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下館レイル倶楽部

真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)

カテゴリー「【特集:宇都宮LRT】」の記事一覧

【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第7回について

【第7回の概要】2012年11月2日(金)掲載

■連合栃木の主張

 連載第7回は、「連合栃木」(民主党栃木県連の支持母体)の小林英樹副事務局長へのインタビュー。

 連合栃木は「LRT反対」を栃木県に申し入れたが、その理由について「宇都宮のバス利用者は1日20,000人なので、LRTを導入してもペイしない。運営はどうせ赤字続きになるはずで、行政の財政負担が必至となる。LRTは採算度外視で公共事業をやるのが目的としか思えない」と説明。
 さらに「LRTは朝夕は通勤で利用しても、日中はガラガラになるだろう。宇都宮は日光のように市電が走っていなかったから、初期投資は400億では済まなくなる。LRTそのものは悪くないが宇都宮には合わない」……のだそうだ。


▲ フランス・グルノーブルのLRT。フランスでは「移動の自由」が基本的人権の一つと考えられていて、公共交通は公的に下支えするという考え方が広く定着しています。日本もその方向にシフトすべきで、従来のような目先の採算性に固執すべきではありません。

 下野新聞から、LRTよりもBRTの方が優れているのかという問いには、「連合栃木としては具体的にBRTが良いと言及してはいないが、LRTよりは優れていると考えていて、バスなど既存の公共交通を活用し、バスを核にしてタクシーや自転車と結びつければよいと考えている」とのこと。
 LRTは「乗り換えが必要で、高齢者向きではない」とも考えているそうだ。

 既存の路線バスが行政から多大な補助を受けている点について連合栃木は、「赤字だから廃止では市民生活に影響が出るから一定程度必要だ。LRTは新規投資で赤字だから大問題で、今の路線バスとは違う」と話す。

連合栃木が指示する民主党県連もLRT反対なのに、候補を擁立できなかったことについては、「結果的にLRTを対立軸にできなかったが、いよいよ導入に向け動き出したら住民投票という手もある」とのこと。


【第7回の記事内容について思うこと】

 11月1日(金)に行われた市長選立候補予定者による公開討論会で、新人候補が「LRTの初期投資400億」(市が公表しているのは約380億円)と発言していたのですが、どうやらこの数字は連合栃木が出所のようです。
 また、国の支援が抜本的に拡充しているのを考慮していない点や、導入による波及効果を考慮していない点、「住民投票という手もある」と言及している点も、連合栃木の主張と合致します。

 連合栃木も民主党栃木県連も独自候補を擁立しなかったわけですから、後になってこういうことを発言するのはどうかな、と思うわけなんですが……。
 (市長選で市の方針を決めるわけですから、それこそが住民投票なのではないかと愚考します/選挙にしても住民投票にしても、実施すれば多額の税金がかかります!!)

 参考までに、民主党も国政ではLRT推進の立場で、そもそもLRT導入推進を求める動きは与野党を問わず政党横断的であることを指摘しておきます。

 今回の記事でも明らかですが、連合栃木は現状の路線バスが機能不全に陥っている点を完全に無視しているようです。
 機能不全に陥っている交通機関に対し、抜本的な構造改善を行わないまま、「廃止されたら大変だ」と公的支援を注入し続けるだけでは、事態は改善する道理がなく、ジリ貧傾向を続けるだけです。

 また、「乗り換えがあると高齢者には優しくない」と主張していますが、路線バスとタクシーを組み合わせたところで乗り換えがあるのは同じことですから、この主張は明らかにおかしいと言えます。
 LRTは、導入する車両が100%低床である場合も部分低床である場合もありますが、車両の出入り口と停留所のホーム面の高低差も隙間も少なく、バリアフリー面で極めて優れている交通機関です。

 「日中はガラガラ」という話も、都市部の鉄道路線でもオフピーク時になればピーク時よりも利用者が減って、大半の乗客は着座でき、立っている客は少なくなります。
 JR宇都宮線(特に小金井以南)を見ても日中は「ガラガラ」ですが、それを無駄というのは暴論で、頻繁に列車が走っていればこそ「待たずに乗れる」から「鉄道を使おう」を思うわけです。これは「乗車の機会性が高い」状態です。
 運転本数が減れば減るほど、この魅力が失われていくということは、体感的にご理解いただけるのではないでしょうか。

 さらに、連合栃木の見解では「宇都宮は日光のように市電が走っていなかった」から初期投資が大幅に上回るということなんですが、これは全く論理的ではないですね。
 では逆に、日光のように市電が走った経験がある都市なら、安価にLRT整備が可能なのか、という話にもなります。
 (注:私自身は、日光市内にもLRTを整備して、観光客がクルマを使わずにも日光に来て観光できると、今まで以上に観光客を誘致できるものと考えています)

 今回の記事を見る限り、連合栃木には本気で公共交通の利便性を高めるという理念や戦略があるとは感じることができませんでした。
 過度なクルマ依存状態がこのまま続いても良い、というふうにも解釈できてしまいます。

 連合栃木が反対する理由が「LRTを導入すると路線バス縮小だから」程度の認識に由来するなら、とんでもない勉強不足です。
 なぜなら、「LRTを導入して終わり」という話ではなく、LRTと既存の鉄道各線との連携、路線バス・コミュニティバド・デマンド交通の再編を含めた拡充が不可欠となり、「バスはなくならない」どころか「ますます重要になる」からです。
 宇都宮市もそろそろ一歩踏み込んで、「バス運転手の雇用機会は守る」方針を明示すべき段階なのかも知れませんね。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第6回について

【第6回の概要】2012年11月1日(木)掲載

■議論:市は「受益」示しきれず

 JR宇都宮駅東口と清原工業団地を結ぶ幹線道路は、平日だと朝は2時間以上も大渋滞が発生する。
 清原工業団地に通勤する男性は、LRTは「計画に具体性がないから、現実感がわかない」と語る。
 JR宇都宮駅東口から、会社が自費運行するシャトルバスに乗ると、会社までの所要1時間、読書で時間つぶししているという。

 渋滞を少しでも緩和させようと、企業はシャトルバスの運行を行っているが、これには年間数億円を要している。
 佐藤市長は、不況で各社の収益が悪化する中、シャトルバスの運行経費が重荷となった企業は、(公共交通が整ったもっと便利な土地に)移転してしまうと危機感を募らし、LRT導入を訴える。

 栃木県と宇都宮市が2003年に行った試算では、LRT導入による移動短縮効果は1日約3,700時間、金額に換算すると年間約32億円の節約になるという。
 このように、極めて大きな受益をもたらすことが見込まれているものの、それが市民には十分伝わっているとは言いがたいのが現状で、「市には1,280億円の負債がある」という点を理由に導入に反対する市民もいる。

 宇都宮市長も宇都宮市も、LRT導入に関する初期費用(約380億円)の内、1/2は国が、1/4は県が負担するので、市の負担は1/4(約95億円)と再三説明している。
 しかし、反対する一部市民との溝は埋まらない(注:そもそも聞く耳を持っていないのでは?)。

 LRT導入を推進し、市域内の公共交通ネットワークについて考える市民団体「雷都レールとちぎ」の奥備一彦代表は、反対する人の理由はいつも「赤字だから」「家のそばを通らないから」ばかりだと指摘。
 街の魅力向上、環境負荷軽減効果などの波及効果は無視され、ハコモノ公共事業と同列に語られてきたことを嘆く。

 一方で奥備代表は、情報を十分提示できなかった市にも責任があるとも語る。
 宇都宮の将来に期待しているだけに、忸怩たる思いが滲む。

 LRT構想は渡辺文雄知事が打ち出して約20年。
 これを「是とするのか非とするのか」決める市長選が迫る。


【第6回の記事内容について思うこと】

 この「是とするのか非とするのか」という下野新聞の報じ方、これが市民をミスリードする最大の要因だったのかも知れません。
 LRT導入へのハードルがここ数年で相当下がったことを踏まえたうえで、「東西基幹交通としてLRTが適しているかどうか」ならまだ理解できるのですが……。


▲ 米国オレゴン州のポートランド。米国における先進事例の一つで、宇都宮でも参考にしているだろうと思います。LRTと路線バスがうまく連携しています。

 これまで宇都宮市が具体的な計画を示せなかった背景には、既存のバス会社への配慮や、「公共事業は何でも凍結」と言いながら「清原方面の渋滞は新しい橋を作れば解消する」と支離滅裂な発言に終始した、前の県知事に振り回されたこともあるのではないかと推察します。
 今の県知事は、支離滅裂な前知事時代には宇都宮市長だった人物で、このままでは埒があかないと知事選に出馬し、現職を大差で破り当選しています。
 とはいえ、LRTを取り巻く環境はその頃からかなり流動的ではあったので、市も大変だっただろうなあ……と。

 「公共事業が全て悪」というのは暴論だと思います。
 地域の公共交通など、投資効果があるもの(または適切な投資が必要なもの)には「きちんと投資する」(ただし浪費にならないよう監視する)のが本筋だろうと考えます。
 交通不便地域に人・物・金は集まりませんから、これは極めて重要な視点です。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第5回について

栃木県下最大の地方新聞「下野新聞」では、2012年10月27日(土)~11月3日(土)の8日間に渡って、LRT導入を巡る是非についての連載記事「LRTを問う」を掲載しました。


【第5回の概要】2012年10月31日(水)掲載

■BRT:コスト安いが課題も

 名古屋では市内に張り巡らされていた市電が「渋滞の元凶」として全廃され、代わりに地下鉄が整備された。
 しかし、地下鉄だけでは市電を代替しきれず、地下鉄を補完する交通機関として「基幹バス」が整備された。
 基幹バスは8路線の整備を予定していたものの、実際には2路線だけの整備に留まっている。

 基幹バスには走行レーンがあり、平日朝夕ラッシュ時はバス専用となっている。
 しかし、カラー舗装のみで物理的に区分しているわけではないため、一般車の侵入が後を絶たない(LRTは軌道法で一般車の侵入を禁止している)。
 また、ラッシュ時にはバス数珠つなぎ現象が発生するうえ、車内が混雑してくると料金支払いが混乱するなど、問題も多い。

 名古屋の基幹バスは、関東自動車が「コスト面で優位」と主張したBRT(バス・ラピッド・トランジット)に近く(?)、名古屋の新出来町線はカラー舗装や屋根付き停留所など、初期投資は1kmあたり2.4億円程度。
 参考までに、全線高架路線を走る「ガイドウェイバス」は6.8kmで380億円の整備費がかかっている。

 新潟では、2年後に都心部のBRTを整備する計画がある。
 新潟駅高架下の交通広場完成に目処がつく10年後には、LRTへの転換を検討する予定となっている。

 走行性に優れたLRT、安上がりで済むBRT。
 どちらを選ぶかは「基準をどこに置くかで判断は分かれる」。


【第5回の記事内容について思うこと】

 まず、大きな誤解を招く記述があるので明記しますが、「BRTが安い」とは一概に言えないという点に注意が必要です。
 BRTの初期投資は「インフラの質」で変わり、その質によって投資額が安くもなればLRT以上に高くつくことがあるのです。

 また、「BRT=連接バス」ではない点も注意が必要です。
 BRTというのは(LRTと同様)「システムの名称」であって、車両が連接かどうかは、実は直接的には関係ないのです。

 建設費については、LRTの場合は、軌道を敷設する必要があるため、ある程度投資額が読めます。
 一方BRTについては、実はまだ「これがBRTです」という標準的な例がないため、明確に「○km整備すると○○億円です」といった数字が出しにくい状況があります。
 走行レーンのカラー舗装程度で済ますのか、専用走行空間を確保するかでも変わります。
 専用走行空間を確保するのであれば、費用的にはLRTと大差なくなります。


▲ 中国・広州市のBRT。専用空間の確保だけにとどまらず、なんと新幹線の駅のような追い抜き線まで備えた、とんでもなく豪勢なインフラを整備しています。おそらく、ここまでやるならLRTで長編成を走らせる方がはるかに安価で済むし、輸送力も大きくできる筈です。

 また、運行経費はバスの方が高く、定時運行性・速達性・将来確実性・シンボル性はLRTが相当に優位である点にも注意が必要です。
 鉄軌道は摩擦係数が低い鉄のレールを走るので、摩擦係数が高いゴムタイヤのバスに比べると、それだけでもかなり優位なのです。
 「バスは安い」というのは、あくまでも初期投資だけの話なんです。

 また、「1人の運転士で何人のお客さんを運べるか」という見方もあります。
 交通事業の経費の内、人件費が占める割合というのは実はかなり大きいので重要なポイントです。

 もし連接バスを使用する場合、導入価格は7,000~8,000万円で、車両寿命は8~10年。1台あたりの輸送力は路線バスの1.5倍程度です。
 LRV(ライト・レール・ヴィークル/LRT用の車両)は、導入価格は2~3億円で、車両寿命は30年以上。1編成あたりの輸送力は路線バスの2倍(富山「ポートラム」)~3倍(広島「グリーンムーバー」)で、もし欧米のような併結運転を行うなら、2編成併結で4~6倍、3編成併結だと6~9倍となります。

 輸送力の差は、(1)導入する車両の数と、(2)雇用する運転士の数に関連してきます。
 輸送力が大きい(大きくするのが容易な)LRTは、運転士の数をかなり減らせますが、BRTはそこまでは減らせず、路線バスだとかなり多くの運転士を雇用する必要があります。
 「コミュニティバスをたくさん走らせればLRTを導入しなくて良いんだ」なんて話も出るようですが、コミュニティバスの輸送力は路線バスの半分以下ですので、人件費は路線バスの2倍、LRTの4~6倍(LRV2編成併結の場合の8~12倍、3編成併結の場合の12~18倍)に膨らみます。
 (注:コミュニティバスは必要で重要な交通モードですが、輸送需要に見合った運行ルートを検討することが大切です)

 上の例でも分かると思いますが、この点でもLRTが一概に「高い」ともいえないし、BRTが一概に「安い」ともいえないのだ、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。


 そもそも論なんですが、「LRTかBRTか」的な二択は「ナンセンス」ではあります。
 というのも、輸送需要や地域特性などに応じて「LRTもBRTも路線バスもコミバスもデマンド交通も」というのが本筋であるからです。
 「このルートにはどの交通モードが適しているのか」という議論を冷静に行っていくことこそが、市全体の利益に繋がっていくものと思います。
 宇都宮の場合、東西基幹交通としては輸送力が大きく、シンボル性が高く、インパクトも絶大で、将来東武鉄道やJR線などへの直通運転も視野に入れればLRTこそ最適だと私は考えているのですが、「BRTに適した地域はないのか」と問われれば「あると思います」というのがお答えになります。

 また、交通機関に限った話ではないのですが、「初期投資が安い=将来負担も少ない」ではない点にも注意が必要です。
 たとえば、ランニングコストが割高な身近な例としては、インクジェットプリンターが挙げられます。本体価格は相当激安なんですが、インク代はかなり割高です。
 交通機関も同様で、しかも何十年単位で使っていくものですから、イニシャルコスト(初期費用)よりも、むしろランニングコスト(維持管理費用)にこそ注目すべきであるといえます。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第4回について

【第4回の概要】2012年10月30日(火)掲載

■支援:国、県は市の計画待ち

 宇都宮市交通政策課の職員は、国土交通省の都市局に度々足を運び、宇都宮市におけるLRTを巡る状況について説明を行っている。

 国交省は2006年に「LRTプロジェクト」を立ち上げ、従来はバラバラだった都市・道路・交通の対応を一本化して導入を後押ししている。
 しかし、今までのところ実際に利用したのは富山市だけに留まっている。

 全国各地の都市でLRT導入構想が持ち上がっているのに実現に結びつかないで足踏みしているのは、バス会社の反発など自治体内での合意形成が遅れているため。
 国交省は「地元がまとまれば全面支援」という姿勢で、万全の支援体制は既に整っている。
 宇都宮はLRT導入が決まれば「完全に一からの整備」となり、これまで路面電車が走っていなかった都市としての先進事例となるために、各方面からの注目度は極めて高い。

 従来は慎重姿勢だった栃木県も、ここに来て積極的に。 県知事も知事選の公約に「LRTなどを踏まえた公共交通体系の充実」を初めて盛り込んだ。
 ただ県も現時点では「宇都宮市がLRT計画を正式決定しないと何も始まらない」という姿勢で、宇都宮における議論の行方を注意深く見守っている。


【第4回の記事内容について思うこと】

 栃木県が「宇都宮市の動き次第」としているのは、県が及び腰だから、ではありません。
 LRT導入に必要となる「地域公共交通総合連携計画」を連絡・調整する「協議会」は市町村が主体となって立ち上げるもので、交通事業者・道路管理者・利用者・学識経験者等と組織するものであるからです。

 この「協議会」が決めた「計画」は、都道府県(宇都宮の場合は栃木県)を介さず、直接国交省に提出することになっています。
 つまり、宇都宮の場合は市が主体になって、関東自動車など交通事業者や警察や市民団体や学識経験者等と「協議会」を組織して、国交省に「計画」を提出すればLRT導入は本決まりとなります。
 国も県も全面支持の状態なので、決まれば動きは早いのです。

 栃木県では、2000年~2004年の県知事が「無駄な公共事業は凍結」としてLRT反対を唱えたため、導入に向けた動きが一度頓挫してしまったという不幸がありました。
 このときの知事は、再選を狙う2004年の県知事選にあたり、「橋を架ければ渋滞は解消する」から「LRTはいらない」という主旨の発言を繰り返したのですが、大差で落選。
 そのとき当選したのが、2004年まで宇都宮市長だった福田富一氏でした。

 この「空白の4年間」でLRTの話は数年分は後退してしまったようにも思えます。
 この空白期間がなければ、当初予定の2010年10月10日にLRT導入が実現していたかも知れません。
 しかし、上下分離方式の導入など、2000年~2004年当時はまだ諸状況が整いきった状況ではなかったことを考えると、導入の賛否を巡る市長選が2012年になったこと自体は、LRTに関して言えば「良かった」と言うこともできるかも知れません。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第3回について

【第3回の概要】2012年10月29日(月)掲載

■便利なICカード導入が重要

 宇都宮市では、郊外部で「地域内交通」が6路線運行を開始している。
 清原地区の「さきがけ号」のようなジャンボタクシー(バスタイプのワンボックスカー)を使う例や、普通のタクシーを使用するケースもある。
 これらは、今後超高齢社会となり「交通弱者」が増加することを見越して、従来は路線バス空白地帯だったエリアをカバーするもの。
 宇都宮市の構想では、LRTを東西基幹交通を「幹」として導入し、既存の鉄道路線と結節したうえで、「幹」から伸びる「枝」として路線バスや地域内交通をつなげて有機的に連携させることで、クルマを使わずに市内を移動できるネットワーク構想を温めている。

 宇都宮市の公共交通ネットワーク構想実現のためのカギは「ICカードの導入」。
 鉄道・LRT・バスが1枚のカードで乗降できるうえ、乗降時間の短縮、ワンマンで対応しやすくなる。

■いわゆる「採算性」の問題

 LRT導入を巡る議論で必ず問題とされるのが、いわゆる「採算性」の問題。
 中心部と郊外の住民の温度差があり、反対派は「そんなに乗らないから赤字必至」と主張し、推進派は「導入による相乗効果を考慮すべきで、赤字黒字の問題ではない」と主張する。

 市域全体の公共交通ネットワーク整備のため、どうやって市民の理解を得ていくかが大きなテーマだ。


【第3回の記事内容について思うこと】

 いわゆる「採算性」からの反対論は、そもそも初期投資額だけを見て「高い!!」と思考停止に陥ってしまっているような印象が強く、また最近になって導入可能になった「上下分離方式」を考慮していない(知らない?)場合が多いように感じます。
 つまり、たとえ「公共」交通であっても、旧来のように厳格な独立採算制を前提とした考え方が根っこにあって、「1円でも支出が収入を上回ったら赤字だ!!」という主旨のように感じます。
 目先の収支だけを見ればそういう面があることが確かですが、それでは利便性が高い公共交通が整備されることに伴うさまざまなメリットや税収増、経済波及効果などが一切考慮されないことになってしまいます。
 そもそも論として、本来公共交通を事業採算性だけで論じるのは極めてナンセンスであると言えます。

 また、「どうせそんなに乗らない!!」という意見も、採算性の話と絡めて出てきがちです。
 参考までに、2003年時点では44,500人/日(注:往復の数字なので、実質22,450人/日)が利用すれば十分ペイするという試算がありました。
 2007年には「上下分離方式」が導入できるようになったことにより、採算ラインはさらに引き下がり、33,000人/日(注:往復の数字なので、実質16,500人/日)でペイするとの試算があります。
 人口50万人、都市圏人口だと100万人に達しようという宇都宮で、東西基幹交通が片道16,500人/日を上回らないということがあるのでしょうか。

 LRT導入を巡る議論(主張)では、とかく初期投資額だけが注目されますが、「導入する場合の利益」と、「導入しない場合の不利益」も考慮すべきです。
 LRTは「沿線以外にはメリットがないから」という否定的な意見があるのですが、元々宇都宮市の計画ではLRTを1本通して終わりという話ではなく、LRTを軸として整備し、これまでは公共交通空白地帯だったエリアにも新規バス路線やデマンド交通を設定して、市域全体の利便性を向上する構想であるという点を見落としがちのようです。

 軌道系交通機関にして、とてもオシャレな交通機関でもあるLRTを導入することによる投資促進効果やイメージアップ効果が大きい点は、国内では「前例」となる先進事例がまだないこともあって、なかなか注目されない傾向にあります。
 しかし、導入ルートがよっぽど変でない限り、公共交通の利便性が向上すれば新たな事業所と従業員(とその家族)を呼び込めますし、便利な街で暮らしたい層を呼び込むことも可能ですので、税収増、経済波及効果が大きい点などは見逃すべきではありません。


 参考までに、第2回でも掲載したのですが、昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)での栃木県知事の説明を再掲します。


 宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
 そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
 (本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)

 ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります


 あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第2回について

【第2回の概要】2012年10月28日(日)掲載

■宇都宮:民間との信頼を築けるか

 10月上旬、宇都宮の佐藤栄一市長と関東自動車の松本順会長は公共交通ネットワーク構想について意見交換を行った。
 関東自動車は、従来はLRT反対の立場であったが、松本会長も市の構想の必要性は理解したとのこと。
 従来は頑なに交渉を拒絶してきた同社だったが、今春経営陣が変わって現実的な対応に変化したようだ。

 栃木県と宇都宮市は、2003年に公表した「新交通システムの導入を目指す調査報告書」でLRTの優位性を示した。
 LRT導入ルートは、清原地区「テクノポリスセンター」~JR宇都宮駅東口の約12kmと、JR宇都宮駅西口~桜通り十文字の約3kmの、約15km。
 当初見込みでは、軌道・施設・車両などで初期投資は「約355億円」。当時はまだ上下分離方式を導入できなかったので、ペイラインは「44,900人/日」(注:延べ人数なので、大半の利用者が往復すると考えれば実質「22,450人/日」と考えて良い)と試算された。

 2007年に「地域公共交通活性化・再生法」が施行され、LRTを取り巻く環境が劇的に好転。
 LRT整備にも「公設型上下民営方式」が適用できるようになり、運行主体となる交通事業者の負担が大幅に下がった(つまり、軌道や施設、車両などの初期投資を運行主体である民間事業者が負担しなくて良くなった)。この変化は極めて重要だ。
 富山の路面電車環状線「セントラム」は、全国で初めて上下分離方式を用いて整備を行い、総事業費(約30億円)は国と富山市が負担。

 もちろん、整備が容易になったからといっても、交通事業者の理解と協力を得ることが重要で、運行形態、ダイヤ設定、既存の交通モードと競合しないような調整などが欠かせない。


【第2回の記事内容について思うこと】

 関東自動車はLRT導入後の有力な運行主体の一つでもあるので、同社が交渉に応じる姿勢に転じたのは注目に値します。
 というのも、従来最大の対立点と見られてきたJR宇都宮駅西口〜東武宇都宮駅間の「ドル箱」区間の扱いについて、市と事業者の調整次第は対立関係が抜本的に解消する可能性が出てきたからです。

 私見ですが、関東自動車がLRT導入に反対していたのは、「LRTが通ると、路線バスのドル箱区間で競合関係になる」からで、その結果「会社の経営が悪化して運転士の解雇が発生する恐れがある」と感じていたためではないかと思います。
 逆に言えば、雇用機会が確保され、ドル箱区間の利害調整が済めば、関東自動車としては特に大きな懸念材料がないため、対立する理由がなくなるということでもあります。

 大都市部ではともかく、今後地方では中核都市においても公共交通ネットワーク維持・拡充のため、自治体が積極的に関与することになっていくと思います。
 その際、既存の民間事業者と競合関係にならないように、事前に調整を行うことがますます重要性を増していきます。
 欧州のように、自治体と民間業者が共同出資して、市域全体の公共交通を一括運行する「運輸連合」のような運行主体を作り、民間企業が運行していた既存路線も新運行主体に人員・設備・車両もろとも移管する、というケースも検討することになっていくのかも知れません。

 なお、「下野新聞」の記事では一切触れていない重要な点として、上下分離方式を導入するとペイラインはかなり下がるということを指摘しておきます。
 昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)で、栃木県知事は次のような説明を行っています。


 宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
 そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
 (本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)

 ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります


 あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。
 ご参考になれば幸いです。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第1回について

【第1回の概要】2012年10月27日(土)掲載

■富山:中心部への回帰傾向が進む

 富山市では、中心市街地に路面電車が走っていて、先頃一部新線を建設して環状運転を行う「セントラム」を開業した。
 下野新聞が取材したのは10月8日(祝)午後、電車から降りた主婦は「セントラムは待たずに乗れるから便利。ただ、買い物は郊外が多いから、クルマが便利」と語る。


▲ 富山の「セントラム」。既存の路面電車路線が「コ」の字状になっていた部分に1km弱の新線を建設して「ロ」の字状の環状線としたものです。北陸新幹線開業後は「ポートラム」の電車が乗り入れて来ます。

 富山県は栃木県同様のクルマ社会で、富山市の中心市街地には大規模な立体駐車場もあり、クルマ依存体質が変わったわけではない。
 しかし、中心市街地の百貨店前に軌道(路面電車の線路)と電停(電車の停留所)が整備され、LRTを利用して買い物をする高齢者が増えた。
 LRT沿線では分譲マンションが相次ぎ完成。成約率は首都圏の10倍で、郊外の一戸建て志向が強い富山市民でも中心部への回帰傾向が強まっている。
 2年後の北陸新幹線開業時には富山駅が高架化し、先にローカル線をLRT化して好評の「ポートラム」と、中心街環状線の「セントラム」が接続し、直通運転を予定している。


▲ 富山の「ポートラム」。非電化のローカル線をLRT化し、従来は日中60分ごとだった運行頻度を15分ごとに向上させるなど、利便性は大きく向上しています。

 宇都宮市も、過度なクルマ依存からの脱却、中心市街地の活性化、まちなか居住人口の創出などが課題となっている。
 富山市は、LRT整備など公共交通網の整備には財政出動を厭わない姿勢で取り組んでいる。富山市の姿勢を富山市民がどう評価するか、「宇都宮の注目点もそこにある」。


【第1回の記事内容について思うこと】

 富山の事例は、日本でなかなか進まなかったLRT導入がやっと実現した事例となりました。
 しかし、これは「完全新規のLRT」ではなく、地方の中核都市周辺を走りながら、何十年も前と大差ない低い運行頻度で細々と運行していたローカル線をLRTとして近代化した「既存ローカル線をLRT転換した先進事例」です。
 このため、「富山は既存路線があったからこそ成功した」など、意図的にミスリードの材料として使われてしまうこともあります。

 欧州では1980年代には過度なクルマ依存がもたらしたさまざまな弊害が社会問題となり、都市計画のあり方も見直されることになりました。
 欧州諸国では、旧来の路面電車が存続していた都市で路面電車のLRT化が進み、やがて鉄道路線へも直通運転を行う「トラムトレイン」も走るようになりました。
 また、鉄道・LRT・バスを別個に管轄するのではなく、市域内の公共交通は交通モードの違いがあっても同じ運行主体が一括運営する運行方式が導入され、共通の切符1枚を購入すれば乗り放題といった、利用者本位の運行形態が整備されていきました。


▲ LRTとトラムトレインの先進都市、ドイツのカールスルーエのトラム。中心市街地には極力クルマを乗り入れずに済むような都市計画が行われています。

 これらの公共交通は、日本のような独立採算制ではなく、道路や橋などと同様、軌道や施設などのインフラは税金で整備して、運行主体は運行のみに専念する方法で運行しています。
 全事業費に占める公的支援の割合は5~7割ということも間々ありますが、「社会インフラ維持に必要な投資」として社会的合意を得ています。

 日本では「公共」交通に対しても厳格な独立採算制が要求されるという、世界的に見ても例外的な国策を採ってきたため、海外なら全く問題にならないレベルでも「赤字路線」として廃止されたり、設備や車両の近代化が行えなかったり……と、特に地方の公共交通には厳しい状況が続きました。
 また、海外のような公的支援が一般的ではなかったため、運行経費は全て運賃に上乗せされるため、地方に行けば行くほど運賃が割高になり、「公共交通離れ」がますます悪化し、過度なクルマ依存が進んでしまったといえます。


▲ 市の外縁部を走る環状道路の開通を契機に、LRT導入を軸としてコンパクトなまちづくりを実現したフランスのストラスブール。交通基本法が制定され移動の自由が重要視されるフランスでは、公共交通にはしっかり公的資金を注入して質の高いサービスを提供しています。

 近年になってやっと、日本でも道路などと同じ考え方で公共交通を整備する「公設民営方式」や「上下分離方式」が導入できるようになり、LRTなどの整備は段違いに行いやすくなりつつあります。
 しかし、一度根付いた過度なクルマ依存から、公共交通とクルマの上手な使い分けを実現していくためには、社会的な意識改革が必要です。
 これまで一貫してクルマ最優先で来た日本において、公共交通を重視するという考え方はいわば「交通革命」と呼んで良いような正反対の考え方でもあり、詳しい人はともかく、そうではない人にとっては「未知なるものへの恐怖」は拭いがたく、さまざまな懸念や懐疑的な意見が出てくるのはある種致し方ない面があります。

 新聞やテレビなどのメディアは、交通問題についての社会的な意義をきちんと調べた上で、率先して「こういう考え方や手法がある」などと、新しい考え方を報じて欲しいと思います。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について

「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について

「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について

「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について

「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について

「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について

「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について

「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


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【特集:宇都宮LRT】下野新聞の連載記事「LRTを問う」について

 全国から注目を集める宇都宮市長選挙
 投票日は2012年11月18日(日)です。

 注目を集めているのは、日本で初めて完全新規にLRT(次世代型路面電車システム)の導入が進むかどうかの天王山であるためです。
 (注:LRTの先進事例が数多く存在する欧米諸国でも、LRT導入は「目的」ではなく、あくまでもコンパクトなまちづくりを進める上で「手段」の一つで、この点は宇都宮でも同じようです)
 LRT導入を検討しつつも、「前例がない」ために前に踏み出せない全国各地の諸都市も、宇都宮市長選の行方を固唾を呑んで見守っていることでしょう。


▲ フランス・ミュールーズのLRT。LRT(ライト・レール・トランジット)は路面電車とは全く別次元の交通システムで、LRV(ライト・レール・ヴィークル/LRT用の車両)は実にスタイリッシュです。

 栃木県下最大の新聞「下野新聞」では、10月27日(土)~11月3日(土)まで、LRT導入を巡る是非について8回に渡って連載記事「LRTを問う」を掲載しました。
 これまでLRTには批判的・懐疑的な論調であった同紙がどのような論調を張るのかにも注目が集まりました。

 私自身は宇都宮市民ではありませんが、


・周辺地域に在住し宇都宮にもよく出かける者の一人として、
・過度なクルマ依存から脱却して公共交通とクルマの上手な共存を望む者の一人として、
・今後の地方活性化には公共交通の活用が重要だと考える者の一人として、
・子の世代、孫の世代が将来に渡って「地元に留まり続けたい」と思うような魅力ある地域づくりを願う者の一人として、


 非常に強い関心を抱いています。

 そこで、「下野新聞」に連載された「LRTを問う」各回の概要と、それに対して思うところを書き連ねてみたいと思います。


【連載記事「LRTを問う」について】

「LRTを問う」第1回/富山:中心部への回帰傾向が進むについて
 (下野新聞 2012年10月27日)

「LRTを問う」第2回/宇都宮:民間との信頼を築けるかについて
 (下野新聞 2012年10月28日)

「LRTを問う」第3回/いわゆる「採算性」の問題について
 (下野新聞 2012年10月29日)

「LRTを問う」第4回/支援:国、県は市の計画待ちについて
 (下野新聞 2012年10月30日)

「LRTを問う」第5回/BRT:コスト安いが課題もについて
 (下野新聞 2012年10月31日)

「LRTを問う」第6回/議論:市は「受益」示しきれずについて
 (下野新聞 2012年11月1日)

「LRTを問う」第7回/連合栃木の主張について
 (下野新聞 2012年11月2日)

「LRTを問う」第8回/筑波大大学院・谷口守教授へのインタビューについて
 (下野新聞 2012年11月3日)


 なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。

 記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
 既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。


【参考用URL】

宇都宮都市交通戦略について(宇都宮市 2009年3月)
 ……宇都宮市が考えるネットワーク型コンパクトシティについての詳細が分かります

「新交通システム検討委員会」の検討結果報告(平成19年度から平成20年度)(宇都宮市 2009年3月)
 ……東西基幹交通について、事業・運営方法、施設計画、試算などを記載しています

総務常任委員会委員長報告(宇都宮市議会 会議結果 2012年6月29日)
 ……「宇都宮東部地区の公共交通整備に関する陳情」が全会一致で採択された記述もあります


【当ブログ内の参考記事】

【宇都宮LRT】栃木県知事、県の東西基幹交通はLRTが最適と明言(2011年10月29日)
 ……2011年11月18日に行われた栃木県知事による「第2回 都市交通システム講演会」の模様

【宇都宮LRT】9月の講演会で市長がLRTが軸の公共交通整備の重要性を説明(2011年10月29日)
 ……2011年9月1日に行われた宇都宮市長による「第1回 都市交通システム講演会」の模様

【宇都宮LRT】年度末にも公共交通ネットワーク住民説明会(2010年8月31日)
 ……宇都宮市が2011年に入ってから実施した「住民説明会」について


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