下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【特集:宇都宮LRT】下野新聞「LRTを問う」第1回について
- 2012/11/13 (Tue)
- 【特集:宇都宮LRT】 |
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【第1回の概要】2012年10月27日(土)掲載
■富山:中心部への回帰傾向が進む
富山市では、中心市街地に路面電車が走っていて、先頃一部新線を建設して環状運転を行う「セントラム」を開業した。
下野新聞が取材したのは10月8日(祝)午後、電車から降りた主婦は「セントラムは待たずに乗れるから便利。ただ、買い物は郊外が多いから、クルマが便利」と語る。
▲ 富山の「セントラム」。既存の路面電車路線が「コ」の字状になっていた部分に1km弱の新線を建設して「ロ」の字状の環状線としたものです。北陸新幹線開業後は「ポートラム」の電車が乗り入れて来ます。
富山県は栃木県同様のクルマ社会で、富山市の中心市街地には大規模な立体駐車場もあり、クルマ依存体質が変わったわけではない。
しかし、中心市街地の百貨店前に軌道(路面電車の線路)と電停(電車の停留所)が整備され、LRTを利用して買い物をする高齢者が増えた。
LRT沿線では分譲マンションが相次ぎ完成。成約率は首都圏の10倍で、郊外の一戸建て志向が強い富山市民でも中心部への回帰傾向が強まっている。
2年後の北陸新幹線開業時には富山駅が高架化し、先にローカル線をLRT化して好評の「ポートラム」と、中心街環状線の「セントラム」が接続し、直通運転を予定している。
▲ 富山の「ポートラム」。非電化のローカル線をLRT化し、従来は日中60分ごとだった運行頻度を15分ごとに向上させるなど、利便性は大きく向上しています。
宇都宮市も、過度なクルマ依存からの脱却、中心市街地の活性化、まちなか居住人口の創出などが課題となっている。
富山市は、LRT整備など公共交通網の整備には財政出動を厭わない姿勢で取り組んでいる。富山市の姿勢を富山市民がどう評価するか、「宇都宮の注目点もそこにある」。
【第1回の記事内容について思うこと】
富山の事例は、日本でなかなか進まなかったLRT導入がやっと実現した事例となりました。
しかし、これは「完全新規のLRT」ではなく、地方の中核都市周辺を走りながら、何十年も前と大差ない低い運行頻度で細々と運行していたローカル線をLRTとして近代化した「既存ローカル線をLRT転換した先進事例」です。
このため、「富山は既存路線があったからこそ成功した」など、意図的にミスリードの材料として使われてしまうこともあります。
欧州では1980年代には過度なクルマ依存がもたらしたさまざまな弊害が社会問題となり、都市計画のあり方も見直されることになりました。
欧州諸国では、旧来の路面電車が存続していた都市で路面電車のLRT化が進み、やがて鉄道路線へも直通運転を行う「トラムトレイン」も走るようになりました。
また、鉄道・LRT・バスを別個に管轄するのではなく、市域内の公共交通は交通モードの違いがあっても同じ運行主体が一括運営する運行方式が導入され、共通の切符1枚を購入すれば乗り放題といった、利用者本位の運行形態が整備されていきました。
▲ LRTとトラムトレインの先進都市、ドイツのカールスルーエのトラム。中心市街地には極力クルマを乗り入れずに済むような都市計画が行われています。
これらの公共交通は、日本のような独立採算制ではなく、道路や橋などと同様、軌道や施設などのインフラは税金で整備して、運行主体は運行のみに専念する方法で運行しています。
全事業費に占める公的支援の割合は5~7割ということも間々ありますが、「社会インフラ維持に必要な投資」として社会的合意を得ています。
日本では「公共」交通に対しても厳格な独立採算制が要求されるという、世界的に見ても例外的な国策を採ってきたため、海外なら全く問題にならないレベルでも「赤字路線」として廃止されたり、設備や車両の近代化が行えなかったり……と、特に地方の公共交通には厳しい状況が続きました。
また、海外のような公的支援が一般的ではなかったため、運行経費は全て運賃に上乗せされるため、地方に行けば行くほど運賃が割高になり、「公共交通離れ」がますます悪化し、過度なクルマ依存が進んでしまったといえます。
▲ 市の外縁部を走る環状道路の開通を契機に、LRT導入を軸としてコンパクトなまちづくりを実現したフランスのストラスブール。交通基本法が制定され移動の自由が重要視されるフランスでは、公共交通にはしっかり公的資金を注入して質の高いサービスを提供しています。
近年になってやっと、日本でも道路などと同じ考え方で公共交通を整備する「公設民営方式」や「上下分離方式」が導入できるようになり、LRTなどの整備は段違いに行いやすくなりつつあります。
しかし、一度根付いた過度なクルマ依存から、公共交通とクルマの上手な使い分けを実現していくためには、社会的な意識改革が必要です。
これまで一貫してクルマ最優先で来た日本において、公共交通を重視するという考え方はいわば「交通革命」と呼んで良いような正反対の考え方でもあり、詳しい人はともかく、そうではない人にとっては「未知なるものへの恐怖」は拭いがたく、さまざまな懸念や懐疑的な意見が出てくるのはある種致し方ない面があります。
新聞やテレビなどのメディアは、交通問題についての社会的な意義をきちんと調べた上で、率先して「こういう考え方や手法がある」などと、新しい考え方を報じて欲しいと思います。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
なお、この特集はあくまでも私自身が見聞きしたことについて、感じたことや考えたことを率直に書き綴ったものであり、特定の候補者を応援したり、特定の候補者への投票を呼びかけるものではありません。
記載内容は、私自身の「ツィッター」でのつぶやきがベースです。
既にLRTについてよくご存じの方はもちろん、LRTについてあまり詳しくない人・興味がなかった人にも「そうなんだ」と思ってもらえるように、国内外の先進事例や、論拠となる数値をできる限り示して説明するようにしています。
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
■富山:中心部への回帰傾向が進む
富山市では、中心市街地に路面電車が走っていて、先頃一部新線を建設して環状運転を行う「セントラム」を開業した。
下野新聞が取材したのは10月8日(祝)午後、電車から降りた主婦は「セントラムは待たずに乗れるから便利。ただ、買い物は郊外が多いから、クルマが便利」と語る。
▲ 富山の「セントラム」。既存の路面電車路線が「コ」の字状になっていた部分に1km弱の新線を建設して「ロ」の字状の環状線としたものです。北陸新幹線開業後は「ポートラム」の電車が乗り入れて来ます。
富山県は栃木県同様のクルマ社会で、富山市の中心市街地には大規模な立体駐車場もあり、クルマ依存体質が変わったわけではない。
しかし、中心市街地の百貨店前に軌道(路面電車の線路)と電停(電車の停留所)が整備され、LRTを利用して買い物をする高齢者が増えた。
LRT沿線では分譲マンションが相次ぎ完成。成約率は首都圏の10倍で、郊外の一戸建て志向が強い富山市民でも中心部への回帰傾向が強まっている。
2年後の北陸新幹線開業時には富山駅が高架化し、先にローカル線をLRT化して好評の「ポートラム」と、中心街環状線の「セントラム」が接続し、直通運転を予定している。
▲ 富山の「ポートラム」。非電化のローカル線をLRT化し、従来は日中60分ごとだった運行頻度を15分ごとに向上させるなど、利便性は大きく向上しています。
宇都宮市も、過度なクルマ依存からの脱却、中心市街地の活性化、まちなか居住人口の創出などが課題となっている。
富山市は、LRT整備など公共交通網の整備には財政出動を厭わない姿勢で取り組んでいる。富山市の姿勢を富山市民がどう評価するか、「宇都宮の注目点もそこにある」。
【第1回の記事内容について思うこと】
富山の事例は、日本でなかなか進まなかったLRT導入がやっと実現した事例となりました。
しかし、これは「完全新規のLRT」ではなく、地方の中核都市周辺を走りながら、何十年も前と大差ない低い運行頻度で細々と運行していたローカル線をLRTとして近代化した「既存ローカル線をLRT転換した先進事例」です。
このため、「富山は既存路線があったからこそ成功した」など、意図的にミスリードの材料として使われてしまうこともあります。
欧州では1980年代には過度なクルマ依存がもたらしたさまざまな弊害が社会問題となり、都市計画のあり方も見直されることになりました。
欧州諸国では、旧来の路面電車が存続していた都市で路面電車のLRT化が進み、やがて鉄道路線へも直通運転を行う「トラムトレイン」も走るようになりました。
また、鉄道・LRT・バスを別個に管轄するのではなく、市域内の公共交通は交通モードの違いがあっても同じ運行主体が一括運営する運行方式が導入され、共通の切符1枚を購入すれば乗り放題といった、利用者本位の運行形態が整備されていきました。
▲ LRTとトラムトレインの先進都市、ドイツのカールスルーエのトラム。中心市街地には極力クルマを乗り入れずに済むような都市計画が行われています。
これらの公共交通は、日本のような独立採算制ではなく、道路や橋などと同様、軌道や施設などのインフラは税金で整備して、運行主体は運行のみに専念する方法で運行しています。
全事業費に占める公的支援の割合は5~7割ということも間々ありますが、「社会インフラ維持に必要な投資」として社会的合意を得ています。
日本では「公共」交通に対しても厳格な独立採算制が要求されるという、世界的に見ても例外的な国策を採ってきたため、海外なら全く問題にならないレベルでも「赤字路線」として廃止されたり、設備や車両の近代化が行えなかったり……と、特に地方の公共交通には厳しい状況が続きました。
また、海外のような公的支援が一般的ではなかったため、運行経費は全て運賃に上乗せされるため、地方に行けば行くほど運賃が割高になり、「公共交通離れ」がますます悪化し、過度なクルマ依存が進んでしまったといえます。
▲ 市の外縁部を走る環状道路の開通を契機に、LRT導入を軸としてコンパクトなまちづくりを実現したフランスのストラスブール。交通基本法が制定され移動の自由が重要視されるフランスでは、公共交通にはしっかり公的資金を注入して質の高いサービスを提供しています。
近年になってやっと、日本でも道路などと同じ考え方で公共交通を整備する「公設民営方式」や「上下分離方式」が導入できるようになり、LRTなどの整備は段違いに行いやすくなりつつあります。
しかし、一度根付いた過度なクルマ依存から、公共交通とクルマの上手な使い分けを実現していくためには、社会的な意識改革が必要です。
これまで一貫してクルマ最優先で来た日本において、公共交通を重視するという考え方はいわば「交通革命」と呼んで良いような正反対の考え方でもあり、詳しい人はともかく、そうではない人にとっては「未知なるものへの恐怖」は拭いがたく、さまざまな懸念や懐疑的な意見が出てくるのはある種致し方ない面があります。
新聞やテレビなどのメディアは、交通問題についての社会的な意義をきちんと調べた上で、率先して「こういう考え方や手法がある」などと、新しい考え方を報じて欲しいと思います。
【連載記事「LRTを問う」について】
・「LRTを問う」第1回(下野新聞 2012年10月27日)について
・「LRTを問う」第2回(下野新聞 2012年10月28日)について
・「LRTを問う」第3回(下野新聞 2012年10月29日)について
・「LRTを問う」第4回(下野新聞 2012年10月30日)について
・「LRTを問う」第5回(下野新聞 2012年10月31日)について
・「LRTを問う」第6回(下野新聞 2012年11月1日)について
・「LRTを問う」第7回(下野新聞 2012年11月2日)について
・「LRTを問う」第8回(下野新聞 2012年11月3日)について
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下館レイル倶楽部・代表
性別:
男性
趣味:
鉄道、鉄道模型、ミリタリーなど
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「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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nal@sainet.or.jp(←「@」を半角文字にしてお送りください)
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