下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第2回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第2回の概要】2012年10月28日(日)掲載
■宇都宮:民間との信頼を築けるか
10月上旬、宇都宮の佐藤栄一市長と関東自動車の松本順会長は公共交通ネットワーク構想について意見交換を行った。
関東自動車は、従来はLRT反対の立場であったが、松本会長も市の構想の必要性は理解したとのこと。
従来は頑なに交渉を拒絶してきた同社だったが、今春経営陣が変わって現実的な対応に変化したようだ。
栃木県と宇都宮市は、2003年に公表した「新交通システムの導入を目指す調査報告書」でLRTの優位性を示した。
LRT導入ルートは、清原地区「テクノポリスセンター」~JR宇都宮駅東口の約12kmと、JR宇都宮駅西口~桜通り十文字の約3kmの、約15km。
当初見込みでは、軌道・施設・車両などで初期投資は「約355億円」。当時はまだ上下分離方式を導入できなかったので、ペイラインは「44,900人/日」(注:延べ人数なので、大半の利用者が往復すると考えれば実質「22,450人/日」と考えて良い)と試算された。
2007年に「地域公共交通活性化・再生法」が施行され、LRTを取り巻く環境が劇的に好転。
LRT整備にも「公設型上下民営方式」が適用できるようになり、運行主体となる交通事業者の負担が大幅に下がった(つまり、軌道や施設、車両などの初期投資を運行主体である民間事業者が負担しなくて良くなった)。この変化は極めて重要だ。
富山の路面電車環状線「セントラム」は、全国で初めて上下分離方式を用いて整備を行い、総事業費(約30億円)は国と富山市が負担。
もちろん、整備が容易になったからといっても、交通事業者の理解と協力を得ることが重要で、運行形態、ダイヤ設定、既存の交通モードと競合しないような調整などが欠かせない。
【第2回の記事内容について思うこと】
関東自動車はLRT導入後の有力な運行主体の一つでもあるので、同社が交渉に応じる姿勢に転じたのは注目に値します。
というのも、従来最大の対立点と見られてきたJR宇都宮駅西口〜東武宇都宮駅間の「ドル箱」区間の扱いについて、市と事業者の調整次第は対立関係が抜本的に解消する可能性が出てきたからです。
私見ですが、関東自動車がLRT導入に反対していたのは、「LRTが通ると、路線バスのドル箱区間で競合関係になる」からで、その結果「会社の経営が悪化して運転士の解雇が発生する恐れがある」と感じていたためではないかと思います。
逆に言えば、雇用機会が確保され、ドル箱区間の利害調整が済めば、関東自動車としては特に大きな懸念材料がないため、対立する理由がなくなるということでもあります。
大都市部ではともかく、今後地方では中核都市においても公共交通ネットワーク維持・拡充のため、自治体が積極的に関与することになっていくと思います。
その際、既存の民間事業者と競合関係にならないように、事前に調整を行うことがますます重要性を増していきます。
欧州のように、自治体と民間業者が共同出資して、市域全体の公共交通を一括運行する「運輸連合」のような運行主体を作り、民間企業が運行していた既存路線も新運行主体に人員・設備・車両もろとも移管する、というケースも検討することになっていくのかも知れません。
なお、「下野新聞」の記事では一切触れていない重要な点として、上下分離方式を導入するとペイラインはかなり下がるということを指摘しておきます。
昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)で、栃木県知事は次のような説明を行っています。
宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)
ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります。
あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。
ご参考になれば幸いです。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■宇都宮:民間との信頼を築けるか
10月上旬、宇都宮の佐藤栄一市長と関東自動車の松本順会長は公共交通ネットワーク構想について意見交換を行った。
関東自動車は、従来はLRT反対の立場であったが、松本会長も市の構想の必要性は理解したとのこと。
従来は頑なに交渉を拒絶してきた同社だったが、今春経営陣が変わって現実的な対応に変化したようだ。
栃木県と宇都宮市は、2003年に公表した「新交通システムの導入を目指す調査報告書」でLRTの優位性を示した。
LRT導入ルートは、清原地区「テクノポリスセンター」~JR宇都宮駅東口の約12kmと、JR宇都宮駅西口~桜通り十文字の約3kmの、約15km。
当初見込みでは、軌道・施設・車両などで初期投資は「約355億円」。当時はまだ上下分離方式を導入できなかったので、ペイラインは「44,900人/日」(注:延べ人数なので、大半の利用者が往復すると考えれば実質「22,450人/日」と考えて良い)と試算された。
2007年に「地域公共交通活性化・再生法」が施行され、LRTを取り巻く環境が劇的に好転。
LRT整備にも「公設型上下民営方式」が適用できるようになり、運行主体となる交通事業者の負担が大幅に下がった(つまり、軌道や施設、車両などの初期投資を運行主体である民間事業者が負担しなくて良くなった)。この変化は極めて重要だ。
富山の路面電車環状線「セントラム」は、全国で初めて上下分離方式を用いて整備を行い、総事業費(約30億円)は国と富山市が負担。
もちろん、整備が容易になったからといっても、交通事業者の理解と協力を得ることが重要で、運行形態、ダイヤ設定、既存の交通モードと競合しないような調整などが欠かせない。
【第2回の記事内容について思うこと】
関東自動車はLRT導入後の有力な運行主体の一つでもあるので、同社が交渉に応じる姿勢に転じたのは注目に値します。
というのも、従来最大の対立点と見られてきたJR宇都宮駅西口〜東武宇都宮駅間の「ドル箱」区間の扱いについて、市と事業者の調整次第は対立関係が抜本的に解消する可能性が出てきたからです。
私見ですが、関東自動車がLRT導入に反対していたのは、「LRTが通ると、路線バスのドル箱区間で競合関係になる」からで、その結果「会社の経営が悪化して運転士の解雇が発生する恐れがある」と感じていたためではないかと思います。
逆に言えば、雇用機会が確保され、ドル箱区間の利害調整が済めば、関東自動車としては特に大きな懸念材料がないため、対立する理由がなくなるということでもあります。
大都市部ではともかく、今後地方では中核都市においても公共交通ネットワーク維持・拡充のため、自治体が積極的に関与することになっていくと思います。
その際、既存の民間事業者と競合関係にならないように、事前に調整を行うことがますます重要性を増していきます。
欧州のように、自治体と民間業者が共同出資して、市域全体の公共交通を一括運行する「運輸連合」のような運行主体を作り、民間企業が運行していた既存路線も新運行主体に人員・設備・車両もろとも移管する、というケースも検討することになっていくのかも知れません。
なお、「下野新聞」の記事では一切触れていない重要な点として、上下分離方式を導入するとペイラインはかなり下がるということを指摘しておきます。
昨年(2011年)に行われた「第2回 都市交通システム講演会」(2011年10月29日)で、栃木県知事は次のような説明を行っています。
宇都宮のLRTについては、維持管理費が年間15億円かかるとの試算があり、一方で運賃収入は年間20億円を見込んでいるとのこと。
そのための「採算ライン」は33,000人/日であるけれども、これは往復合わせての人数なので、実際にはその半分程度、16,500人/日が乗れば十分ペイすることになるとの説明がありました。
(本来、公共交通を採算性だけで論じるのは不適当であるけれども、分かりやすく説明する材料の一つとして数字を出した、ということでした)
ちなみにこれらの維持管理費、乗車人員と運賃収入は、清原地区~JR宇都宮駅~桜通付近までの約15kmほどを一括整備する場合のもので、もしJR宇都宮駅東口~清原地区を先行開業するのであれば、もっと「導入しやすい数字」になります。
あくまでも試算ですので、実際とは違う可能性もありますが、荒唐無稽な「甘い需要予測」とは思えません。
ご参考になれば幸いです。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
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しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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