下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第8回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第8回の概要】2012年11月3日(土)掲載
■筑波大大学院・谷口守教授へのインタビュー
連載最終回は、公共交通の視点から国内外のまちづくりを研究する筑波大学大学院の谷口守教授へのインタビュー。
(注:連載最終回に谷口教授の話を持ってきたという点は、これまでの下野新聞の姿勢を考えると驚嘆に値する)
高度成長期以降、クルマ依存の進行(悪化)と路面電車廃止が相次いだが、高度成長が終わり高齢者など交通弱者が増加、交通とまちづくりを共に考える世の中になった。
うまく交通とまちづくりの構造転換を実現できた都市はLRTを導入しているため、LRTに注目が集まっている。
LRTがBRTより優位なのは、基本的にLRTの方がまちづくりにリンクするから。
ただし「便利なLRT」を整備することが重要で、運行頻度が30分ごとと低かったり、運賃が高いとか、使いにくいとかではダメだ。
(注:やるなら本格的に整備して、質の高いサービスを提供することが重要だということ)
ドイツのカールスルーエは人口20万都市だが、LRTは総延長120kmの区間で運転している。
どんな場所でも10分間隔で運行しているから乗降客も多い。
運賃収入で賄っているのは経費の6〜7割で、残りは公的資金を投入している。
▲ ドイツのカールスルーエのトラム。路面軌道を走っていた列車がそのまま鉄道路線に乗り入れる「トラムトレイン」の先進都市です(停留所のバリアフリー対策はまだ改善の余地があるようですね)。宇都宮にLRT導入が実現した場合、LRT区間から東武宇都宮線やJR日光線、JR烏山線、JR宇都宮線に直通するような感じです。
導入反対派は赤字を問題視するが、サービス水準が悪ければ利用者が増えず、赤字になるのは当然。
また、赤字を減らそうと運行頻度を下げれば余計赤字体質になっていく点にも注意が必要だ。
高度成長期以降、過剰に独立採算を求める論理があるが、今後は地域の足をどう支えるかの観点が重要となる。
全国でLRT導入が足踏み状態なのは、首長の影響が大きい。
富山市では市長が「私の独断でやります」と宣言してローカル線をLRT転換し、「それが間違いなら選挙で落として」という姿勢だった。
日本ではまだこういう首長が少ない。
谷口教授から宇都宮へのアドバイス。
「札幌、仙台に次いで宇都宮があり、周辺都市より『ワンランク上』の都市なのに、市民の足=公共交通が弱い。公共交通は都市の『格』を表す。街なかに鉄軌道があってしかるべきだと思う」
【第8回の記事内容について思うこと】
筑波大の谷口教授が指摘するように、宇都宮の弱点は「市域内の公共交通が弱い」ことです。
東北新幹線やJR宇都宮線という都市間輸送の強い軸があるにも関わらず、JR宇都宮駅から市内各方面に向かう二次交通が弱いため「まちのポテンシャル」をほとんど活かせていません。
(路線バスはたくさん走っていますが、一般道を走るので時間が読めないし、余所から来た人にとっては路線バスがたくさんありすぎると「どれに乗っていいか分からない」状態になり、分かりにくい)
▲ スイス・バーゼルのトラム。人口は約16.6万人。旧来からの路面電車をLRT化している都市です。
不幸なのは、地元でしか生活したことがない人の多くはこの弱点に気付いていないか、目を背けているということ。
むしろ周辺地域や余所から来た人の方が、この点を敏感に感じ取っています。
今後の宇都宮の発展は、公共交通ネットワーク拡充が鍵となります。
▲ 米国・ヒューストンのLRT。人口は約210万人。「クルマ社会の権化」とでもいうべき米国でも、過度なクルマ依存への反省から都市計画の見直しが行われ、多数の都市にLRTが開業。都市内交通に変革をもたらしています。
下野新聞「LRTを問う」全8回を読んで、LRTに懐疑的な記事一辺倒だった同紙も、公共交通を取り巻く現在の諸状況を取材し、従来の論調の誤りに気付いたのかなと感じます。
財政状況は全国屈指の健全さを誇るものの、クルマがないと移動に困る都市構造なのに渋滞多発で移動がままならない50万都市・宇都宮が、長期戦略に基づいた新しいまちづくりを推進することに期待します。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■筑波大大学院・谷口守教授へのインタビュー
連載最終回は、公共交通の視点から国内外のまちづくりを研究する筑波大学大学院の谷口守教授へのインタビュー。
(注:連載最終回に谷口教授の話を持ってきたという点は、これまでの下野新聞の姿勢を考えると驚嘆に値する)
高度成長期以降、クルマ依存の進行(悪化)と路面電車廃止が相次いだが、高度成長が終わり高齢者など交通弱者が増加、交通とまちづくりを共に考える世の中になった。
うまく交通とまちづくりの構造転換を実現できた都市はLRTを導入しているため、LRTに注目が集まっている。
LRTがBRTより優位なのは、基本的にLRTの方がまちづくりにリンクするから。
ただし「便利なLRT」を整備することが重要で、運行頻度が30分ごとと低かったり、運賃が高いとか、使いにくいとかではダメだ。
(注:やるなら本格的に整備して、質の高いサービスを提供することが重要だということ)
ドイツのカールスルーエは人口20万都市だが、LRTは総延長120kmの区間で運転している。
どんな場所でも10分間隔で運行しているから乗降客も多い。
運賃収入で賄っているのは経費の6〜7割で、残りは公的資金を投入している。
▲ ドイツのカールスルーエのトラム。路面軌道を走っていた列車がそのまま鉄道路線に乗り入れる「トラムトレイン」の先進都市です(停留所のバリアフリー対策はまだ改善の余地があるようですね)。宇都宮にLRT導入が実現した場合、LRT区間から東武宇都宮線やJR日光線、JR烏山線、JR宇都宮線に直通するような感じです。
導入反対派は赤字を問題視するが、サービス水準が悪ければ利用者が増えず、赤字になるのは当然。
また、赤字を減らそうと運行頻度を下げれば余計赤字体質になっていく点にも注意が必要だ。
高度成長期以降、過剰に独立採算を求める論理があるが、今後は地域の足をどう支えるかの観点が重要となる。
全国でLRT導入が足踏み状態なのは、首長の影響が大きい。
富山市では市長が「私の独断でやります」と宣言してローカル線をLRT転換し、「それが間違いなら選挙で落として」という姿勢だった。
日本ではまだこういう首長が少ない。
谷口教授から宇都宮へのアドバイス。
「札幌、仙台に次いで宇都宮があり、周辺都市より『ワンランク上』の都市なのに、市民の足=公共交通が弱い。公共交通は都市の『格』を表す。街なかに鉄軌道があってしかるべきだと思う」
【第8回の記事内容について思うこと】
筑波大の谷口教授が指摘するように、宇都宮の弱点は「市域内の公共交通が弱い」ことです。
東北新幹線やJR宇都宮線という都市間輸送の強い軸があるにも関わらず、JR宇都宮駅から市内各方面に向かう二次交通が弱いため「まちのポテンシャル」をほとんど活かせていません。
(路線バスはたくさん走っていますが、一般道を走るので時間が読めないし、余所から来た人にとっては路線バスがたくさんありすぎると「どれに乗っていいか分からない」状態になり、分かりにくい)
▲ スイス・バーゼルのトラム。人口は約16.6万人。旧来からの路面電車をLRT化している都市です。
不幸なのは、地元でしか生活したことがない人の多くはこの弱点に気付いていないか、目を背けているということ。
むしろ周辺地域や余所から来た人の方が、この点を敏感に感じ取っています。
今後の宇都宮の発展は、公共交通ネットワーク拡充が鍵となります。
▲ 米国・ヒューストンのLRT。人口は約210万人。「クルマ社会の権化」とでもいうべき米国でも、過度なクルマ依存への反省から都市計画の見直しが行われ、多数の都市にLRTが開業。都市内交通に変革をもたらしています。
下野新聞「LRTを問う」全8回を読んで、LRTに懐疑的な記事一辺倒だった同紙も、公共交通を取り巻く現在の諸状況を取材し、従来の論調の誤りに気付いたのかなと感じます。
財政状況は全国屈指の健全さを誇るものの、クルマがないと移動に困る都市構造なのに渋滞多発で移動がままならない50万都市・宇都宮が、長期戦略に基づいた新しいまちづくりを推進することに期待します。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
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男性
趣味:
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「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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・ご連絡&お問い合わせメールアドレス
nal@sainet.or.jp(←「@」を半角文字にしてお送りください)
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