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下館レイル倶楽部

真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)

【宇都宮LRT】年度末にも公共交通ネットワーク住民説明会

 宇都宮市の公共交通ネットワークを含む公共事業全般の「住民説明会」について、やや動きがありました。
 8月27日の定例記者会見で、佐藤 栄一 宇都宮市長は「年度末または来年度には開催したい」と表明したようです。

・宇都宮市、年度末にもLRT説明会 栃木(「MSN産経」 2010年8月27日)
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tochigi/100829/tcg1008290217002-n1.htm

・公共交通事業で住民に説明会 年度末にも宇都宮市(「下野新聞」 2010年8月28日)
 http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/utsunomiya/news/20100828/373298


 この「住民説明会」を各地で開催した上で、将来を見据えた総合的な公共交通ネットワークをどうしていくのかという結論を導き出す……というのが佐藤市長の方法論のようです。
 主要テーマは「まちづくり」と「公共交通」のあり方となる見通しです。

 宇都宮市のLRTを含めた公共交通ネットワーク計画は、昨年の政権交代で政府の動向が不透明になってしまったことで、しばらく様子見の状況となっていました。
 しかし、昨年夏の衆院選では民主党の選挙公約には「LRT推進という項目があったこと、公共交通ネットワークを拡充する助けとなる「交通基本法」の制定を目指す動きが加速しつつあること、国交省はLRT導入に向けた環境作りを着々と進めていることなどもあり、宇都宮市長としても「頃合い良し」という判断に至ったのではないかと推察します。
 (ちなみに、LRT推進に関しては超党派のLRT議連があり、与野党問わず大勢の国会議員が参加しています)


 このブログでも繰り返し述べていますが、LRTはまちづくりのツールの一つで、LRT導入が「目的」なのではなくて、効果的なまちづくりのための「手段」の一つとして重要な役割を果たすべき存在です。
 (おおよその目安としては、人口20万人ほどの都市であれば、LRT導入に見合う旅客需要があると考えられます/もちろん、ただ導入すれば良いというわけではなく、総合的なまつづくりの中でしっかりとした位置づけをして、他の交通手段とも円滑に連携を図ることが不可欠です)
 そのため、LRT導入によってどの程度まちづくりに貢献できるかという視点で議論すべきであって、単純な採算性云々という議論は出発点がかなりずれているといえます。
 (ただし、明らかに都市の規模が小さくて、LRTを導入するほどの需要が見込めないケースでは、他の交通手段を検討すべきです/宇都宮は導入の可否を議論する必要がないほど都市の規模が大きい)
 つまり議論が必要だとしても、LRTを含めた公共交通ネットワークをどう再編すべきだとか、それらによって社会的便益がどの程度増すかとか、どのルートがより効果的かとか、バスなど他の交通モードとの結節点をどこに設けたらよいかとか、そうしたことに注力すべきといえます。

 宇都宮では、残念ながら先の県知事選や市長選でLRT導入が政争の具とされてしまった(反対派の候補者が殊更にLRT反対を唱えた)ため、本来市民の皆さんに伝えなければいけない社会的便益についての話がほとんど伝わらず、単純な赤字黒字の話が先行してしまうという、なんともお粗末な状況に陥ってしまいました。
 県知事選で今の知事に大敗した反対派の候補者は、その後国政に転じた(民主党)のですが、民主党自体は「LRT推進」を謳っている中で未だに矛盾した主張を変えていないようです。


 実際のところ、宇都宮という街は駅(特にJR宇都宮駅)までは比較的楽に行けるのですが、そこから先の移動は本当に難儀します。
 路線バスは、一部の区間では過密といえるほど走っているのですが、路線バスの空白地帯・過疎地帯もかなりあり、なおかつ時間も読めないしどこを経由してどこに行くか分かりにくいので、正直なところあまりアテにはできません。
 クルマを使えば、各所で渋滞に巻き込まれ、目的地付近では駐車場が見つかりにくいということも間々あります。
 生まれも育ちも宇都宮という人はあまり実感が沸かない(不便さに気づかない)かも知れないのですが、他の都市の状況を知ってしまうと不便さが際だってしまうのです。

 今後少子高齢化が一層進行する中で、都心と地方都市の競争だけでなく、地方都市間の競争も激化するものと予想できます。
 もう少しいえば、不便な都市にはヒト・モノ・カネが集まらず、より便利な都市に流出してしまうということです。
 (高い生活費を払ってでも都心に人が集まり、企業も集まるという背景には、「都心は便利」というある種の安心感があるためだろうと思えます)

 同じことは宇都宮以外の地方都市にも言えるのですが、少なくとも従来のやり方――クルマと道路最優先で、際限なく郊外化が進んでいく――を続けていたのでは、市街地の拡大に伴い都市インフラの維持・整備に必要な莫大な資金が市の財政を直撃することになるうえ、中心市街地は衰退する一方ですから、良いことはあまりありません。
 つまり、ここで思い切った方向転換が行えるかどうか、言い換えれば「過度にクルマに依存しなくても良いまちづくりにシフトできるか」が試されているのではないかと思います。

 東京の都心並みとは言わないまでも、さまざまな方法で「便利さ」を実感できるような都市にしていけるかどうか、これが肝要であると考えます。
 市内の中心街を便利な公共交通(おそらくそれは従来型の路線バスでは役不足で、もっと高度化された分かりやすい乗り物である必要があります)が高頻度で走っていて、クルマを使わなくても移動に困らないような状態だったらどうでしょうか。
 既存鉄道の駅から離れていても、おおむね時刻表通りにスイスイ走る公共交通機関が整備されていて、他の交通機関への乗り換えが簡単に行えて、市民も余所から来た人も移動に困らないという状態であったらどうでしょうか。

 私自身は、地元茨城であれば水戸と土浦・つくば、栃木であれば宇都宮と小山、群馬であれば前橋と高崎は、過度なクルマ依存から脱却して「クルマがなくても結構便利なまちづくり」を目指すべきだろうと考えています。
 そのための手段の一つが、新たな公共交通ネットワークを整備し、既存の鉄道・バスなどともシームレスな連携を図るということです。
 これは民間の交通事業者が単体でどうにかできるものではありませんし、官だけで実現しようとすると必ず無駄が生じますので、官民共同の運輸連合のようなものを設立しても良いのではないかと思います。


 話が脱線しましたが、目先の損得だけでなく、どうか長期的・戦略的な視点で考えていただける人が増えてほしいと願わずにはいられません。


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こんにちは

勝手に紹介させていただきましたので、お知らせします
  • from ido_ken :
  • URL :
  • 2010/09/01 (08:24) :
  • Edit :
  • Res

Re:こんにちは

 当方へのご来訪、ありがとうございます。
 また、ご紹介くださいまして、ありがとうございます。
 (ちなみに、「クラブ」は「倶楽部」なんですよ^^;)

 「Twiter」で、

> 「LRTはまちづくりのツール」は同意。この考え方をどう広げるか?
> それはそうと、ツールで実現する「まち」の姿が見えない

 とつぶやいていらっしゃいましたが、おっしゃるように「どんなまちづくりを目指すか」という点は極めて重要です。

 宇都宮のLRT計画は、そもそも市の東西方向を結ぶ公共交通機関が脆弱であり、特に鬼怒川の東岸にある清原地区(一大住宅地であり、教育機関が多い地域でもあり、宇都宮を代表する一大工業団地でもある)と市の中心部を定時運行する公共交通の必要性が高い、というところから議論がスタートしています。

 構想が持ち上がったのはもう30年以上前で、まだ世界的にもLRTという概念ができあがる前の段階。
 当時は現在と違い公共交通に対する補助・支援がほとんどない状態での構想で、いわゆる「新交通」といえば埼玉の「ニューシャトル」や神戸の「ポートライナー」のようなAGT(整備費が高額になる)ぐらいしかなく、構想はなかなか具現化することなく年月が過ぎてしまいました。
 その後、欧米で路面電車がLRTとして進化し、新たにLRTを建設する都市が増え、まちづくりにも大いに役立つツールであることが認識されるようになります。
 日本でも遅まきながらLRTの認知が少しずつ広まり、その特性からも建設費の問題からも「宇都宮でもLRT」という流れになっていったものと思います。

 新規にLRT構想が持ち上がった都市と宇都宮が異なる点は、「まちづくり」の議論が始まる前段階ですでに新交通システムの構想があり、必要に迫られているという事情がある点も見逃せないと考えます。
 とはいえ、より広範な賛意を得るためにも、まちづくりの方向性がどうであって、なおかつ必要に迫られているという説明が行える方が説得力があることは間違いないとは言えます。

 将来的な市の財政状況を考えたとき、無秩序に市街地が拡大していくというのは絶対に避けなければいけないことで(維持・整備コストが市の財政を圧迫するため)、コンパクトシティ化を推進することは必須といって良いでしょう。
 人口が集約するようになったとき、これまでのようなクルマありきの方向性では交通が完全に麻痺してしまいます。道路渋滞が起きれば路線バスも壊滅状態に陥りますから、ここに道路交通とは隔離した公共交通機関を整備する必要性があるということになります。
 便利でなければ、誰も中心街に住もうなんて思わないでしょうからね……。

 ただ、こうした説明はちょっと詳しい人や普段から交通問題を意識している人には「通じる」のですが、あまり関心がない人(意識していない人)には「?」となることが多いというのも事実です。
 つまり、もっと直感的に分かりやすい説明であるとか、漠然でもいいので「なぁるほど」と思ってもらえるような説明を考えないといけないわけです。

 まちづくりの観点からの説明というのは、おそらくそうした人たちに対する分かりやすい(敷居が低い)説明が行える可能性をも秘めているように感じています。


 先日、都市計画がご専門の宇都宮大学・森本 章倫(もりもと・あきのり)准教授(http://www.cc.utsunomiya-u.ac.jp/~morimoto/homepage/profile.htm)の講演を拝聴する機会があったのですが、興味深い例え話で「○○年後の宇都宮市がどんな姿になっているのが望ましいか?」という問いかけを行っていました。

 それは確か、科学技術にあふれた「ドラえもん型都市」を目指すのか、それとも自然豊かな「トトロ型都市」を目指すのか、という問いかけだったと思います。

 いずれのケースでも、過度にクルマ依存している現状を改めて、便利で頼りになる公共交通(事実上LRTなんですが)を整備してコンパクトシティ化を推進するという点では一致しています。
 市の中心街に先進的な建造物が並んでいるのか、それとも公園や木々、屋上緑化を増やして緑にあふれているのか。
 それぞれのケースでの30年後、50年後の予想CGや予想ムービーを見ながら、自分たちが住む街がどうなっていると良いだろうか……と、市民の皆さんも大いに関心を持って考えていた様子でした。
  • from NAL(管理人) :
  • 2010/09/01 (10:42)

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