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下館レイル倶楽部

真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)

【近畿車輛】自己充電型バッテリー車両「Smart BEST」開発中

 鉄道車両メーカー・近畿車輛JR西日本は、発電用のディーゼルエンジンを搭載し、自力発電と充電を行うことで非電化区間を走行できる、自己完結型の充電型バッテリー電車のプロトタイプ「Smart BEST(スマートベスト)」を開発し、2012年10月11日(木)に報道公開しました。
 モーターで駆動するので「電車」ですが、ディーゼルエンジンで発電・充電した電力で走る点からいえば「ハイブリッド気動車」の一種でもあります。

 実用化まではまだ10年ほどかかるとのことですが、実用レベルに達して調達コスト・運用コストがそう高くないのであれば、各地の非電化路線に導入が進む可能性を秘めています。


・環境に配慮した、非電化路線用バッテリー電車「Smart BEST」の開発(近畿車輛 2012年10月10日)
 http://www.kinkisharyo.co.jp/ja/news/news121010-1.htm

・近畿車輛(株)が開発した自己充電型バッテリー車両の走行試験について(近畿車輛 2012年10月10日)
 http://www.kinkisharyo.co.jp/ja/news/news121010-2.htm

・充電型バッテリー電車「Smart BEST」報道公開(産経新聞 2012年10月11日)


・JR西日本と近畿車輛がバッテリー走行車両を共同開発 リチウムイオン電池使う、実用化まで10年(MSN産経 2012年10月9日)
 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121009/biz12100917090026-n1.htm

・時速100キロ!! 近畿車輛が充電型バッテリー電車を公開(MSN産経 2012年10月11日)
 http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/121011/wec12101120450003-n1.htm


架線レスバッテリートラム「ameri TRAM」を手がけた近畿車輛が開発

 「Smart BEST」は、近畿車輛が手がけたバッテリーLRV「ameri TRAM」を開発した経験が役立っているようです。
 「ameri TRAM」は、リチウムイオン蓄電池を搭載する100%低床の連接LRV(ライト・レール・ヴィークル)で、架線がある区間では架線集電を行って充電しながら走り、架線がない区間では充電した電力で走ります。
 アメリカでは、都市内交通として新規にLRT(ライト・レール・トランジット)を導入したり、路面電車を近代化する動きが広がっていています。
 近畿車輛は米国における有力なLRV製造メーカーの一つでもあり、同社が製造したLRVは各地で活躍しています。
 「ameri TRAM」は米国内の各地でデモンストレーションを行い話題となりましたが、その際に国内外から「非電化区間を長距離運行可能な鉄道車両も開発できないのか」というような要望が多々あったようで、そうした要望もあって「Smart BEST」の開発に着手したようです。


「充電可能な電気式ディーセルカー」ともいえる「Smart BEST」

 「Smart BEST」はあくまでも試験車両ですが、おそらく実用車両とほとんど変わらないシステムを搭載しているのだろうと思います。

 搭載しているディーゼルエンジンはあくまでも発電専用(小さな火力発電所を搭載しているわけです)で、駆動自体は電車と同じくモーターで行います。
 この点だけを捉えれば、「充電可能な電気式ディーセルカー」とも考えることができます。
 搭載するディーゼルエンジンの出力は一般的なディーゼルカーの1/3~1/4程度で十分で、発電時にはもっとも効率が良い回転数で駆動させることもあって、燃費は一般的なディーゼルカーより良好になります。
 搭載エンジンによる発電・充電はバッテリー残量に応じて行い、ブレーキを作動させた際に発生する回生電力も搭載バッテリーに充電します。

 「Smart BEST」の走行試験は年内にJR西日本の路線でスタートし、バッテリー性能の検証、走行キロ当たりの燃費確認などを行う予定です。
 日本国内だけでなく、新興国など海外への輸出も視野に入れているようです。


「シリーズ方式」のハイブリッド車両

 「Smart BEST」は、発電のためだけにディーゼルエンジンを使用するとのことですので、「シリーズ方式」のハイブリッド車両といえます。

 これまでに登場したハイブリッド車両といえば、JR東日本が「キハE200形」とリゾート列車「HB-E301形」を実用化し、JR北海道も御役御免となった「キハ160形」を改造して試験車両にしています。
 「キハE200形」と「HB-E301形」は、「Smart BEST」と同様の「シリーズ方式」を採用しています。
 「キハ160形」改造車は、搭載するディーゼルエンジンを発電用と駆動用に併用する「パラレル方式」の一種(JR北海道は「モータ・アシスト式」と呼称)を採用しています。

 「シリーズ方式」のハイブリッド車両最大のメリットは、ディーゼルエンジンは発電専用と割り切っていてシステムがシンプルだということ。
 「駆動系が電車と同じ」ということも大きなメリットで、ディーゼルカーにつきものの変速機がなくなることでメンテナンスの簡略化が実現できます。


 なお、JR東日本が試験中の「NE Train スマート電池くん」こと「クモヤE995形」もハイブリッド車両と言えるのですが、その意味は全く異なります。

 この車両、以前はハイブリッド気動車「キヤE991形」として試験を行っていましたが、2008年に燃料電池に蓄電した電力で走る「燃料電池動車」に改造されて「クモヤE995形」となりました。
 2009年にはパンタグラフを搭載し、電化区間では走りながら充電することが可能となりました。

 「キヤE991形」時代は「ハイブリッド気動車」だったのですが、現在の「クモヤE995形」は電化区間では架線集電を行い、非電化区間では燃料電池の電力で走るという意味での「ハイブリッド車両」となっています。


発電用エンジン出力、「一般的なディーゼルカーの1/3~1/4程度」で足りる?

 「Smart BEST」で興味深いのは、搭載するディーゼルエンジンの出力についてです。
 同じ「シリーズ方式」の「キハE200形」や「HB-E301形」が450psのディーゼルエンジンを搭載しているのに対し、詳細は不明ですが「Smart BEST」では「一般的なディーゼルカーの1/3~1/4程度」の出力で済む、としていることです。
 もしこれを額面通りに受け取ると、100ps程度の出力ということになります。
 発電専用とはいえ、これで足りるんだろうか……という素朴な疑問が沸きます。

 また、これまでJR西日本が導入してきたディーゼルカーはほとんど新潟トランシス(以前は新潟鐵工所)製だったのですが、本車は近畿車輛製であるということも興味深い点です。
 今後は近畿車輛で製造したディーゼルカーしか導入しないということなのか、それとも調達先の一つとして近畿車輛が加わるだけなのか、ちょっと気になるところです。


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 しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
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