下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第3回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第3回の概要】2012年10月29日(月)掲載
■便利なICカード導入が重要
宇都宮市では、郊外部で「地域内交通」が6路線運行を開始している。
清原地区の「さきがけ号」のようなジャンボタクシー(バスタイプのワンボックスカー)を使う例や、普通のタクシーを使用するケースもある。
これらは、今後超高齢社会となり「交通弱者」が増加することを見越して、従来は路線バス空白地帯だったエリアをカバーするもの。
宇都宮市の構想では、LRTを東西基幹交通を「幹」として導入し、既存の鉄道路線と結節したうえで、「幹」から伸びる「枝」として路線バスや地域内交通をつなげて有機的に連携させることで、クルマを使わずに市内を移動できるネットワーク構想を温めている。
宇都宮市の公共交通ネットワーク構想実現のためのカギは「ICカードの導入」。
鉄道・LRT・バスが1枚のカードで乗降できるうえ、乗降時間の短縮、ワンマンで対応しやすくなる。
■いわゆる「採算性」の問題
LRT導入を巡る議論で必ず問題とされるのが、いわゆる「採算性」の問題。
中心部と郊外の住民の温度差があり、反対派は「そんなに乗らないから赤字必至」と主張し、推進派は「導入による相乗効果を考慮すべきで、赤字黒字の問題ではない」と主張する。
市域全体の公共交通ネットワーク整備のため、どうやって市民の理解を得ていくかが大きなテーマだ。
【第3回の記事内容について思うこと】
いわゆる「採算性」からの反対論は、そもそも初期投資額だけを見て「高い!!」と思考停止に陥ってしまっているような印象が強く、また最近になって導入可能になった「上下分離方式」を考慮していない(知らない?)場合が多いように感じます。
つまり、たとえ「公共」交通であっても、旧来のように厳格な独立採算制を前提とした考え方が根っこにあって、「1円でも支出が収入を上回ったら赤字だ!!」という主旨のように感じます。
目先の収支だけを見ればそういう面があることが確かですが、それでは利便性が高い公共交通が整備されることに伴うさまざまなメリットや税収増、経済波及効果などが一切考慮されないことになってしまいます。
そもそも論として、本来公共交通を事業採算性だけで論じるのは極めてナンセンスであると言えます。
また、「どうせそんなに乗らない!!」という意見も、採算性の話と絡めて出てきがちです。
参考までに、2003年時点では44,500人/日(注:往復の数字なので、実質22,450人/日)が利用すれば十分ペイするという試算がありました。
2007年には「上下分離方式」が導入できるようになったことにより、採算ラインはさらに引き下がり、33,000人/日(注:往復の数字なので、実質16,500人/日)でペイするとの試算があります。
人口50万人、都市圏人口だと100万人に達しようという宇都宮で、東西基幹交通が片道16,500人/日を上回らないということがあるのでしょうか。
LRT導入を巡る議論(主張)では、とかく初期投資額だけが注目されますが、「導入する場合の利益」と、「導入しない場合の不利益」も考慮すべきです。
LRTは「沿線以外にはメリットがないから」という否定的な意見があるのですが、元々宇都宮市の計画ではLRTを1本通して終わりという話ではなく、LRTを軸として整備し、これまでは公共交通空白地帯だったエリアにも新規バス路線やデマンド交通を設定して、市域全体の利便性を向上する構想であるという点を見落としがちのようです。
軌道系交通機関にして、とてもオシャレな交通機関でもあるLRTを導入することによる投資促進効果やイメージアップ効果が大きい点は、国内では「前例」となる先進事例がまだないこともあって、なかなか注目されない傾向にあります。
しかし、導入ルートがよっぽど変でない限り、公共交通の利便性が向上すれば新たな事業所と従業員(とその家族)を呼び込めますし、便利な街で暮らしたい層を呼び込むことも可能ですので、税収増、経済波及効果が大きい点などは見逃すべきではありません。
参考までに、第2回でも掲載したのですが、昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)での栃木県知事の説明を再掲します。
宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)
ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります。
あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■便利なICカード導入が重要
宇都宮市では、郊外部で「地域内交通」が6路線運行を開始している。
清原地区の「さきがけ号」のようなジャンボタクシー(バスタイプのワンボックスカー)を使う例や、普通のタクシーを使用するケースもある。
これらは、今後超高齢社会となり「交通弱者」が増加することを見越して、従来は路線バス空白地帯だったエリアをカバーするもの。
宇都宮市の構想では、LRTを東西基幹交通を「幹」として導入し、既存の鉄道路線と結節したうえで、「幹」から伸びる「枝」として路線バスや地域内交通をつなげて有機的に連携させることで、クルマを使わずに市内を移動できるネットワーク構想を温めている。
宇都宮市の公共交通ネットワーク構想実現のためのカギは「ICカードの導入」。
鉄道・LRT・バスが1枚のカードで乗降できるうえ、乗降時間の短縮、ワンマンで対応しやすくなる。
■いわゆる「採算性」の問題
LRT導入を巡る議論で必ず問題とされるのが、いわゆる「採算性」の問題。
中心部と郊外の住民の温度差があり、反対派は「そんなに乗らないから赤字必至」と主張し、推進派は「導入による相乗効果を考慮すべきで、赤字黒字の問題ではない」と主張する。
市域全体の公共交通ネットワーク整備のため、どうやって市民の理解を得ていくかが大きなテーマだ。
【第3回の記事内容について思うこと】
いわゆる「採算性」からの反対論は、そもそも初期投資額だけを見て「高い!!」と思考停止に陥ってしまっているような印象が強く、また最近になって導入可能になった「上下分離方式」を考慮していない(知らない?)場合が多いように感じます。
つまり、たとえ「公共」交通であっても、旧来のように厳格な独立採算制を前提とした考え方が根っこにあって、「1円でも支出が収入を上回ったら赤字だ!!」という主旨のように感じます。
目先の収支だけを見ればそういう面があることが確かですが、それでは利便性が高い公共交通が整備されることに伴うさまざまなメリットや税収増、経済波及効果などが一切考慮されないことになってしまいます。
そもそも論として、本来公共交通を事業採算性だけで論じるのは極めてナンセンスであると言えます。
また、「どうせそんなに乗らない!!」という意見も、採算性の話と絡めて出てきがちです。
参考までに、2003年時点では44,500人/日(注:往復の数字なので、実質22,450人/日)が利用すれば十分ペイするという試算がありました。
2007年には「上下分離方式」が導入できるようになったことにより、採算ラインはさらに引き下がり、33,000人/日(注:往復の数字なので、実質16,500人/日)でペイするとの試算があります。
人口50万人、都市圏人口だと100万人に達しようという宇都宮で、東西基幹交通が片道16,500人/日を上回らないということがあるのでしょうか。
LRT導入を巡る議論(主張)では、とかく初期投資額だけが注目されますが、「導入する場合の利益」と、「導入しない場合の不利益」も考慮すべきです。
LRTは「沿線以外にはメリットがないから」という否定的な意見があるのですが、元々宇都宮市の計画ではLRTを1本通して終わりという話ではなく、LRTを軸として整備し、これまでは公共交通空白地帯だったエリアにも新規バス路線やデマンド交通を設定して、市域全体の利便性を向上する構想であるという点を見落としがちのようです。
軌道系交通機関にして、とてもオシャレな交通機関でもあるLRTを導入することによる投資促進効果やイメージアップ効果が大きい点は、国内では「前例」となる先進事例がまだないこともあって、なかなか注目されない傾向にあります。
しかし、導入ルートがよっぽど変でない限り、公共交通の利便性が向上すれば新たな事業所と従業員(とその家族)を呼び込めますし、便利な街で暮らしたい層を呼び込むことも可能ですので、税収増、経済波及効果が大きい点などは見逃すべきではありません。
参考までに、第2回でも掲載したのですが、昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)での栃木県知事の説明を再掲します。
宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)
ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります。
あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
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下館レイル倶楽部・代表
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男性
趣味:
鉄道、鉄道模型、ミリタリーなど
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「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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・ご連絡&お問い合わせメールアドレス
nal@sainet.or.jp(←「@」を半角文字にしてお送りください)
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