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下館レイル倶楽部

真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)

【DMV】3両編成の状態で報道公開される

 JR北海道が開発中の「デュアル・モード・ヴィークル(DMV)」
 7月にJR北海道「苗穂工場」内の試験線で3両編成となって試運転を行っている様子が目撃されていますが、このたび晴れて報道公開が行われたそうです。

・道路と線路走れる車両、新型は3両編成(「読売新聞」 2010年8月31日)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100831-OYT1T00183.htm


 「デュアル・モード・ヴィークル(DMV)」は、線路と道路の両方を走れるように、車輪とタイヤの両方を備えた車両です。
 ベースはマイクロバスで、線路を走るときは車体前方の車輪を出して、後部のダブルタイヤの内側のタイヤを線路の上面に接地させて、タイやの駆動によって走行します(車体最後尾にも誘導用の車輪が出て、線路上を直進するよう補助します)。
 道路から線路へ乗り換えるときは、専用のモードチェンジ区間をゆっくり前進しながら位置を調整し、前車輪を出すという手順です(車体下面にカメラを装備して、運転士が線路と車輪の位置を確認して容易にモードチェンジが行えるような改良も計画されていると思います)。


 DMVのメリットとしては、


・鉄道と道路の両方を走れる
・線路を走れるので、渋滞にはまらずに済む
・新規に線路を敷かなくても、現在の終点から先は道路で走ることができるので、実質的な路線延伸が行える
・往路は線路、袋は道路という使い分けを行うことで、単線区間でも複線のような高頻度運転を行うことが可能
・導入コストが一般の鉄道車両に比べると大幅に安い
・運行コストも一般の鉄道車両に比べるとかなり低減できる


 というものがあります。

 線路があるところは鉄道車両として最高70km/hで走行でき、線路がないところではバスとして走れるというのは大きなメリットです。
 今回報道公開された試作車を例にすると、駅までは3両編成で線路を走ってきて、駅で1両ずつに分割。駅からは道路に降りて、離れた場所にある学校や病院、団地、公共施設、商業施設などへバスとして走って行くという運用が可能です(当然、その逆も可能)。
 また、線路がない区間は道路を走ることで、実質的な路線延伸が容易に行えるというのも特筆すべき点です。

 導入コストについては、今回の記事ではディーゼルカーの1/4程度とあります。
 一般形のディーゼルカーが1両1億円~1.2億円程度なので、かなりざっくりですが「2,500万円~3,000万円」という辺りでしょうか。
 (しばらく前に「約2,000万円」という数字も出ていたことがあります/現在のベース車両よりも小型の試作車の頃でしたけど)
 ベースとなるマイクロバスは、新車で500万円~800万円程度ですから、結構値が張ります……。

 鉄道車両に比べると小型・軽量で、線路にかかる負担が少なくなりますので、保線費用が低減できると見込まれていて、鉄道車両よりは燃費も良いので燃料費も低減できるものと思います。

 いわゆる「車検」にかかる費用も、鉄道車両よりは安上がりといえます。
 (以前の記事ですが、鉄道車両は440万円、DMVは100万円という数値が出ていたことがあります)。


 ただし、デメリットもあり、


・1両あたりの輸送力が小さいので、積み残しが生じる可能性がある
・鉄道車両よりもエネルギー効率が悪い
・ベースのマイクロバスに比べると重く、導入コストがかさむ
・車両の寿命がよくて15年程度と、鉄道車両の半分程度


 などというものがあります。

 輸送力については、ざっくりですがDMV3~4両でディーゼルカー1両にやっと比肩する程度です。
 ディーゼルカーの車両寿命は約30年ですが、DMVはその半分以下。30年スパンで考えると、ディーゼルカー1両(1~1.2億円)と同等の輸送力を維持するには、30年間で6~8両のDMVを導入する必要がある計算になります(1両2,000万円として、1.2~1.6億円)。
 かなり乱暴な想定ですが、車両の導入費用が大差ない状態になる場合もある、ということです(実際には同等か、同等以下になるでしょうけど)。

 道路も線路も走れる装置を備えているということは、見方を変えれば線路走行時には道路走行に必要な装置がデッドウェイトになり、道路走行時には線路走行に必要な装置がデッドウェイトになっているということでもあります。
 このため、純然たる鉄道車両やマイクロバスに比べるとエネルギーロスの比率が大きいとも言えます。


 このように、DMVは従来の鉄道・バスという枠組みを超えた大きな可能性を秘めた車両であるという一方、数々の制約も抱えているので、決して万能選手ではない、ということは失念してはならないわけです。
 (念のため書き添えておきますと、私自身はDMVの可能性には大きな期待を寄せているし、各地に普及してほしいと願っていますが、だからといって「万事バラ色」ということではないということは踏まえておかないといかんと思っています)



 さて、ここからは話が少々脱線するのですが……。


 DMVの導入を検討している地方路線の中には、全部DMVだと高すぎて購入できない、という場合もあると思います。
 量産効果で価格が下がっていくとしても、1両2,500万円となれば、十分頭数が揃わないという危惧はあります。

 私見ですが、道路への直通運転用の車両としてDMVを、線路専用の車両として「マイクロレールバス」(マイクロバスのタイヤを車輪に履き替えたような簡便な車両)を用意しても良いのではないかと考えています。

 かつてのレールバスは、バス規格のため鉄道車両ほどには車体寿命が持たず、車体が小さいので輸送力に限界があるうえに、総括制御(何両編成であっても、先頭車の運転士が1人で運転できる)が行えないため複数両による連結運転が行えないために廃れた、という歴史がありました。
 (その後、第3セクター鉄道が誕生する頃になり、新世代のレールバスが誕生しています)
 しかし今、マイクロバスがベースのDMVが実用化されようという状況にあり、マイクロバスの鉄道車両化(?)については法的な整備も含めて以前より状況は好転しているといえます。

 車体寿命については、「そういうもの」という前提で割り切っても良いのかも知れません(夜間は野ざらしにせず、必ず「車庫」に格納するようにすることで長保ちさせることはできると思います)。
 また、運転席が前方にしかないままでは、反対方向に走れません(走れるけど、安全上問題がある)ので、鉄道車両のように前後両方向に走れるような対策が必要です。つまり、必要十分な逆転機を装備、反対方向にも走れる運転席を設ければ良い、ということになります。
 全部の車両を「両運転台型」とすれば割高になるでしょうから、「片運転台型」も適宜用意して、従来のディーゼルカーと同じような弾力運用を行うとか、「片運転台型」を背中合わせに2両連結するのを基本ユニットにして、朝夕ラッシュ時は適宜増結するとか、途中まではDMVタイプの車両と連結して、途中駅で分割併合を行うとか……。

 この「マイクロレールバス」の導入コストを1両「1,000万円」程度に抑制できれば、全数をDMVで置き換えるよりかなり現実的な案になりそうな気がします。

 必要な法整備・法改正や、車体強度が鉄道車両ほどではないことに起因する安全対策など、クリアすべき課題は少なからずあるかと思います。
 しかし、「○○だから実現は無理」という発想ではなくて、「これを実現するためには○○が必要だ」という発想で、どうしたらより良い状況になるか考えていく必要があるのではないかと感じています。


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