公的資金を投入している。
▲ ドイツのカールスルーエのトラム。路面軌道を走っていた列車がそのまま鉄道路線に乗り入れる「トラムトレイン」の先進都市です(停留所のバリアフリー対策はまだ改善の余地があるようですね)。宇都宮にLRT導入が実現した場合、LRT区間から東武宇都宮線やJR日光線、JR烏山線、JR宇都宮線に直通するような感じです。
導入反対派は赤字を問題視するが、サービス水準が悪ければ利用者が増えず、赤字になるのは当然。
また、赤字を減らそうと運行頻度を下げれば余計赤字体質になっていく点にも注意が必要だ。
高度成長期以降、過剰に独立採算を求める論理があるが、今後は地域の足をどう支えるかの観点が重要となる。
全国でLRT導入が足踏み状態なのは、首長の影響が大きい。
富山市では市長が「私の独断でやります」と宣言してローカル線をLRT転換し、「それが間違いなら選挙で落として」という姿勢だった。
日本ではまだこういう首長が少ない。
谷口教授から宇都宮へのアドバイス。
「札幌、仙台に次いで宇都宮があり、周辺都市より『ワンランク上』の都市なのに、市民の足=公共交通が弱い。公共交通は都市の『格』を表す。街なかに鉄軌道があってしかるべきだと思う」
【第8回の記事内容について思うこと】
筑波大の谷口教授が指摘するように、宇都宮の弱点は「市域内の公共交通が弱い」ことです。
東北新幹線やJR宇都宮線、東武宇都宮線という都市間輸送の強い軸があるにも関わらず、JR宇都宮駅から市内各方面に向かう二次交通が弱いため「まちのポテンシャル」をほとんど活かせていません。
(路線バスはたくさん走っていますが、一般道を走るので時間が読めないし、余所から来た人にとっては路線バスがたくさんありすぎると「どれに乗っていいか分からない」状態になり、分かりにくい)
▲ スイス・バーゼルのトラム。人口は約16.6万人。旧来からの路面電車をLRT化している都市です。
不幸なのは、地元でしか生活したことがない人の多くはこの弱点に気付いていないか、目を背けているということ。
むしろ周辺地域や余所から来た人の方が、この点を敏感に感じ取っています。
今後の宇都宮の発展は、公共交通ネットワーク拡充が鍵となります。
▲ 米国・ヒューストンのLRT。人口は約210万人。「クルマ社会の権化」とでもいうべき米国でも、過度なクルマ依存への反省から都市計画の見直しが行われ、多数の都市にLRTが開業。都市内交通に変革をもたらしています。
下野新聞「LRTを問う」全8回を読んで、LRTに懐疑的な記事一辺倒だった同紙も、公共交通を取り巻く現在の諸状況を取材し、従来の論調の誤りに気付いたのかなと感じます。
財政状況は全国屈指の健全さを誇るものの、クルマがないと移動に困る都市構造なのに渋滞多発で移動がままならない50万都市・宇都宮が、長期戦略に基づいた新しいまちづくりを推進することに期待します。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第7回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第7回の概要】2012年11月2日(金)掲載
■連合栃木の主張
連載第7回は、「連合栃木」(民主党栃木県連の支持母体)の小林英樹副事務局長へのインタビュー。
連合栃木は「LRT反対」を栃木県に申し入れたが、その理由について「宇都宮のバス利用者は1日20,000人なので、LRTを導入してもペイしない。運営はどうせ赤字続きになるはずで、行政の財政負担が必至となる。LRTは採算度外視で公共事業をやるのが目的としか思えない」と説明。
さらに「LRTは朝夕は通勤で利用しても、日中はガラガラになるだろう。宇都宮は日光のように市電が走っていなかったから、初期投資は400億では済まなくなる。LRTそのものは悪くないが宇都宮には合わない」……のだそうだ。
▲ フランス・グルノーブルのLRT。フランスでは「移動の自由」が基本的人権の一つと考えられていて、公共交通は公的に下支えするという考え方が広く定着しています。日本もその方向にシフトすべきで、従来のような目先の採算性に固執すべきではありません。
下野新聞から、LRTよりもBRTの方が優れているのかという問いには、「連合栃木としては具体的にBRTが良いと言及してはいないが、LRTよりは優れていると考えていて、バスなど既存の公共交通を活用し、バスを核にしてタクシーや自転車と結びつければよいと考えている」とのこと。
LRTは「乗り換えが必要で、高齢者向きではない」とも考えているそうだ。
既存の路線バスが行政から多大な補助を受けている点について連合栃木は、「赤字だから廃止では市民生活に影響が出るから一定程度必要だ。LRTは新規投資で赤字だから大問題で、今の路線バスとは違う」と話す。
連合栃木が指示する民主党県連もLRT反対なのに、候補を擁立できなかったことについては、「結果的にLRTを対立軸にできなかったが、いよいよ導入に向け動き出したら住民投票という手もある」とのこと。
【第7回の記事内容について思うこと】
11月1日(金)に行われた市長選立候補予定者による公開討論会で、新人候補が「LRTの初期投資400億」(市が公表しているのは約380億円)と発言していたのですが、どうやらこの数字は連合栃木が出所のようです。
また、国の支援が抜本的に拡充しているのを考慮していない点や、導入による波及効果を考慮していない点、「住民投票という手もある」と言及している点も、連合栃木の主張と合致します。
連合栃木も民主党栃木県連も独自候補を擁立しなかったわけですから、後になってこういうことを発言するのはどうかな、と思うわけなんですが……。
(市長選で市の方針を決めるわけですから、それこそが住民投票なのではないかと愚考します/選挙にしても住民投票にしても、実施すれば多額の税金がかかります!!)
参考までに、民主党も国政ではLRT推進の立場で、そもそもLRT導入推進を求める動きは与野党を問わず政党横断的であることを指摘しておきます。
今回の記事でも明らかですが、連合栃木は現状の路線バスが機能不全に陥っている点を完全に無視しているようです。
機能不全に陥っている交通機関に対し、抜本的な構造改善を行わないまま、「廃止されたら大変だ」と公的支援を注入し続けるだけでは、事態は改善する道理がなく、ジリ貧傾向を続けるだけです。
また、「乗り換えがあると高齢者には優しくない」と主張していますが、路線バスとタクシーを組み合わせたところで乗り換えがあるのは同じことですから、この主張は明らかにおかしいと言えます。
LRTは、導入する車両が100%低床である場合も部分低床である場合もありますが、車両の出入り口と停留所のホーム面の高低差も隙間も少なく、バリアフリー面で極めて優れている交通機関です。
「日中はガラガラ」という話も、都市部の鉄道路線でもオフピーク時になればピーク時よりも利用者が減って、大半の乗客は着座でき、立っている客は少なくなります。
JR宇都宮線(特に小金井以南)を見ても日中は「ガラガラ」ですが、それを無駄というのは暴論で、頻繁に列車が走っていればこそ「待たずに乗れる」から「鉄道を使おう」を思うわけです。これは「乗車の機会性が高い」状態です。
運転本数が減れば減るほど、この魅力が失われていくということは、体感的にご理解いただけるのではないでしょうか。
さらに、連合栃木の見解では「宇都宮は日光のように市電が走っていなかった」から初期投資が大幅に上回るということなんですが、これは全く論理的ではないですね。
では逆に、日光のように市電が走った経験がある都市なら、安価にLRT整備が可能なのか、という話にもなります。
(注:当方は、日光市内にもLRTを整備して、観光客がクルマを使わずにも日光に来て観光できると、今まで以上に観光客を誘致できるものと考えています)
今回の記事を見る限り、連合栃木には本気で公共交通の利便性を高めるという理念や戦略があるとは感じることができませんでした。
過度なクルマ依存状態がこのまま続いても良い、というふうにも解釈できてしまいます。
連合栃木が反対する理由が「LRTを導入すると路線バス縮小だから」程度の認識に由来するなら、とんでもない勉強不足です。
なぜなら、「LRTを導入して終わり」という話ではなく、LRTと既存の鉄道各線との連携、路線バス・コミュニティバド・デマンド交通の再編を含めた拡充が不可欠となり、「バスはなくならない」どころか「ますます重要になる」からです。
宇都宮市もそろそろ一歩踏み込んで、「バス運転手の雇用機会は守る」方針を明示すべき段階なのかも知れませんね。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■連合栃木の主張
連載第7回は、「連合栃木」(民主党栃木県連の支持母体)の小林英樹副事務局長へのインタビュー。
連合栃木は「LRT反対」を栃木県に申し入れたが、その理由について「宇都宮のバス利用者は1日20,000人なので、LRTを導入してもペイしない。運営はどうせ赤字続きになるはずで、行政の財政負担が必至となる。LRTは採算度外視で公共事業をやるのが目的としか思えない」と説明。
さらに「LRTは朝夕は通勤で利用しても、日中はガラガラになるだろう。宇都宮は日光のように市電が走っていなかったから、初期投資は400億では済まなくなる。LRTそのものは悪くないが宇都宮には合わない」……のだそうだ。
▲ フランス・グルノーブルのLRT。フランスでは「移動の自由」が基本的人権の一つと考えられていて、公共交通は公的に下支えするという考え方が広く定着しています。日本もその方向にシフトすべきで、従来のような目先の採算性に固執すべきではありません。
下野新聞から、LRTよりもBRTの方が優れているのかという問いには、「連合栃木としては具体的にBRTが良いと言及してはいないが、LRTよりは優れていると考えていて、バスなど既存の公共交通を活用し、バスを核にしてタクシーや自転車と結びつければよいと考えている」とのこと。
LRTは「乗り換えが必要で、高齢者向きではない」とも考えているそうだ。
既存の路線バスが行政から多大な補助を受けている点について連合栃木は、「赤字だから廃止では市民生活に影響が出るから一定程度必要だ。LRTは新規投資で赤字だから大問題で、今の路線バスとは違う」と話す。
連合栃木が指示する民主党県連もLRT反対なのに、候補を擁立できなかったことについては、「結果的にLRTを対立軸にできなかったが、いよいよ導入に向け動き出したら住民投票という手もある」とのこと。
【第7回の記事内容について思うこと】
11月1日(金)に行われた市長選立候補予定者による公開討論会で、新人候補が「LRTの初期投資400億」(市が公表しているのは約380億円)と発言していたのですが、どうやらこの数字は連合栃木が出所のようです。
また、国の支援が抜本的に拡充しているのを考慮していない点や、導入による波及効果を考慮していない点、「住民投票という手もある」と言及している点も、連合栃木の主張と合致します。
連合栃木も民主党栃木県連も独自候補を擁立しなかったわけですから、後になってこういうことを発言するのはどうかな、と思うわけなんですが……。
(市長選で市の方針を決めるわけですから、それこそが住民投票なのではないかと愚考します/選挙にしても住民投票にしても、実施すれば多額の税金がかかります!!)
参考までに、民主党も国政ではLRT推進の立場で、そもそもLRT導入推進を求める動きは与野党を問わず政党横断的であることを指摘しておきます。
今回の記事でも明らかですが、連合栃木は現状の路線バスが機能不全に陥っている点を完全に無視しているようです。
機能不全に陥っている交通機関に対し、抜本的な構造改善を行わないまま、「廃止されたら大変だ」と公的支援を注入し続けるだけでは、事態は改善する道理がなく、ジリ貧傾向を続けるだけです。
また、「乗り換えがあると高齢者には優しくない」と主張していますが、路線バスとタクシーを組み合わせたところで乗り換えがあるのは同じことですから、この主張は明らかにおかしいと言えます。
LRTは、導入する車両が100%低床である場合も部分低床である場合もありますが、車両の出入り口と停留所のホーム面の高低差も隙間も少なく、バリアフリー面で極めて優れている交通機関です。
「日中はガラガラ」という話も、都市部の鉄道路線でもオフピーク時になればピーク時よりも利用者が減って、大半の乗客は着座でき、立っている客は少なくなります。
JR宇都宮線(特に小金井以南)を見ても日中は「ガラガラ」ですが、それを無駄というのは暴論で、頻繁に列車が走っていればこそ「待たずに乗れる」から「鉄道を使おう」を思うわけです。これは「乗車の機会性が高い」状態です。
運転本数が減れば減るほど、この魅力が失われていくということは、体感的にご理解いただけるのではないでしょうか。
さらに、連合栃木の見解では「宇都宮は日光のように市電が走っていなかった」から初期投資が大幅に上回るということなんですが、これは全く論理的ではないですね。
では逆に、日光のように市電が走った経験がある都市なら、安価にLRT整備が可能なのか、という話にもなります。
(注:当方は、日光市内にもLRTを整備して、観光客がクルマを使わずにも日光に来て観光できると、今まで以上に観光客を誘致できるものと考えています)
今回の記事を見る限り、連合栃木には本気で公共交通の利便性を高めるという理念や戦略があるとは感じることができませんでした。
過度なクルマ依存状態がこのまま続いても良い、というふうにも解釈できてしまいます。
連合栃木が反対する理由が「LRTを導入すると路線バス縮小だから」程度の認識に由来するなら、とんでもない勉強不足です。
なぜなら、「LRTを導入して終わり」という話ではなく、LRTと既存の鉄道各線との連携、路線バス・コミュニティバド・デマンド交通の再編を含めた拡充が不可欠となり、「バスはなくならない」どころか「ますます重要になる」からです。
宇都宮市もそろそろ一歩踏み込んで、「バス運転手の雇用機会は守る」方針を明示すべき段階なのかも知れませんね。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第6回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第6回の概要】2012年11月1日(木)掲載
■議論:市は「受益」示しきれず
JR宇都宮駅東口と清原工業団地を結ぶ幹線道路は、平日だと朝は2時間以上も大渋滞が発生する。
清原工業団地に通勤する男性は、LRTは「計画に具体性がないから、現実感がわかない」と語る。
JR宇都宮駅東口から、会社が自費運行するシャトルバスに乗ると、会社までの所要1時間、読書で時間つぶししているという。
渋滞を少しでも緩和させようと、企業はシャトルバスの運行を行っているが、これには年間数億円を要している。
佐藤市長は、不況で各社の収益が悪化する中、シャトルバスの運行経費が重荷となった企業は、(公共交通が整ったもっと便利な土地に)移転してしまうと危機感を募らし、LRT導入を訴える。
栃木県と宇都宮市が2003年に行った試算では、LRT導入による移動短縮効果は1日約3,700時間、金額に換算すると年間約32億円の節約になるという。
このように、極めて大きな受益をもたらすことが見込まれているものの、それが市民には十分伝わっているとは言いがたいのが現状で、「市には1,280億円の負債がある」という点を理由に導入に反対する市民もいる。
宇都宮市長も宇都宮市も、LRT導入に関する初期費用(約380億円)の内、1/2は国が、1/4は県が負担するので、市の負担は1/4(約95億円)と再三説明している。
しかし、反対する一部市民との溝は埋まらない(注:そもそも聞く耳を持っていないのでは?)。
LRT導入を推進し、市域内の公共交通ネットワークについて考える市民団体「雷都レールとちぎ」の奥備一彦代表は、反対する人の理由はいつも「赤字だから」「家のそばを通らないから」ばかりだと指摘。
街の魅力向上、環境負荷軽減効果などの波及効果は無視され、ハコモノ公共事業と同列に語られてきたことを嘆く。
一方で奥備代表は、情報を十分提示できなかった市にも責任があるとも語る。
宇都宮の将来に期待しているだけに、忸怩たる思いが滲む。
LRT構想は渡辺文雄知事が打ち出して約20年。
これを「是とするのか非とするのか」決める市長選が迫る。
【第6回の記事内容について思うこと】
この「是とするのか非とするのか」という下野新聞の報じ方、これが市民をミスリードする最大の要因だったのかも知れません。
LRT導入へのハードルがここ数年で相当下がったことを踏まえたうえで、「東西基幹交通としてLRTが適しているかどうか」ならまだ理解できるのですが……。
▲ 米国オレゴン州のポートランド。米国における先進事例の一つで、宇都宮でも参考にしているだろうと思います。LRTと路線バスがうまく連携しています。
これまで宇都宮市が具体的な計画を示せなかった背景には、既存のバス会社への配慮や、「公共事業は何でも凍結」と言いながら「清原方面の渋滞は新しい橋を作れば解消する」と支離滅裂な発言に終始した、前の県知事に振り回されたこともあるのではないかと推察します。
今の県知事は、支離滅裂な前知事時代には宇都宮市長だった人物で、このままでは埒があかないと知事選に出馬し、現職を大差で破り当選しています。
とはいえ、LRTを取り巻く環境はその頃からかなり流動的ではあったので、市も大変だっただろうなあ……と。
「公共事業が全て悪」というのは暴論だと思います。
地域の公共交通など、投資効果があるもの(または適切な投資が必要なもの)には「きちんと投資する」(ただし浪費にならないよう監視する)のが本筋だろうと考えます。
交通不便地域に人・物・金は集まりませんから、これは極めて重要な視点です。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■議論:市は「受益」示しきれず
JR宇都宮駅東口と清原工業団地を結ぶ幹線道路は、平日だと朝は2時間以上も大渋滞が発生する。
清原工業団地に通勤する男性は、LRTは「計画に具体性がないから、現実感がわかない」と語る。
JR宇都宮駅東口から、会社が自費運行するシャトルバスに乗ると、会社までの所要1時間、読書で時間つぶししているという。
渋滞を少しでも緩和させようと、企業はシャトルバスの運行を行っているが、これには年間数億円を要している。
佐藤市長は、不況で各社の収益が悪化する中、シャトルバスの運行経費が重荷となった企業は、(公共交通が整ったもっと便利な土地に)移転してしまうと危機感を募らし、LRT導入を訴える。
栃木県と宇都宮市が2003年に行った試算では、LRT導入による移動短縮効果は1日約3,700時間、金額に換算すると年間約32億円の節約になるという。
このように、極めて大きな受益をもたらすことが見込まれているものの、それが市民には十分伝わっているとは言いがたいのが現状で、「市には1,280億円の負債がある」という点を理由に導入に反対する市民もいる。
宇都宮市長も宇都宮市も、LRT導入に関する初期費用(約380億円)の内、1/2は国が、1/4は県が負担するので、市の負担は1/4(約95億円)と再三説明している。
しかし、反対する一部市民との溝は埋まらない(注:そもそも聞く耳を持っていないのでは?)。
LRT導入を推進し、市域内の公共交通ネットワークについて考える市民団体「雷都レールとちぎ」の奥備一彦代表は、反対する人の理由はいつも「赤字だから」「家のそばを通らないから」ばかりだと指摘。
街の魅力向上、環境負荷軽減効果などの波及効果は無視され、ハコモノ公共事業と同列に語られてきたことを嘆く。
一方で奥備代表は、情報を十分提示できなかった市にも責任があるとも語る。
宇都宮の将来に期待しているだけに、忸怩たる思いが滲む。
LRT構想は渡辺文雄知事が打ち出して約20年。
これを「是とするのか非とするのか」決める市長選が迫る。
【第6回の記事内容について思うこと】
この「是とするのか非とするのか」という下野新聞の報じ方、これが市民をミスリードする最大の要因だったのかも知れません。
LRT導入へのハードルがここ数年で相当下がったことを踏まえたうえで、「東西基幹交通としてLRTが適しているかどうか」ならまだ理解できるのですが……。
▲ 米国オレゴン州のポートランド。米国における先進事例の一つで、宇都宮でも参考にしているだろうと思います。LRTと路線バスがうまく連携しています。
これまで宇都宮市が具体的な計画を示せなかった背景には、既存のバス会社への配慮や、「公共事業は何でも凍結」と言いながら「清原方面の渋滞は新しい橋を作れば解消する」と支離滅裂な発言に終始した、前の県知事に振り回されたこともあるのではないかと推察します。
今の県知事は、支離滅裂な前知事時代には宇都宮市長だった人物で、このままでは埒があかないと知事選に出馬し、現職を大差で破り当選しています。
とはいえ、LRTを取り巻く環境はその頃からかなり流動的ではあったので、市も大変だっただろうなあ……と。
「公共事業が全て悪」というのは暴論だと思います。
地域の公共交通など、投資効果があるもの(または適切な投資が必要なもの)には「きちんと投資する」(ただし浪費にならないよう監視する)のが本筋だろうと考えます。
交通不便地域に人・物・金は集まりませんから、これは極めて重要な視点です。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第5回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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栃木県下最大の地方新聞「下野新聞」では、2012年10月27日(土)~11月3日(土)の8日間に渡って、LRT導入を巡る是非についての連載記事「LRTを問う」を掲載しました。
【第5回の概要】2012年10月31日(水)掲載
■BRT:コスト安いが課題も
名古屋では市内に張り巡らされていた市電が「渋滞の元凶」として全廃され、代わりに地下鉄が整備された。
しかし、地下鉄だけでは市電を代替しきれず、地下鉄を補完する交通機関として「基幹バス」が整備された。
基幹バスは8路線の整備を予定していたものの、実際には2路線だけの整備に留まっている。
基幹バスには走行レーンがあり、平日朝夕ラッシュ時はバス専用となっている。
しかし、カラー舗装のみで物理的に区分しているわけではないため、一般車の侵入が後を絶たない(LRTは軌道法で一般車の侵入を禁止している)。
また、ラッシュ時にはバス数珠つなぎ現象が発生するうえ、車内が混雑してくると料金支払いが混乱するなど、問題も多い。
名古屋の基幹バスは、関東自動車が「コスト面で優位」と主張したBRT(バス・ラピッド・トランジット)に近く(?)、名古屋の新出来町線はカラー舗装や屋根付き停留所など、初期投資は1kmあたり2.4億円程度。
参考までに、全線高架路線を走る「ガイドウェイバス」は6.8kmで380億円の整備費がかかっている。
新潟では、2年後に都心部のBRTを整備する計画がある。
新潟駅高架下の交通広場完成に目処がつく10年後には、LRTへの転換を検討する予定となっている。
走行性に優れたLRT、安上がりで済むBRT。
どちらを選ぶかは「基準をどこに置くかで判断は分かれる」。
【第5回の記事内容について思うこと】
まず、大きな誤解を招く記述があるので明記しますが、「BRTが安い」とは一概に言えないという点に注意が必要です。
BRTの初期投資は「インフラの質」で変わり、その質によって投資額が安くもなればLRT以上に高くつくことがあるのです。
また、「BRT=連接バス」ではない点も注意が必要です。
BRTというのは(LRTと同様)「システムの名称」であって、車両が連接かどうかは、実は直接的には関係ないのです。
建設費については、LRTの場合は、軌道を敷設する必要があるため、ある程度投資額が読めます。
一方BRTについては、実はまだ「これがBRTです」という標準的な例がないため、明確に「○km整備すると○○億円です」といった数字が出しにくい状況があります。
走行レーンのカラー舗装程度で済ますのか、専用走行空間を確保するかでも変わります。
専用走行空間を確保するのであれば、費用的にはLRTと大差なくなります。
▲ 中国・広州市のBRT。専用空間の確保だけにとどまらず、なんと新幹線の駅のような追い抜き線まで備えた、とんでもなく豪勢なインフラを整備しています。おそらく、ここまでやるならLRTで長編成を走らせる方がはるかに安価で済むし、輸送力も大きくできる筈です。
また、運行経費はバスの方が高く、定時運行性・速達性・将来確実性・シンボル性はLRTが相当に優位である点にも注意が必要です。
鉄軌道は摩擦係数が低い鉄のレールを走るので、摩擦係数が高いゴムタイヤのバスに比べると、それだけでもかなり優位なのです。
「バスは安い」というのは、あくまでも初期投資を相当に抑制した場合に限った話。
また、「1人の運転士で何人のお客さんを運べるか」という見方もあります。
交通事業の経費の内、人件費が占める割合というのは実はかなり大きいので重要なポイントです。
もし連接バスを使用する場合、導入価格は7,000~8,000万円で、車両寿命は8~10年。1台あたりの輸送力は路線バスの1.5倍程度です。
LRV(ライト・レール・ヴィークル/LRT用の車両)は、導入価格は2~3億円で、車両寿命は30年以上。1編成あたりの輸送力は路線バスの2倍(富山「ポートラム」)~3倍(広島「グリーンムーバー」)で、もし欧米のような併結運転を行うなら、2編成併結で4~6倍、3編成併結だと6~9倍となります。
輸送力の差は、(1)導入する車両の数と、(2)雇用する運転士の数に関連してきます。
輸送力が大きい(大きくするのが容易な)LRTは、運転士の数をかなり減らせますが、BRTはそこまでは減らせず、路線バスだとかなり多くの運転士を雇用する必要があります。
「コミュニティバスをたくさん走らせればLRTを導入しなくて良いんだ」なんて話も出るようですが、コミュニティバスの輸送力は路線バスの半分以下ですので、人件費は路線バスの2倍、LRTの4~6倍(LRV2編成併結の場合の8~12倍、3編成併結の場合の12~18倍)に膨らみます。
(注:コミュニティバスは必要で重要な交通モードですが、輸送需要に見合った運行ルートを検討することが大切です)
上の例でも分かると思いますが、この点でもLRTが一概に「高い」ともいえないし、BRTが一概に「安い」ともいえないのだ、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
そもそも論なんですが、「LRTかBRTか」的な二択は「ナンセンス」ではあります。
というのも、輸送需要や地域特性などに応じて「LRTもBRTも路線バスもコミバスもデマンド交通も」というのが本筋であるからです。
「このルートにはどの交通モードが適しているのか」という議論を冷静に行っていくことこそが、市全体の利益に繋がっていくものと思います。
宇都宮の場合、東西基幹交通としては輸送力が大きく、シンボル性が高く、インパクトも絶大で、将来東武鉄道やJR線などへの直通運転も視野に入れればLRTこそ最適だと当方(管理人)は考えているのですが、「BRTに適した地域はないのか」と問われれば「あると思います」というのがお答えになります。
また、交通機関に限った話ではないのですが、「初期投資が安い=将来負担も少ない」ではない点にも注意が必要です。
たとえば、ランニングコストが割高な身近な例としては、インクジェットプリンターが挙げられます。本体価格は相当激安なんですが、インク代はかなり割高です。
交通機関も同様で、しかも何十年単位で使っていくものですから、イニシャルコスト(初期費用)よりも、むしろランニングコスト(維持管理費用)にこそ注目すべきであるといえます。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【第5回の概要】2012年10月31日(水)掲載
■BRT:コスト安いが課題も
名古屋では市内に張り巡らされていた市電が「渋滞の元凶」として全廃され、代わりに地下鉄が整備された。
しかし、地下鉄だけでは市電を代替しきれず、地下鉄を補完する交通機関として「基幹バス」が整備された。
基幹バスは8路線の整備を予定していたものの、実際には2路線だけの整備に留まっている。
基幹バスには走行レーンがあり、平日朝夕ラッシュ時はバス専用となっている。
しかし、カラー舗装のみで物理的に区分しているわけではないため、一般車の侵入が後を絶たない(LRTは軌道法で一般車の侵入を禁止している)。
また、ラッシュ時にはバス数珠つなぎ現象が発生するうえ、車内が混雑してくると料金支払いが混乱するなど、問題も多い。
名古屋の基幹バスは、関東自動車が「コスト面で優位」と主張したBRT(バス・ラピッド・トランジット)に近く(?)、名古屋の新出来町線はカラー舗装や屋根付き停留所など、初期投資は1kmあたり2.4億円程度。
参考までに、全線高架路線を走る「ガイドウェイバス」は6.8kmで380億円の整備費がかかっている。
新潟では、2年後に都心部のBRTを整備する計画がある。
新潟駅高架下の交通広場完成に目処がつく10年後には、LRTへの転換を検討する予定となっている。
走行性に優れたLRT、安上がりで済むBRT。
どちらを選ぶかは「基準をどこに置くかで判断は分かれる」。
【第5回の記事内容について思うこと】
まず、大きな誤解を招く記述があるので明記しますが、「BRTが安い」とは一概に言えないという点に注意が必要です。
BRTの初期投資は「インフラの質」で変わり、その質によって投資額が安くもなればLRT以上に高くつくことがあるのです。
また、「BRT=連接バス」ではない点も注意が必要です。
BRTというのは(LRTと同様)「システムの名称」であって、車両が連接かどうかは、実は直接的には関係ないのです。
建設費については、LRTの場合は、軌道を敷設する必要があるため、ある程度投資額が読めます。
一方BRTについては、実はまだ「これがBRTです」という標準的な例がないため、明確に「○km整備すると○○億円です」といった数字が出しにくい状況があります。
走行レーンのカラー舗装程度で済ますのか、専用走行空間を確保するかでも変わります。
専用走行空間を確保するのであれば、費用的にはLRTと大差なくなります。
▲ 中国・広州市のBRT。専用空間の確保だけにとどまらず、なんと新幹線の駅のような追い抜き線まで備えた、とんでもなく豪勢なインフラを整備しています。おそらく、ここまでやるならLRTで長編成を走らせる方がはるかに安価で済むし、輸送力も大きくできる筈です。
また、運行経費はバスの方が高く、定時運行性・速達性・将来確実性・シンボル性はLRTが相当に優位である点にも注意が必要です。
鉄軌道は摩擦係数が低い鉄のレールを走るので、摩擦係数が高いゴムタイヤのバスに比べると、それだけでもかなり優位なのです。
「バスは安い」というのは、あくまでも初期投資を相当に抑制した場合に限った話。
また、「1人の運転士で何人のお客さんを運べるか」という見方もあります。
交通事業の経費の内、人件費が占める割合というのは実はかなり大きいので重要なポイントです。
もし連接バスを使用する場合、導入価格は7,000~8,000万円で、車両寿命は8~10年。1台あたりの輸送力は路線バスの1.5倍程度です。
LRV(ライト・レール・ヴィークル/LRT用の車両)は、導入価格は2~3億円で、車両寿命は30年以上。1編成あたりの輸送力は路線バスの2倍(富山「ポートラム」)~3倍(広島「グリーンムーバー」)で、もし欧米のような併結運転を行うなら、2編成併結で4~6倍、3編成併結だと6~9倍となります。
輸送力の差は、(1)導入する車両の数と、(2)雇用する運転士の数に関連してきます。
輸送力が大きい(大きくするのが容易な)LRTは、運転士の数をかなり減らせますが、BRTはそこまでは減らせず、路線バスだとかなり多くの運転士を雇用する必要があります。
「コミュニティバスをたくさん走らせればLRTを導入しなくて良いんだ」なんて話も出るようですが、コミュニティバスの輸送力は路線バスの半分以下ですので、人件費は路線バスの2倍、LRTの4~6倍(LRV2編成併結の場合の8~12倍、3編成併結の場合の12~18倍)に膨らみます。
(注:コミュニティバスは必要で重要な交通モードですが、輸送需要に見合った運行ルートを検討することが大切です)
上の例でも分かると思いますが、この点でもLRTが一概に「高い」ともいえないし、BRTが一概に「安い」ともいえないのだ、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
そもそも論なんですが、「LRTかBRTか」的な二択は「ナンセンス」ではあります。
というのも、輸送需要や地域特性などに応じて「LRTもBRTも路線バスもコミバスもデマンド交通も」というのが本筋であるからです。
「このルートにはどの交通モードが適しているのか」という議論を冷静に行っていくことこそが、市全体の利益に繋がっていくものと思います。
宇都宮の場合、東西基幹交通としては輸送力が大きく、シンボル性が高く、インパクトも絶大で、将来東武鉄道やJR線などへの直通運転も視野に入れればLRTこそ最適だと当方(管理人)は考えているのですが、「BRTに適した地域はないのか」と問われれば「あると思います」というのがお答えになります。
また、交通機関に限った話ではないのですが、「初期投資が安い=将来負担も少ない」ではない点にも注意が必要です。
たとえば、ランニングコストが割高な身近な例としては、インクジェットプリンターが挙げられます。本体価格は相当激安なんですが、インク代はかなり割高です。
交通機関も同様で、しかも何十年単位で使っていくものですから、イニシャルコスト(初期費用)よりも、むしろランニングコスト(維持管理費用)にこそ注目すべきであるといえます。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第4回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
【第4回の概要】2012年10月30日(火)掲載
■支援:国、県は市の計画待ち
宇都宮市交通政策課の職員は、国土交通省の都市局に度々足を運び、宇都宮市におけるLRTを巡る状況について説明を行っている。
国交省は2006年に「LRTプロジェクト」を立ち上げ、従来はバラバラだった都市・道路・交通の対応を一本化して導入を後押ししている。
しかし、今までのところ実際に利用したのは富山市だけに留まっている。
全国各地の都市でLRT導入構想が持ち上がっているのに実現に結びつかないで足踏みしているのは、バス会社の反発など自治体内での合意形成が遅れているため。
国交省は「地元がまとまれば全面支援」という姿勢で、万全の支援体制は既に整っている。
宇都宮はLRT導入が決まれば「完全に一からの整備」となり、これまで路面電車が走っていなかった都市としての先進事例となるために、各方面からの注目度は極めて高い。
従来は慎重姿勢だった栃木県も、ここに来て積極的に。 県知事も知事選の公約に「LRTなどを踏まえた公共交通体系の充実」を初めて盛り込んだ。
ただ県も現時点では「宇都宮市がLRT計画を正式決定しないと何も始まらない」という姿勢で、宇都宮における議論の行方を注意深く見守っている。
【第4回の記事内容について思うこと】
栃木県が「宇都宮市の動き次第」としているのは、県が及び腰だから、ではありません。
LRT導入に必要となる「地域公共交通総合連携計画」を連絡・調整する「協議会」は市町村が主体となって立ち上げるもので、交通事業者・道路管理者・利用者・学識経験者等と組織するものであるからです。
この「協議会」が決めた「計画」は、都道府県(宇都宮の場合は栃木県)を介さず、直接国交省に提出することになっています。
つまり、宇都宮の場合は市が主体になって、関東自動車など交通事業者や警察や市民団体や学識経験者等と「協議会」を組織して、国交省に「計画」を提出すればLRT導入は本決まりとなります。
国も県も全面支持の状態なので、決まれば動きは早いのです。
栃木県では、2000年~2004年の県知事が「無駄な公共事業は凍結」としてLRT反対を唱えたため、導入に向けた動きが一度頓挫してしまったという不幸がありました。
このときの知事は、再選を狙う2004年の県知事選にあたり、「橋を架ければ渋滞は解消する」から「LRTはいらない」という主旨の発言を繰り返したのですが、大差で落選。
そのとき当選したのが、2004年まで宇都宮市長だった福田富一氏でした。
この「空白の4年間」でLRTの話は数年分は後退してしまったようにも思えます。
この空白期間がなければ、当初予定の2010年10月10日にLRT導入が実現していたかも知れません。
しかし、上下分離方式の導入など、2000年~2004年当時はまだ諸状況が整いきった状況ではなかったことを考えると、導入の賛否を巡る市長選が2012年になったこと自体は、LRTに関して言えば「良かった」と言うこともできるかも知れません。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■支援:国、県は市の計画待ち
宇都宮市交通政策課の職員は、国土交通省の都市局に度々足を運び、宇都宮市におけるLRTを巡る状況について説明を行っている。
国交省は2006年に「LRTプロジェクト」を立ち上げ、従来はバラバラだった都市・道路・交通の対応を一本化して導入を後押ししている。
しかし、今までのところ実際に利用したのは富山市だけに留まっている。
全国各地の都市でLRT導入構想が持ち上がっているのに実現に結びつかないで足踏みしているのは、バス会社の反発など自治体内での合意形成が遅れているため。
国交省は「地元がまとまれば全面支援」という姿勢で、万全の支援体制は既に整っている。
宇都宮はLRT導入が決まれば「完全に一からの整備」となり、これまで路面電車が走っていなかった都市としての先進事例となるために、各方面からの注目度は極めて高い。
従来は慎重姿勢だった栃木県も、ここに来て積極的に。 県知事も知事選の公約に「LRTなどを踏まえた公共交通体系の充実」を初めて盛り込んだ。
ただ県も現時点では「宇都宮市がLRT計画を正式決定しないと何も始まらない」という姿勢で、宇都宮における議論の行方を注意深く見守っている。
【第4回の記事内容について思うこと】
栃木県が「宇都宮市の動き次第」としているのは、県が及び腰だから、ではありません。
LRT導入に必要となる「地域公共交通総合連携計画」を連絡・調整する「協議会」は市町村が主体となって立ち上げるもので、交通事業者・道路管理者・利用者・学識経験者等と組織するものであるからです。
この「協議会」が決めた「計画」は、都道府県(宇都宮の場合は栃木県)を介さず、直接国交省に提出することになっています。
つまり、宇都宮の場合は市が主体になって、関東自動車など交通事業者や警察や市民団体や学識経験者等と「協議会」を組織して、国交省に「計画」を提出すればLRT導入は本決まりとなります。
国も県も全面支持の状態なので、決まれば動きは早いのです。
栃木県では、2000年~2004年の県知事が「無駄な公共事業は凍結」としてLRT反対を唱えたため、導入に向けた動きが一度頓挫してしまったという不幸がありました。
このときの知事は、再選を狙う2004年の県知事選にあたり、「橋を架ければ渋滞は解消する」から「LRTはいらない」という主旨の発言を繰り返したのですが、大差で落選。
そのとき当選したのが、2004年まで宇都宮市長だった福田富一氏でした。
この「空白の4年間」でLRTの話は数年分は後退してしまったようにも思えます。
この空白期間がなければ、当初予定の2010年10月10日にLRT導入が実現していたかも知れません。
しかし、上下分離方式の導入など、2000年~2004年当時はまだ諸状況が整いきった状況ではなかったことを考えると、導入の賛否を巡る市長選が2012年になったこと自体は、LRTに関して言えば「良かった」と言うこともできるかも知れません。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも当方(管理人)自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、当方(管理人)自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
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