下館レイル倶楽部
真岡鐵道・関東鉄道常総線・JR水戸線が集まる「下館」を中心に活動する鉄道模型趣味・鉄道趣味の倶楽部です。(2009年6月12日開設)
【宇都宮LRT】9月の講演会で市長がLRTが軸の公共交通整備の重要性を説明
- 2011/10/29 (Sat)
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ご紹介がすっかり遅れてしまいましたが、2011年9月1日(木)午後、宇都宮で行われた「都市交通システム講演会」で、宇都宮市の佐藤栄一 市長が極めて重要な講演を行いましたので、ご紹介します。
・宇都宮市、新交通システムLRT導入機運再燃 市長「市の盛衰かけた事業」(MSN産経 2011年9月3日)
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110903/tcg11090302290001-n1.htm
この講演会を主催したのは、「六団体連絡協議会」。
「六団体連絡協議会」とは、「栃木県行政書士会」、「栃木県土地家屋調査士会」、「社団法人栃木県宅地建物取引業協会」、「社団法人栃木県建築士会」、「社団法人栃木県測量設計業協会」、「社団法人栃木県建築士事務所協会」の6団体による協議会です。
講演会のメインは、佐藤栄一市長による講演「うつのみやが目指すまちづくりと公共交通ネットワーク」。
佐藤市長はLRTに関して「やります」と明言しただけでなく、財源についてもしっかり明示しました。
市長就任以来、この問題について公の場でここまではっきりと明言したことはおそらく初めてであったので(市民団体などの会合では積極的な発言を行っていたのですが)、これは大きな前進であったと考えてよいと思います。
▲ 2011年9月1日(木)、宇都宮の佐藤市長は「LRTを市の東西の軸として公共交通ネットワークを再構築し、街の魅力を向上させることが将来のために必須」だと、詳細なデータを示しながら説明しました。(クリックすると拡大画像を表示します)
■ネットワーク型コンパクトシティへ転換
講演会の前半は、宇都宮市が2015年をピークに人口減少に転じるという予測が立てられている中、「ネットワーク型コンパクトシティ」への転換を図って人口減少を食い止めようとしていることなどの説明でした。
(このまま放置すると、市街地の拡散が無秩序に進んでしまい、道路・上下水道・公共施設などの都市インフラの維持整備費が増大し、市の財政を圧迫してしまう公算大)
具体的には、市内各所に拠点となる地域別のコンパクトシティへの施設家機能の集約を進め、各コンパクトシティ内で買い物や金融機関、医療など、日常生活を支障なく送れるようにする。そのためには地域内交通を整備し、ある程度クルマがなくても生活に困らないようにする必要がある……というもの。
ただし、通勤通学やその他の用事で地域外に出る必要は当然あるわけで、そこは東京などと同様、「乗り換えれば遠方まで行ける」状態にするため、公共交通ネットワークを整備して、各コンパクトシティ間、あるいは各コンパクトシティと鉄道の駅などを結ぶ公共交通が必要だと説明。
これらを整備・有機的に連携させることで、たいていの場合は公共交通で移動できるようにすれば、不要不急のクルマ利用を抑制できます。
つまり、公共交通ネットワークがちゃんと機能して住民が利用すれば、過度なクルマ依存と慢性的な渋滞から脱却できるだけでなく、本当にクルマが必要な人も渋滞に巻き込まれずに済む状態を創出できる……というわけです。
■宇都宮の「生命線」でもある清原地区の重要性
続いて、佐藤市長からは、市東部の清原地区の重要性についての説明がありました。
宇都宮市の税収は約870億円。
その内、清原地区だけで年間115億円の法人税収入があります。
いわば、「宇都宮市の生命線」です。
しかし以前から、工業地帯の清原地区や、隣接する芳賀地区は、毎日激しい通勤渋滞にさらされていて、市民生活にも大きな支障が出ています。
市の財政を支えている工業地帯に通勤するためのクルマが溢れて慢性的な渋滞を引き起こしてしまう……というのは、なんとも皮肉な話です。
ここで佐藤市長は、「ある可能性」に言及します。
もし「宇都宮の生命線」でもある清原地区の利便性向上を行わず、進出している企業が「不便だから撤退」などということになったら、どうなるか。
当然、市の税収は激減しますので、市の行政サービスは従来の水準では維持できなくなってしまいます。
つまり、清原地区の問題は、この地区だけの問題ではなく、実は宇都宮市の根幹を揺るがしかねない問題なのです。
清原地区の各企業は、少しでも渋滞解消になればと、独自で(自腹で)シャトルバス運行などを行っていますが、佐藤市長によればこれは本来行政がやらなければいけないこと。
よく「橋を架ければいい」とか「道路を造ればいい」という意見が出ますが、いくら道路事情を改善しても結局トータルの道路交通量が減るわけではないし、目的地にクルマが集中することも変わらないので、渋滞箇所が変わるだけの対処療法に過ぎず、問題の根本解決には至りません。
清原地区の皆さんは、以前から市の中心部への交通手段はLRTが最適だと考えています。
佐藤市長は、LRTを導入した場合の想定として、JR宇都宮駅東口と清原地区の間には停留所を10~15ヶ所ほど設置し、所要時間は約25分と推定できますと発言。各駅停車タイプだけでなく、直通運転や快速運転を行えれば所要時間はさらに短縮できる可能性もあると説明しました。
また、将来的にJR宇都宮駅の西口方面に延伸することになる場合は、地平にある在来線と高架の新幹線の間、2Fコンコースを通せますとも説明しました。
■「LRTか、連接バスか」的な択一の話ではない
佐藤市長は、「LRTの話をすると、それだけで拒否反応を示す人もいるようですが、宇都宮市としては『LRTか、連接バスか』という択一の話ではなくて、地域や人口、地域ごとの特色に応じて、LRTや連接バス、路線バスやジャンボタクシーなど、最適な交通モードを使い分ければ良いと考えています」と説明しました。
ここで、LRT先進都市・ストラスブールの交通事情について紹介する映像を紹介。
同市では、郊外のLRTターミナルが「トランジットセンター」(交通結節点/複数の交通機関の乗り換えが行えるターミナル)になっていて、巨大なパーク&ライド駐車場が併設されています。
この駐車場にクルマを駐めると、駐車料金と引き替えで、市の中心街までのLRTに乗車できる往復チケットが手渡されるので、市民が進んでLRTに乗り換えている様子が映っていました。
宇都宮市の公共交通について佐藤市長は、できれば1枚のICカードで鉄道・バス・LRT・デマンドバスなど、さまざまな交通機関に乗車できるようにすると良いと考えていますと発言。
実際、「Suica」や「PASMO」などをご利用になっていると、その利便性の高さを実感している人が多いと思いますが、それを市内交通にも適用し、なおかつ乗換ごとに運賃が加算されない「通し運賃」や、一定エリア内であれば何度乗り換えても同一運賃である「ゾーン運賃」などを併用すれば、これは効果絶大です。
■民間でないからできること、行政だからやれること
講演の最後で、佐藤市長は「公共」ということについての考え方と、極めて重要な数字を明らかにしています。
以下、概略です。
行政はもちろん採算性を意識しているが、黒字でなければやらないわけではありません。
行政は公共性が大事で、民間ではできないことをするのが務め。これは公共交通も同じです。
LRTは国が注力しています。
宇都宮の場合は、初期投資が380億円かかる見込みですが、「上下分離方式」を導入して「下」のインフラや車両などの部分を公的に賄って、運行会社は「上」にあたる列車の運行を担当することになります。
初期費用の1/2は国が負担し、残り1/2を県と市が受け持つことになります。
(つまり、宇都宮市の財政負担は、仮に初期費用の1/4を負担するのであれば「約95億円」となります)
清原工業団地を売り出したときの売却益が、約100億円残っています。
清原地区の同意を得る必要がありますが、この資金をLRT整備に使うことが考えられます。
(もし、清原地区の管理する売却益全額をLRTに活用すると、宇都宮市の実質的な初期費用負担はゼロになる可能性が高い)
以前の渡辺知事とお会いした際、清原工業団地の売却益は、元々清原地区の皆さんの尽力によって生み出されたものであるので、清原地区のためになることに投じるべきではないかとお話しになっていました。
私(佐藤市長)もそう思っています。
LRTの整備には時間がかかり、自分が存命の間にはどうせ完成しない……などという人もいます。
しかし、いざ工事が始まれば、今はパネル工法のような工期が短縮できる方法で建設するので、工期は3年かからないでしょう。
最後に市長は、次のように締めくくり、満場の拍手喝采を浴びて講演を終えました。
「もう反対反対ではなく、将来に向けて必要な設備投資を行おうじゃありませんか」
※なお、この記事にコメントをつける場合は、記事タイトル下の「CM」部分をクリックすると投稿できます。
・宇都宮市、新交通システムLRT導入機運再燃 市長「市の盛衰かけた事業」(MSN産経 2011年9月3日)
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110903/tcg11090302290001-n1.htm
この講演会を主催したのは、「六団体連絡協議会」。
「六団体連絡協議会」とは、「栃木県行政書士会」、「栃木県土地家屋調査士会」、「社団法人栃木県宅地建物取引業協会」、「社団法人栃木県建築士会」、「社団法人栃木県測量設計業協会」、「社団法人栃木県建築士事務所協会」の6団体による協議会です。
講演会のメインは、佐藤栄一市長による講演「うつのみやが目指すまちづくりと公共交通ネットワーク」。
佐藤市長はLRTに関して「やります」と明言しただけでなく、財源についてもしっかり明示しました。
市長就任以来、この問題について公の場でここまではっきりと明言したことはおそらく初めてであったので(市民団体などの会合では積極的な発言を行っていたのですが)、これは大きな前進であったと考えてよいと思います。
▲ 2011年9月1日(木)、宇都宮の佐藤市長は「LRTを市の東西の軸として公共交通ネットワークを再構築し、街の魅力を向上させることが将来のために必須」だと、詳細なデータを示しながら説明しました。(クリックすると拡大画像を表示します)
■ネットワーク型コンパクトシティへ転換
講演会の前半は、宇都宮市が2015年をピークに人口減少に転じるという予測が立てられている中、「ネットワーク型コンパクトシティ」への転換を図って人口減少を食い止めようとしていることなどの説明でした。
(このまま放置すると、市街地の拡散が無秩序に進んでしまい、道路・上下水道・公共施設などの都市インフラの維持整備費が増大し、市の財政を圧迫してしまう公算大)
具体的には、市内各所に拠点となる地域別のコンパクトシティへの施設家機能の集約を進め、各コンパクトシティ内で買い物や金融機関、医療など、日常生活を支障なく送れるようにする。そのためには地域内交通を整備し、ある程度クルマがなくても生活に困らないようにする必要がある……というもの。
ただし、通勤通学やその他の用事で地域外に出る必要は当然あるわけで、そこは東京などと同様、「乗り換えれば遠方まで行ける」状態にするため、公共交通ネットワークを整備して、各コンパクトシティ間、あるいは各コンパクトシティと鉄道の駅などを結ぶ公共交通が必要だと説明。
これらを整備・有機的に連携させることで、たいていの場合は公共交通で移動できるようにすれば、不要不急のクルマ利用を抑制できます。
つまり、公共交通ネットワークがちゃんと機能して住民が利用すれば、過度なクルマ依存と慢性的な渋滞から脱却できるだけでなく、本当にクルマが必要な人も渋滞に巻き込まれずに済む状態を創出できる……というわけです。
■宇都宮の「生命線」でもある清原地区の重要性
続いて、佐藤市長からは、市東部の清原地区の重要性についての説明がありました。
宇都宮市の税収は約870億円。
その内、清原地区だけで年間115億円の法人税収入があります。
いわば、「宇都宮市の生命線」です。
しかし以前から、工業地帯の清原地区や、隣接する芳賀地区は、毎日激しい通勤渋滞にさらされていて、市民生活にも大きな支障が出ています。
市の財政を支えている工業地帯に通勤するためのクルマが溢れて慢性的な渋滞を引き起こしてしまう……というのは、なんとも皮肉な話です。
ここで佐藤市長は、「ある可能性」に言及します。
もし「宇都宮の生命線」でもある清原地区の利便性向上を行わず、進出している企業が「不便だから撤退」などということになったら、どうなるか。
当然、市の税収は激減しますので、市の行政サービスは従来の水準では維持できなくなってしまいます。
つまり、清原地区の問題は、この地区だけの問題ではなく、実は宇都宮市の根幹を揺るがしかねない問題なのです。
清原地区の各企業は、少しでも渋滞解消になればと、独自で(自腹で)シャトルバス運行などを行っていますが、佐藤市長によればこれは本来行政がやらなければいけないこと。
よく「橋を架ければいい」とか「道路を造ればいい」という意見が出ますが、いくら道路事情を改善しても結局トータルの道路交通量が減るわけではないし、目的地にクルマが集中することも変わらないので、渋滞箇所が変わるだけの対処療法に過ぎず、問題の根本解決には至りません。
清原地区の皆さんは、以前から市の中心部への交通手段はLRTが最適だと考えています。
佐藤市長は、LRTを導入した場合の想定として、JR宇都宮駅東口と清原地区の間には停留所を10~15ヶ所ほど設置し、所要時間は約25分と推定できますと発言。各駅停車タイプだけでなく、直通運転や快速運転を行えれば所要時間はさらに短縮できる可能性もあると説明しました。
また、将来的にJR宇都宮駅の西口方面に延伸することになる場合は、地平にある在来線と高架の新幹線の間、2Fコンコースを通せますとも説明しました。
■「LRTか、連接バスか」的な択一の話ではない
佐藤市長は、「LRTの話をすると、それだけで拒否反応を示す人もいるようですが、宇都宮市としては『LRTか、連接バスか』という択一の話ではなくて、地域や人口、地域ごとの特色に応じて、LRTや連接バス、路線バスやジャンボタクシーなど、最適な交通モードを使い分ければ良いと考えています」と説明しました。
ここで、LRT先進都市・ストラスブールの交通事情について紹介する映像を紹介。
同市では、郊外のLRTターミナルが「トランジットセンター」(交通結節点/複数の交通機関の乗り換えが行えるターミナル)になっていて、巨大なパーク&ライド駐車場が併設されています。
この駐車場にクルマを駐めると、駐車料金と引き替えで、市の中心街までのLRTに乗車できる往復チケットが手渡されるので、市民が進んでLRTに乗り換えている様子が映っていました。
宇都宮市の公共交通について佐藤市長は、できれば1枚のICカードで鉄道・バス・LRT・デマンドバスなど、さまざまな交通機関に乗車できるようにすると良いと考えていますと発言。
実際、「Suica」や「PASMO」などをご利用になっていると、その利便性の高さを実感している人が多いと思いますが、それを市内交通にも適用し、なおかつ乗換ごとに運賃が加算されない「通し運賃」や、一定エリア内であれば何度乗り換えても同一運賃である「ゾーン運賃」などを併用すれば、これは効果絶大です。
■民間でないからできること、行政だからやれること
講演の最後で、佐藤市長は「公共」ということについての考え方と、極めて重要な数字を明らかにしています。
以下、概略です。
行政はもちろん採算性を意識しているが、黒字でなければやらないわけではありません。
行政は公共性が大事で、民間ではできないことをするのが務め。これは公共交通も同じです。
LRTは国が注力しています。
宇都宮の場合は、初期投資が380億円かかる見込みですが、「上下分離方式」を導入して「下」のインフラや車両などの部分を公的に賄って、運行会社は「上」にあたる列車の運行を担当することになります。
初期費用の1/2は国が負担し、残り1/2を県と市が受け持つことになります。
(つまり、宇都宮市の財政負担は、仮に初期費用の1/4を負担するのであれば「約95億円」となります)
清原工業団地を売り出したときの売却益が、約100億円残っています。
清原地区の同意を得る必要がありますが、この資金をLRT整備に使うことが考えられます。
(もし、清原地区の管理する売却益全額をLRTに活用すると、宇都宮市の実質的な初期費用負担はゼロになる可能性が高い)
以前の渡辺知事とお会いした際、清原工業団地の売却益は、元々清原地区の皆さんの尽力によって生み出されたものであるので、清原地区のためになることに投じるべきではないかとお話しになっていました。
私(佐藤市長)もそう思っています。
LRTの整備には時間がかかり、自分が存命の間にはどうせ完成しない……などという人もいます。
しかし、いざ工事が始まれば、今はパネル工法のような工期が短縮できる方法で建設するので、工期は3年かからないでしょう。
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男性
趣味:
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「下館レイル倶楽部」は、鉄道の街・下館(茨城県筑西市)を中心に活動する鉄道&鉄道模型の趣味団体です。
しもだて地域交流センター「アルテリオ」で鉄道模型の運転会を毎月開催するほか、各種イベントの見学・撮影なども実施しています。
公共交通の上手な利活用や、鉄道など公共交通を活かしたまちづくりなどの情報発信も行います!
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