下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【宇都宮LRT】100億円を超える基金の行方
- 2013/06/19 (Wed)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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「清原工業団地を造成・売却した際の売却益は、清原のために使ってほしい」
1984年から4期に渡って栃木県知事を務めた渡辺文雄氏は、かつてこのように語っていたそうです。
もっと具体的にいえば、「陸の孤島」で慢性的な渋滞に苦しんでいた清原地区の住民達との「公約」でもあった、宇都宮駅への軌道系公共交通機関整備に充当して欲しい……と。
現在、売却益は約100億円残されています。
公共交通に対する姿勢と理解が変わりつつあるとはいえ、まだまだ「下野新聞」の認識は不十分というか何というか。
LRT整備に関連した報道では、相変わらずこのような報じ方になってしまいます。
・LRT反対派外し? 宇都宮開発組合議員選挙(下野新聞 2013年6月19日)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20130618/1069017
「宇都宮市街地開発組合」は栃木県と宇都宮市で構成する一部事務組合で、1960年、工業団地の造成などを目的に設立されました。
これまでに、清原サッカー場(今の県グリーンスタジアム)の整備などに関わっています。
組合には今でも100億円を超える財政調整基金があって(以前はもっとあった)、この基金をどのように活用していくかは大きな関心事になっていました。
知事も市長も、これまでの講演でたびたびこの基金については触れています。
また、交通事情の抜本的な改善を求め続けている清原地区の住民達も、一刻も早いLRT整備を熱望していて、売却益を整備費として充当することに賛同しているそうです。
鬼怒川の東側にある清原地区は、元々は「芳賀郡清原村」で、1954年に宇都宮市に編入合併されています。
実際に清原工業団地の分譲が始まったのは1974年になってからですが、広大な土地を工業団地にすることには地権者の間でもさまざまな考え方があっただろうことは想像に難くありません。
一説によると、工業団地整備に合意する交換条件として、地元住民は中心市街地に向かう軌道系公共交通機関の整備を求めたとも言われています。
清原地区と宇都宮駅を結ぶ軌道系公共交通機関は、当初はLRTの概念がまだ日本には伝わっておらず、モノレールやAGT(「ニューシャトル」や「ゆりかもめ」のようなもの)が検討されていたものと思います。
しかし、いずれも整備費は高額で、AGTは1kmあたり80~100億円、モノレールは1kmあたり100~120億円ですし、当時は上下分離方式もないご時世ですから、とてもとても早期整備は望めない状況だったと思います。
その後、海外からLRTの成功事例が伝わってきて、ここでやっとLRTが具体的かつ現実的な有力候補になります。
路面レベルを走るので乗降がしやすい点や、整備費が1kmあたり20~25億円と他の新交通システムよりかなり割安であること、まちづくりにリンクした交通機関であることなどが評価されたのは、当然だといえます。
後にLRTから既存鉄道へ乗り入れるトラムトレインが実現可能であること、公設民営による上下分離方式を導入可能であることなど、良い材料が加わっていきました。
宇都宮市の東にある芳賀町、市貝町、さらには茂木町の3町長が、昨秋の宇都宮市長選前に「LRTの早期整備を」と異例の要望を出した際、芳賀町の町長は「宇都宮テクノポリスセンターまで軌道を敷設してもらえれば、後は我々が東に軌道を延ばして真岡鐵道に結節させる」とまで語ったと報じられました。
さらには「上三川町(かみのかわまち)にも声を掛けようか」という話まで出ていたと報じられています。
真岡鐵道に結節して、宇都宮駅~茂木駅(さらには「ツインリンクもてぎ」)まで1本の列車で直通できるようになれば、過疎化に苦しむ芳賀地域にとっては抜本的な変革がもたらされる可能性があります。
また、いつになるか、どういうルートになるかはまだまだ紆余曲折があるでしょうが、現時点では軌道系交通機関がない上三川町(宇都宮市との境界付近に大規模な郊外型ショッピングエリアと、多数の従業員が通勤する日産の工場があります)と宇都宮駅が直結することになれば、こちらも大きな波及効果があります。
宇都宮から上三川へ伸びる路線ができれば、当然その東側にある真岡市も黙ってはいないでしょう。
鬼怒川を渡河する必要はありますが、「真岡まで!」という動きが出てくるのは自然な流れになると思いますし、そうなれば下館駅まで直通する列車が設定される可能性も出てきます。
宇都宮のLRT計画は、実は単に宇都宮市内だけの問題ではありません。
市内から清原工業団地や芳賀工業団地などに通勤する7万人の移動をどうするか。
周辺エリアから宇都宮市内に通勤・通学・買い物に行く人達の移動をどうするか。
限界に達している路線バスネットワークの効率化・活性化をどうするか。
伸び悩んでいる東武宇都宮線、JR日光線を今後どうするか。
過疎化に悩む栃木県の県東地域の活性化をどうするか。
このような視点から、投資効果や波及効果をトータルで考えていかないといけない問題でもあります。
ともあれ、昨秋の市長選で「LRT導入」を明示し、LRTを含む公共交通ネットワーク拡充を公約に掲げた現職が大差で当選したことで、「潮目は変わった」のだと感じることが多くなってきました。
まだネガティブな動きは出るのだろうと思いますが、少なくとも報道機関は公共交通が果たす役割について、さらに、もっと、しっかり勉強していただきたいと思います。
また、何か懸念材料があるのだとしても、殊更対立を煽るような表層的な報道からは卒業して、課題があるならどう解決したら良いのか、こんな方法もあるのではないか……といった、未来指向型の有意義な報じ方にシフトしていただいきたいものだと思っています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
1984年から4期に渡って栃木県知事を務めた渡辺文雄氏は、かつてこのように語っていたそうです。
もっと具体的にいえば、「陸の孤島」で慢性的な渋滞に苦しんでいた清原地区の住民達との「公約」でもあった、宇都宮駅への軌道系公共交通機関整備に充当して欲しい……と。
現在、売却益は約100億円残されています。
公共交通に対する姿勢と理解が変わりつつあるとはいえ、まだまだ「下野新聞」の認識は不十分というか何というか。
LRT整備に関連した報道では、相変わらずこのような報じ方になってしまいます。
・LRT反対派外し? 宇都宮開発組合議員選挙(下野新聞 2013年6月19日)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20130618/1069017
「宇都宮市街地開発組合」は栃木県と宇都宮市で構成する一部事務組合で、1960年、工業団地の造成などを目的に設立されました。
これまでに、清原サッカー場(今の県グリーンスタジアム)の整備などに関わっています。
組合には今でも100億円を超える財政調整基金があって(以前はもっとあった)、この基金をどのように活用していくかは大きな関心事になっていました。
知事も市長も、これまでの講演でたびたびこの基金については触れています。
また、交通事情の抜本的な改善を求め続けている清原地区の住民達も、一刻も早いLRT整備を熱望していて、売却益を整備費として充当することに賛同しているそうです。
鬼怒川の東側にある清原地区は、元々は「芳賀郡清原村」で、1954年に宇都宮市に編入合併されています。
実際に清原工業団地の分譲が始まったのは1974年になってからですが、広大な土地を工業団地にすることには地権者の間でもさまざまな考え方があっただろうことは想像に難くありません。
一説によると、工業団地整備に合意する交換条件として、地元住民は中心市街地に向かう軌道系公共交通機関の整備を求めたとも言われています。
清原地区と宇都宮駅を結ぶ軌道系公共交通機関は、当初はLRTの概念がまだ日本には伝わっておらず、モノレールやAGT(「ニューシャトル」や「ゆりかもめ」のようなもの)が検討されていたものと思います。
しかし、いずれも整備費は高額で、AGTは1kmあたり80~100億円、モノレールは1kmあたり100~120億円ですし、当時は上下分離方式もないご時世ですから、とてもとても早期整備は望めない状況だったと思います。
その後、海外からLRTの成功事例が伝わってきて、ここでやっとLRTが具体的かつ現実的な有力候補になります。
路面レベルを走るので乗降がしやすい点や、整備費が1kmあたり20~25億円と他の新交通システムよりかなり割安であること、まちづくりにリンクした交通機関であることなどが評価されたのは、当然だといえます。
後にLRTから既存鉄道へ乗り入れるトラムトレインが実現可能であること、公設民営による上下分離方式を導入可能であることなど、良い材料が加わっていきました。
宇都宮市の東にある芳賀町、市貝町、さらには茂木町の3町長が、昨秋の宇都宮市長選前に「LRTの早期整備を」と異例の要望を出した際、芳賀町の町長は「宇都宮テクノポリスセンターまで軌道を敷設してもらえれば、後は我々が東に軌道を延ばして真岡鐵道に結節させる」とまで語ったと報じられました。
さらには「上三川町(かみのかわまち)にも声を掛けようか」という話まで出ていたと報じられています。
真岡鐵道に結節して、宇都宮駅~茂木駅(さらには「ツインリンクもてぎ」)まで1本の列車で直通できるようになれば、過疎化に苦しむ芳賀地域にとっては抜本的な変革がもたらされる可能性があります。
また、いつになるか、どういうルートになるかはまだまだ紆余曲折があるでしょうが、現時点では軌道系交通機関がない上三川町(宇都宮市との境界付近に大規模な郊外型ショッピングエリアと、多数の従業員が通勤する日産の工場があります)と宇都宮駅が直結することになれば、こちらも大きな波及効果があります。
宇都宮から上三川へ伸びる路線ができれば、当然その東側にある真岡市も黙ってはいないでしょう。
鬼怒川を渡河する必要はありますが、「真岡まで!」という動きが出てくるのは自然な流れになると思いますし、そうなれば下館駅まで直通する列車が設定される可能性も出てきます。
宇都宮のLRT計画は、実は単に宇都宮市内だけの問題ではありません。
市内から清原工業団地や芳賀工業団地などに通勤する7万人の移動をどうするか。
周辺エリアから宇都宮市内に通勤・通学・買い物に行く人達の移動をどうするか。
限界に達している路線バスネットワークの効率化・活性化をどうするか。
伸び悩んでいる東武宇都宮線、JR日光線を今後どうするか。
過疎化に悩む栃木県の県東地域の活性化をどうするか。
このような視点から、投資効果や波及効果をトータルで考えていかないといけない問題でもあります。
ともあれ、昨秋の市長選で「LRT導入」を明示し、LRTを含む公共交通ネットワーク拡充を公約に掲げた現職が大差で当選したことで、「潮目は変わった」のだと感じることが多くなってきました。
まだネガティブな動きは出るのだろうと思いますが、少なくとも報道機関は公共交通が果たす役割について、さらに、もっと、しっかり勉強していただきたいと思います。
また、何か懸念材料があるのだとしても、殊更対立を煽るような表層的な報道からは卒業して、課題があるならどう解決したら良いのか、こんな方法もあるのではないか……といった、未来指向型の有意義な報じ方にシフトしていただいきたいものだと思っています。
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下館レイル倶楽部・代表
性別:
男性
趣味:
鉄道、鉄道模型、ミリタリーなど
自己紹介:
「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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・ご連絡&お問い合わせメールアドレス
nal@sainet.or.jp(←「@」を半角文字にしてお送りください)
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